第6話:宿敵リベンジ!鋼の鱗を断ち切れ!
クロダイって口がギザギザしてて怖いよね。
……あの日の屈辱は、忘れてなんかいない。
クロダイ。俺をくわえてブン回し、海へと放り捨てたあの野郎。
だが今の俺は、あの頃のシオマネキじゃない。
「俺はガザミ……遊泳脚を手に入れた水中の狩人だ!」
アジとの死闘を制し、ヒラメもカレイも狩って喰らった。
毒も、速度も、感覚も、全部が段違いだ。
そして今――目の前にいるのは、かつての宿敵、クロダイ。
……だが。
「でけぇ……!?」
思わず声が漏れた。
あいつ、でかくなってる。っていうか、クロダイってレベルじゃねぇ。
まるでボスモンスターじゃねぇか!
よく見りゃ、俺の毒を喰らった部位、あれ再生してる……?
しかもより分厚く、強靭な鱗で覆われてやがる!
「クッソ、俺の毒で強化されてんのかよ……!」
因縁だ。だったらここで決着をつけるしかねぇ!
クロダイが吠えるように水中をかき乱すと、鋭い突進で襲いかかってきた。
「うおおおっ、来るかッ!」
ドンッ!と甲羅に衝撃。水が炸裂する。
痛みを噛み殺して、俺は遊泳脚で体勢を整え、回り込む。
「このまま正面からやり合ったら潰される。だったら……」
俺は進化して得た“視る力”に意識を集中させた。
――見える。鱗の継ぎ目、装甲の隙間。
「ここだ……!」
右のハサミを逆手に構え、左の毒ハサミで牽制しながら突っ込む!
ガギィンッ!!
「ちっ、硬すぎだろ……だがッ!」
鋭利に変化した俺のハサミ。ガザミとしての進化、その刃はただの武器じゃない。
使い方次第で、鎧だって裂ける。
「うおおおおっ! ハサミブレイクッ!!」
ガリガリガリッ!! バキッ!
鱗が剥がれた! 露出した柔らかな肉。そこが……急所だ!
クロダイがもんどり打って水中を暴れる。けれど、俺は離さない!
「これで、終わりだ――!」
毒をまとわせた右のハサミで、思いっきり叩き込む!
ズブッ!!
水の中に、赤い煙のような血が広がる。
クロダイが、沈んだ。
ゆっくりと、力なく、海底の影へと。
「……やった、か……」
俺は大きく息をつく。傷だらけで、脚も動かない。でも――
「勝った……俺は、クロダイに勝ったんだ!」
確かに強くなってる。あの時、海へ投げ捨てられた俺とは、もう違う。
だけど、これで終わりじゃない。
俺は、まだ進化の途中なんだ。
「さあ――喰ってやるよ、クロダイ。お前の力、今度は俺のものにしてやる!」
次なる進化の気配を感じながら、俺は宿敵の肉をそのハサミで掴んだ。
次は進化します。