表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/30

アクスタくんと初恋-1

【お知らせ】

活動報告も不定期で更新しています。

お時間があれば是非見て頂けると嬉しいです!


☆11/11、11/14 活動報告更新しました!

 金曜日の朝。いつもより少し早く目が覚めた私は、机で化粧をしていた。

 コンシーラー、良し。眉毛、良し。まつ毛はしっかりとビューラーで上げて——。

「……おい」

低めの声がして、手が止まった。鏡の横を見ると、アクスタくんが腕を組んでジト目でこちらを見上げていた。

「前から思ってたけどさ。お前、金曜日だけやたらと気合入れて化粧してないか?

いつも”マスクすればいっか”ってテキトーなのに」

「え……べ、別に?気のせいじゃない?」

……アクスタくんにはうまく誤魔化せない。だって、今日はフランス語の授業がある日だし。

「ま、好きにしろよ」

アクスタくんは素っ気なくそう言いながらも、その目はどこか探るようだった。私は視線を逸らし、そそくさと化粧を仕上げて荷物をまとめた。



 授業開始5分前。私は席について教科書を出していると——

「お、出雲さん。おはよ」

声がしてふと横を見た。そこには、対馬(つしま) 春樹(はるき)が立っていた。大学に入って少しチャラめの明るい茶髪になったけど、優しげな目元はあの頃のまま。都会に染まったようで、どこか田舎の空気を残している。

「あ……対馬くん、おはよう」

返事をしながら、少しぎこちなく笑ってしまう。

「俺さ、今日の課題全然やってねーわ」

「また夜更かししてたんでしょ?」

「そう。気付いたら3時でさ。死ぬかと思った」

「ちゃんと寝なさいって……」

他愛のない会話でさえ、胸がざわつく。——このざわつきの理由に、私は自分で気づかないフリをしていた。


 授業が始まった。私は背筋を伸ばして、先生の話を聞いている——つもりだった。

 なのに。気づけば視線が横へ吸い寄せられる。

 対馬くんはペンを握ったまま、あくびをしていた。眠そうに目をこすり、板書をしたかと思えば、またこくりと船を漕ぎそうになる。ここまで眠くなるまで夜更かしするとか、馬鹿みたい。……こんな姿、見なくていいのに。でも、こんなところも、ちょっと愛おしいと思ってしまう自分が悔しい。

「……おい、どこ見てんだよ」

肩の上からアクスタくんがボソッと言った。

「み、見てない!見てないってば!」

慌ててアクスタくんに囁くと、アクスタくんは「ふうん?」と疑わしげに目を細めた。……絶対、バレてる。


 授業はあっという間に終わり、気づけば私は自然と対馬くんと一緒に教室を出ていた。

「てかさ、来週の小テスト範囲広くね?」

「ホントにそれな。私も絶対無理」

普通の会話なのに、なぜか胸が脈打つ。何気ないやりとりなのに、どうしてこんなに楽しいんだろう。

「じゃ、また次のフラ語で」

「うん、またね」

軽く手を振って去っていく対馬くん。私はその背中が見えなくなるまで目で追ってしまい、溜息が零れた。


「……なあ、お前」

肩の上で黙って私たちの会話を聞いていたアクスタくんが、じとっとした目でこちらを見上げてきた。

「今日、お前ずっとおかしかったよな。授業中もあいつのことチラチラ見てたし、顔も赤かったし」

「……」

「図星か。あいつが”特別”だったってのは、見りゃ分かる」

胸の奥がきゅっと掴まれ、私はうつむいた。するとアクスタくんは小さく息を吐き、静かに続けた。

「お前、前に言ってたよな。”大学入ってすぐ、失恋した”って」

私は立ち止まったまま、何も言えなかった。それでもアクスタくんはそんな私を見透かしたように、ぽつりと言った。

「……あいつ、だろ?」

返事をしなくても、アクスタくんには分かっていた。私は胸に手を当て、視線を落とす。するとアクスタくんは首を傾げて言った。

「……なあ、お前らに何があったんだよ。聞かせろよ」

その声音は、いつものように茶化す声ではなく——優しかった。

「……アクスタくんには、何も隠せないね」

私は顔を上げて、アクスタくんの小さな瞳を見つめた。


「——話すよ。……私と対馬くんのこと。全部話すよ」

【次回予告】


「アクスタくんと初恋-2」


未だに過去の未練を引き摺る沙百合。

彼女はなぜ、対馬に恋をしたのか。

そして、二人の間に何があったのか——。

あの頃の甘くて痛い記憶が、今、静かに蘇る。


※沙百合編Part1が終了次第、いずれカルマ編が始まる予定です。

今のところ沙百合目線でしか描かれなかった彼が、ついに“本人”として動き出す日も、そう遠くはない……かもしれません。


※最近少し忙しく、更新頻度が少し下がるかも知れません。それでも物語はまだまだ続きますので、最後まで見届けて頂けると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ