表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リバプールの空白  作者: 水前寺鯉太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/15

第4話:202X年 10月 15日(金曜日、たぶん)

すすけたレンガの時計塔は、記憶の中よりもずっと巨大で、冷たかった。

見上げれば、止まったままの針が虚空を指している。

ぼくは杖を握りしめ、写真の中の彼女と同じ角度で、その場所に立ってみた。

「あの……」

通り過ぎる女性たちに、勇気を出して声をかける。

そのたびに、ぼくはポケットからあの古びた写真を取り出した。

リバプールの海風に髪をなびかせ、眩しそうに笑う彼女。

「この人を、知りませんか。ここで、会う約束を……」

だが、返ってくるのは困惑した微笑みか、足早に去っていく靴音だけだった。

「ごめんなさい、心当たりがないわ」

「おじいさん、道に迷ったの?」

親切な言葉さえ、今のぼくには鋭い刃のように胸に刺さる。

誰も知らない。

ぼくが命綱のように握りしめているこの女性を、この世界の誰も、ぼく自身ですら、本当には知らないのだ。

時計塔の影が、石畳の上でじわじわと伸びていく。

ぼくはベンチに腰を下ろし、震える手で日記を開いた。

今日のページには、ただ一行だけ、掠れた文字を書き残す。

『彼女はどこにもいない。それとも、ぼくが透明になったのだろうか』


感想、評価、ブクマよろしくお願いします




感想、評価、ブクマが僕の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ