0016・新しい魔術
Side:イシス
「お帰りなさい、イシス。なにやらお疲れのようですね?」
「二頭、三羽、二匹との戦闘だったんだよ。連続で戦い続けた訳じゃないが、それでも複数との戦いは疲れた……。思っているより大変だよ、本当」
「複数が相手では簡単に勝てませんからね。既に相手にならない魔物でも、群れていれば殺される。そんな事は当たり前にあります。【魔術】を上手く使って、数に潰されないように立ち回るしかありませんね」
「そうだな。っていうか、そうやって勝ったんだけど大変だった。一度に三羽を牽制しつつ、どうやって勝つかを組み立てるって簡単じゃねーわ。マジで大変だし、これが当たり前だと疲れる」
「イシスが強くなればそんな事も無くなるのですが、今はまだ大変でしょうね。それに【魔術】は自由ですから、事前に色々な手を用意しておく事です。そうすれば楽に勝つ事も可能ですよ」
「【ウィンドバレット】を新たに作ったんだけど、それで多少上手くいった感じだな。銃弾みたいな形にして螺旋回転を与えて発射。軽くやったけど、木に2センチくらいの穴を開けた。なかなか良い感じだったと思う」
「そうですね。そういった創意工夫で、魔力の消費を抑えつつ威力を上げる事は可能です。イシスが思いつく限りの事を色々とやってみればいいでしょう。思いがけないものが有効だったりするものです」
「そうなんだろうけど、所詮は空気を使ってるだけだからなー。それに限度はあるんだよ。空気だけじゃ大した威力にはならない。かと言って、それ以外に使えるのは小石ぐらいだし……」
「前にやっていた【ヒートボール】、あれを銃弾型にするのは駄目なのですか?」
「あぁ、アレかー……」
【魔術】においては無から有を作り出す事は出来ない。だから【ファイアボール】を練習した際は、燃える物を利用して発射した訳だ。ようするに燃える物を燃やして、それを【スロー】したと考えればいい。
それって、いわゆるところの【ファイアボール】か? とは思うんだが、【魔術】ではコレしか出来ない。ならば他には? となって作ったのが【ヒートボール】だ。
これは簡単に言えば、熱した空気を直接ぶつける【魔術】だと思えばいい。ようするに【ウィンドボール】を熱してぶつける訳だが、生物相手には効くんじゃないかと思った訳だ。ただし熱するのに魔力を結構喰うんだよ、だから今までお蔵入りだったんだが……。
「確かに【ヒートボール】ならいけるかもなぁ。いや【ヒートバレット】か。抉って更に熱で火傷させる。言葉にすると結構凶悪だが、試してみないと本当に有効かは定かじゃない。まずは休憩して回復してからだな」
俺は<物品作製装置>の部屋まで行って、箱の中に獲物を全部入れる。その後はウサギ肉のステーキを食べてお腹を満たし、少しゆっくりする為に訓練場で寝転がる。訓練場は結構広いので、寝転んでいても開放感がある。ま、一面真っ白な部屋だけどな。
それはともかく、俺はちょこちょこと【魔術】の練習をしていく。【ヒートバレット】の他にも色々と行い、ヌンと一緒に「あーでもない、こーでもない」と言いつつ、使えそうな【魔術】を開発してみた。
途中で魔力が底を尽きかけたので気分が悪くなり、慌てて<生物修復装置>に行き休んだ。
…
……
………
起きた時には完全回復しており、流石は<生物修復装置>としか思えない効果だった。再び訓練場に行って【魔術】の開発をする気にならず、俺は魔法陣部屋に行って惑星へと下りる。
再びやってきた惑星で、俺は早速とばかりに草木を手に入れていく。栄養剤の事もあるし、どんどんと入れていかないと損をする。思い出したんだが、この惑星に四季があるのかは別にして、いつかは草の生えない季節がやってくる筈だ。
そうなったら栄養剤が作れなくなるから大ピンチだ。栄養剤の為には今の季節に集めておく必要がある。あの不味い物の為とはいえ、健康の維持の為には必要だからな。要らないとは口が裂けても言えない。
収集の合間に魔力を放射するも、近くに魔物は居ないようだ。俺は森の中に深くは入らず、間伐するように川に沿って移動している。下り方向であって上り方向じゃない。あっちは行っても仕方ないからな。
そうやって草木を手に入れていると、魔力の放射に魔物の反応があったので、慌てて河原へと下がる。槍を構えている俺の前に出てきたのは、何故かうり坊だった。……お前って夜行性じゃなかったのか?。
「ブルルルルル……!」
俺に対して突撃する気満々なところ悪いんだが、新しい【魔術】の実験台になってもらおう。まずは【ヒートバレット】だ。
銃弾型にして空気を熱し100度ほどにしたら、それをうり坊に向かって発射。狙ったのは目だったんだが、少しズレて目元に直撃。
「ピギィッ!? ピギュゥゥゥゥゥッ!!?!」
直撃したのが熱かったのか暴れているが、目の近くを抉られたからか、それとも熱で痛みを受けているのか分からない。そもそも100度というのも割と適当なんだよな。これぐらいで十分火傷になるんじゃない? って勝手に思ってるだけだし。
そのうえ正確に100度じゃなくて、100度ぐらいでしかないからなぁ。とりあえず、もう一発発射しよう。【ウィンドバレット】より消費するけど、【ウィンドボール】より消費は少ない。なので多少無駄に打ち込んでも大丈夫だ。
俺は暴れるうり坊に対して【ヒートバレット】を放つと、今度は胴体に当たったにも関わらず、更なる悲鳴が聞こえてきた。
「ギュァァァァァ!?!?!!」
どうやら抉られた挙句に火傷したのが効いているみたいだ。俺は目と腕に【身体強化】を行い、魔力を薄く流した槍でさっさと頭を貫く。それで息絶えたうり坊をアイテムバッグに回収して一息吐く。
「ふぅ……。【ヒートバレット】は生き物相手だと役に立ちそうだな。特に火傷で痛みを感じるからか、思っているよりも時間が稼げる。もちろん全ての生物相手に効く訳じゃないんだろうけどさ」
それでも思っているより優秀だ。他にも色々とあったんだがイロモノも多いからなぁ。正攻法とも言える【ヒートバレット】が効いてくれて助かる。これで無理にナイフを浮かべて戦わなくても済むからさ。
あれ魔力の消費がそれなりにはあるんだよ。魔力が多くなったら幾らでも使えるらしいんだけど、今の俺にはバカに出来ない消費量だ。回復量と全く合ってない。その所為で消費が重いんだよ。
なので【ヒートバレット】の方が少なくて済むし、何と言っても維持しなくていいのが楽だ。ナイフの維持って、思っている以上に集中する必要があるんで疲れる。アレをずっと続けるのは大変だから、出来ればやりたくない。
そういう意味では、やっとまともな方法が出来たと言えるだろう。とりあえずはコレで頑張っていくか。そう思った矢先に魔物が来たな。
俺はすぐに河原に出て槍を構える。次に登場したのは……蛇が二匹か。俺が槍を構えてジッとしていると、鎌首を擡げて「シャーシャー」言い始めた。なので隙だらけの蛇の地面と接地している所へ、【ヒートバレット】を発射。
「「シャーーッ!?」」
威嚇していたら突然喰らったからか、無防備に直撃を受けて悶えている。やはり熱が抉りこまれるのは痛いらしい。蛇がのたうち回っているので、その間に【身体強化】と武器の強化を行い頭を刺した。
あっさりと蛇が倒せるようになった事に喜びつつも、やっぱり大事なのは色々とやってみる事なんだなと改めて思う。【ヒートバレット】一つでここまで変わるとは。




