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18/30

アクスタくんとアルバイト-3

【お知らせ】

活動報告も不定期で更新しています。

小説の解説も行っているので、お時間があれば是非見て頂けると嬉しいです!

 その日から私は、アクスタくんと一緒にバイト探しを始めた。


 最初に応募したのは中華料理屋だった。餃子が大好物だから、なんとなく相性がよさそうで。アクスタくんも、しっかり面接についてきてくれた。

 面接室には優しそうな店主が居て、私の履歴書を丁寧に見てくれた。

「君、餃子好きなんだ。で、栃木出身ってことは……宇都宮餃子も食べたことあるの?」

「はい。とても美味しくて、地元の自慢の味です」

「いいねえ。俺も宇都宮餃子好きなんだ」

思わぬ共通点で盛り上がれて、これはもしかしたら……と期待した。

しかし——。


「でも、この時間帯は人手足りてるんだよね」


 その一言で面接は終わった。さっきまでの和やかな空気が嘘みたいだった。


帰り道、私は放心状態だった。別に悪いことを言われた訳ではないのに、胸の奥がじわりと痛む。

「まだ一件目だろ、次に切り替えろ」

アクスタくんが言った。

「……そうだよね。次いかなきゃ」

頭では分かっているのに、足取りは重かった。


 それから毎日、求人サイトを開いてはあらゆる職場に応募した。

 カフェ、百均、アイスクリーム屋——色んな求人に応募しても、どれもこれも結果はダメだった。せっかく面接に行っても「ご縁がありませんでした」の冷たい定型文だけがメールで届くだけだったり、「既に人手が集まったから」と言われ、そもそも面接すら受け付けてくれなかったり……落ちる度に、自分の存在が否定されたような気分になる。

「……また落ちた」

私はベッドにスマホを投げつけ、倒れ込んだ。声にすると余計に惨めになるから、本当はあまり言いたくなかったんだけど。

 横でアクスタくんが腕を組んだまま、ちらりと私の方を見る。

「落ちるのはお前が悪いんじゃねえよ。向こうの都合だろ」

「分かってる。分かってるんだけど……」

分かっていても、心だけはどうしても追いつかない。

 “ご縁がありませんでした”。その一文を見る度に、自分の居場所がどこにもないように感じる。


 ——いらない子。


 そんな言葉が頭のどこかで勝手に浮かび上がる度に、昔のトラウマまで手招きしてくるようで、息が詰まりそうだった。


「なあ」

アクスタくんがぼそりと言った。

「面接に落ちたぐらいで”存在否定”みたいに考えるな。働く場所と、お前の価値は別物だ」

その言葉に、私は小さく息が漏れた。

「……そうだよね」

“働く場所と、私の価値は別”——私は心の中で、その言葉を無理矢理自分に言い聞かせていた。



 ふと時計を見ると、18時半を指していた。

「うわ……もうこんな時間」

外は薄暗くなり始めている。心は沈んでいるけれど、時間は待ってくれない。お腹は空くし、ご飯も必要だ。

「……夕飯、買い出し行かなきゃ」

私は半分溜息交じりに鞄を手に取った。するとアクスタくんが肩に飛び移りながら、ぼそりと言った。

「やれやれ」

彼は呆れながらも、いつもの調子で付いてきてくれた。


「ふう、何とか買えた」

帰り道。半額弁当が入ったスーパーの袋を揺らしながら歩いていた。

 アクスタくんと雑談しながら、いつもの商店街に差し掛かった——その時だった。お洒落な八百屋の店先に貼られたポスターが目に入った。


「アルバイト募集! 週3日・4時間~

 POP作成などの”店づくり”に興味のある方、大歓迎!」


 思わず足が止まった。

「週3で4時間か……」

数字だけ見れば、”普通”。だけど、かつて週にたった2時間が限界だった私には、少しだけ”重い”。

 でも——その下の言葉が、ずっと引っかかっていた。

 ——POP作成。”店づくり”。

 アクスタくんが肩の上で、ちらっとポスターを見上げる。

「お前、絵とかデザイン好きだろ。向いてんじゃねえの?」

その声に、胸の奥が微かに揺れた。

 私は黙ってポスターを見つめた。今まで見た求人の中で、ここだけ色が違って見えた。

ずっと面接に落ち続けてきた私にとって、ここが最後の希望なのかも知れない——。


「行ってみようかな」


 私はそっとスマホを取り出し、ポスターの写真を撮った。

 その瞬間、胸の奥で小さな火が、また一つぽっと灯った気がした。

【次回予告】

「アクスタくんとアルバイト-4」

何度も落ち続けたバイト探しの末、沙百合は一つのポスターの前で足を止める。

“店づくり”という言葉に小さな希望が灯り、勇気を出して扉を叩くことにした。

そこで待っていたのは、今までとは少し違う空気。

――沙百合の日常が、また静かに動き出す。

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