0013・魔力放射の練習台
Side:イシス
惑星へと再び転移してきた俺は、川へと近付き小苦無を取り出す。ついでに銛も取り出しておき、まずは水中に魔力を薄く放射した。すると一斉に川が「バシャバシャ」と言い出したので、慌てて小苦無と銛を持って川から離れる。
そのままジッとしていると、魚が何匹も陸に上がってきたのが分かった。ただし魚は水の塊を撃って来ない。となると、魚は俺の位置を把握していないのだろう。ただし放射された魔力には反応した、と。
俺は小苦無に干渉して空中に持ち上げ、魚の一匹に【スロー】で投げつける。それなりに魔力の篭もった小苦無はあっさりと魚に突き刺さり、俺は縄を引っ張る。縄の長さは10メートルほどあるので、端が飛んで行って失うなんて事も無い。
縄を引っ張って魚を手元に引っ張り、ある程度こちらに引っ張ったら銛で一突きする。小苦無を外して銛を掲げ、後は魚が死ぬまで放置。何処を刺せば簡単に死ぬとか分からないし、とりあえず早く死んでくれと願うばかりだ。
アイテムバッグを開けて収納と何度か念じると、魚が入ったのでどうやら死んだようだ。俺はその場から動かず考える。
魔力の放射で魚の居場所を探ればいいと思ってたんだが、予想以上に魚の魔力感度が良い。その所為で水中に魔力を放射すると一発でバレた。おそらく今までバレなかったのは、陸から水面に並行して放射していたからだろう。
水の中にまで魔力を放射したのは、さっきのが初めてだ。だからこそ魚に見つかったんだと思うんだが、それを使えば簡単に魚が釣りだせるのは分かった。しかし魚が大量に上がってくるので、今度は逃げるしかなくなる。
あいつらの目が良くないのが救いだが、流石にあの数と一度に戦うのは無理だ。一匹一匹を倒していくしかないんだが、それでは一斉に襲われる危険もあるんだよなぁ。一匹ずつ倒すのは問題ないんだが……。
水中の狭い範囲にだけ魔力を放射するか? 自分を中心にして広がるように放射しているけど、別に形は自在に変えられるしな。そうしてみるか。
俺は川に近付いて銛を右手に持ちながら、自分の前方の狭い範囲の水中にのみ魔力を放射する。すると「バシャバシャ」と音が鳴り、三匹の魚が上がってきた。俺は素早く一匹に銛を刺してバックステップ。
残りの奴等を見るが、やはり魚は俺の姿を捉えられていない。あんな悪い目で獲物を見つけている訳じゃないよな? となると何で探してるんだ? ………もしかして主に感じているのは匂いか? それとも魔力?。
おそらく魔力を持つヤツが川に入ってきたら襲う、もしくは血の匂いがしたら一斉に飛びつく感じだろう。魔力を探っているなら、俺が放射したのに感付くのも分かる。おそらく俺より遥かに魔力の放射が上手いし、感覚も鋭いんだろう。
となると、魚が感じられないレベルで魔力の放射を行えば、高レベルの魔力放射を使えるんじゃないか? ある意味でコイツらは俺の修行相手みたいなもんだな。コイツらに気付かれないレベルの魔力放射を目指そう。
陸に上がってきた二匹は何も居ないと思ったのか、そのまま川へと戻って行った。俺は銛の先でビチビチ跳ねている魚に対し、頭に魔力を流したナイフを突き刺す。
すると動かなくなったので銛を下ろし、アイテムバッグを下ろして開けると収納と念じる。するとあっさり吸い込まれたので手順は確定。俺は一度<時空の狭間>へと戻った。
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「お帰りなさい、イシス」
「ただいま、ヌン。結局、小苦無は必要なかったよ。川に魔力を放射して調べようとしたら、魚に感付かれて一斉に陸に上がってきてさ。御蔭で慌てて逃げる羽目になって焦った」
「そうですか。イシスが下手だからか、それとも魚が優秀なのか分かりませんね」
「まあな。とりあえず魚に感付かれないようになるのが目標だ。それまでは狭い範囲に魔力を薄く流す練習台とでも思う事にする。魚に感付かれないようになったら、それなりの腕前になってるだろう」
「今よりも腕が上がるのは間違い無いでしょう。それより戻ってきたという事は魔力の回復ですか? それとも<物品作製装置>ですか?」
「両方だ。銛も含めて要らなくなったからな、リサイクルの意味で放り込んでくる。代わりに何か他の物を作ろうと思うんだ。まだ何かは決まってないけどな」
俺はヌンと話しつつ<物品作製装置>の部屋へ移動し、中へと入ったら早速箱の中に小苦無と銛を放り込む。正直に言って槍で良いんだから、わざわざ銛は要らないんだよなぁ。さて、代わりに作るのは短刀だな。
いわゆる脇差よりは短いヤツ。ドスと呼ばれるぐらいの短い刃物だ。魔力を流せば切れ味が上がるなら、短剣である必要も無い。むしろ広範囲を切り裂ける方が有利かもしれない。なので短剣ではなく短刀にする。
刃渡りは30センチ。ちょっと短いが、これぐらいの物の方が色々と使い勝手が良い。完成したら剣帯からウサギのナイフを外し、剣帯を箱の中へと放り込む。改造する為だ。
杭が着けられるようにした部分をナイフが差せるようにし、左腰と右腰に武器を差せるように作る。出来上がった剣帯にナイフを差し、左腰の部分に短刀を差す。今はこれで良し。
終わったらまず指貫グローブを作る。何だか微妙に滑るので、出来れば滑らないようにしたかったんだ。代わりに滑らなさ過ぎても困りそうだけど、強く槍を突き刺す為には滑られると困る。
ウサギの皮で作ったんだが、意外に良い物が出来たと思ったその時、ふと気付く。どうやって俺の手にピッタリのグローブを作ったんだ? ………うん、コレも考えない方がいいな。放り投げよう。
今のところ作る物も無くなったので、寝室に行って寝転がる俺。この<時空の狭間>では、ヌンに頼めば魔力は早く回復できる。
「ヌン。すまないが魔力濃度を上げてくれ。結構消費したんで早めに回復したい」
「分かりました」
俺はヌンに部屋の魔力濃度を上げてもらうと、少し仮眠をとる。こうやって回復しながら戦えるなんて随分と恵まれてるよなー。未だ見た事の無い原住民は、日夜必死で生きてるだろうに。
…
……
………
仮眠をとって少しスッキリした俺は、魔力も全回復しているのを確認して、再び魔法陣部屋から惑星へと降り立つ。
未だ夜なので川に近付き、再び狭い範囲に魔力を放射。「バシャバシャ」と音が鳴るのですぐに川から少し離れて槍を構える。
出てきたのは魚が四匹。俺は目の前に居る魚に対し、魔力を流した槍で頭を串刺しにして槍を抜く。次に隣の魚の頭にも素早く槍を突き刺し、右にステップ。すると俺が居た場所に水の塊が飛んでいき、そのまま通り過ぎていった。
後は左右の端の魚しか残っていないので、右の魚の頭を突き刺して抜き、素早くバックステップ。水の塊が通過したら、左端の魚の頭に槍を突き刺して抜く。そしてバックステップを行い、槍を構えて様子見。
「…………ふぅ。どうやら魚は全部仕留められたみたいだな。思っているより狼の牙の槍が強力だ。これに頼り切る事はしたくないが、それでも頼りになる。まさか一撃で倒せるなんてな」
俺はアイテムバッグを下ろし、魚を一匹ずつ入れていく。全て入れ終わったら再び背負い、川の近くに寄って魔力を可能な限り薄くして放射。しかし「バシャバシャ」と音が鳴り、再び魚が陸に上がってくる。
こいつらに気付かれないって、相当に大変だぞ。どこまで薄くすればいいか分からないし、気付かれない薄さで俺が魔物に感付く事は出来るんだろうか?。




