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いろいろと窮屈そうな桜内さん  作者: 三毛猫ジョーラ


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第2話 秋の実り


 制服に着替えてから教室に戻ると桜内さんは自分の席に着いていた。いつも通り本を読みながら静かに座っている。お胸の方もいつも通りごく普通だ。もしやあれは本当に幻だったのだろうかとおれは首を傾げた。試しに木島さんと見比べてみるが、その膨らみ具合にあまり違いはない。ちなみに木島さんはバレー部だけあってすらっとした体型をしている。


「どうした路一ロー?朝から険しい顔して。弁当でも忘れた?」


 そう言いながらおれの前の席に座ったのは、同じサッカー部で次期キャプテン候補の藤崎秀斗ふじさきしゅうと。シュートという名前だがポジションはゴールキーパー。甲子園でたまに見かける翔斗ショート君がセンターを守ってる、みたいな名前あるあるだ。秀斗はおれに顔を近づけながらわずかに声を落とした。


「さっきバレーやってる秋野見たか?まじ凄かったな。ブリンブリン揺れてたぜ」


 秋野さんとは、我が校一の巨乳と称される人物だ。彼女は4組なのだが体育の時はおれ達1組と合同授業となる。故に1組の男子は体育の時になぜかやたらとはりきる奴が多い。この秀斗もその一人。今も下卑た顔をしながら、両手で胸が上下に揺れる仕草をしてやがる。こいつにだけは絶対に桜内さんの秘密を知られる訳にはいかない。


「おまえ朝から下品だよ。ほら、先生来たぞ。前向け」


「なんだよ。ノリ悪ぃーな」


 秀斗が前を向くと大きな背中が目の前に現れた。キーパーなのでこいつはやたらとでかい。だがそのお陰で授業中におれは先生の死角に入ることが出来る。無駄にシャーペンをシャッシャッと動かしながら、改めて窓際の席に座る桜内さんを見た。


 着ているブレザーは普通。胸元のリボンもみんなと同じ。まさか認識阻害の機能は付いていないだろう。だがこうやって注意深く見てみると、彼女は若干猫背気味かもしれない。大きい胸にコンプレックスを持つ女性はそうなると聞いたこともあるが、そうなるとやはり……。だが確たる証拠としては不十分だ。もしかしたらうちの制服は胸元があまり目立たくなるような作りなのかもしれない。


「そうか!」


 おれは妙案を思いついた。4組の秋野さんの制服姿を見てみよう。もし制服の上からでもその巨乳が分かるならば、桜内さんはシロとなる。だが仮に秋野さんのブレザー姿も普通ならば、未だ真実は闇の中となる。


「おっ鶴田。もう答えが分かったか。じゃあ前に出て解いていいぞ~」


 うちのクラスの担任でもある数学の柳谷先生がニヤリとしながらおれを見た。黒板の数式はどう見てもまだ途中までしか書いてない。


「いえ! わかりません!」


 おれはすっくと立ち上がり堂々と応えた。実際、桜内さんという数式はまだ解けていない、などと上手いことを心の中で呟きながら。


「自信満々で言うんじゃないよ」


 教室に笑いが起こる。ちらりと桜内さんを見ると、彼女もくすくすと笑っていた。

 


 そして待ちに待った昼休み。おれは急いで弁当を掻き込むと4組の教室へと向かった。すると廊下側の席でサッカー部の数田がマンガを読みながら飯を食っていた。


「よう数田」


「おうローちん。どしたん?」


 おれが声をかけると数田が箸を止めた。何気なく数田が読んでいるマンガを見ると、そこには()()()な女性がでかでかと描かれていた。


「おまえなんちゅうもん読みながら飯食ってんだよ」


「何をおかずにするかなんておれの勝手でしょうよ! 月曜日はこれって決めてんの!」


 仮に桜内さんが真の巨乳であった場合、こいつも要注意人物になるな。


「わかった、わかったから飯粒飛ばすなって……。ところで秋野さんっている?」


「ん~たぶんカフェテリアじゃねえかな? さっき彼氏が迎えに来てたし」


 秋野さんに彼氏がいるのは周知の事実だ。しかもその彼氏は現サッカー部キャプテン、モテモテチャラ男の宮田先輩だ。ただし、チャラ男だがサッカーは抜群に上手い。


「そろそろインターハイ予選始まんのにな。キャプテンなんだから気を引き締めてほしいぜ、まったく。てか秋野さんになんか用なん?」


「いや、たいした用じゃない。じゃあな」


 特殊な飯の食べ方をする数田に別れを告げ、おれは4組の教室を後にした。カフェテリアを目指しながら、廊下ですれ違う女子の胸元がどうしても気になってしまう。なるべく前だけを向いておれは小走りで先を急いだ。



 カフェテリア内はガヤガヤと騒がしかった。ぐるりと辺りを見渡すとターゲットの二人を発見した。丸いテーブルに向かい合わせで座りいちゃいちゃと楽しそうに話をしている。だが肝心の秋野さんがこちらに背を向けている。仕方なくおれは極力宮田先輩に気づかれないように移動した。そーっと二人を遠巻きに見ながらゆっくりと周り込む。するとやがて秋野さんの全貌を視界に捉えた。


 頬杖をつきながらニコニコと先輩に笑いかける彼女の胸は――

なんとテーブルに乗っかっていた。


「っ!?」


 おれは思わず立ち止まり絶句した。え?あれって枕かなんかじゃないの?は?え?はぁ? 疑問符ばかりが頭に浮かんでいると宮田先輩がおれに気づいた。





第2話を読んで頂きありがとうございます。

「枕は言い過ぎじゃない?」と思った方は是非☆評価の方よろしくお願いします。

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