竜塵砂海(中編)
暑い日に飲みたい物と言えば何か。
人それぞれ、好みはあるだろう。しかしほとんどの人はこう付け加えるはずだ。
冷たい飲み物、と。
フミカたちもまた、ひんやりとしたドリンクを補給していた。
一気に飲んで、オヤジチックに息を吐く。
「くかぁー!! キンキンに冷えた花蜜は最高だね! 流石ヨアケさん! 天才の発想ですよ! もはやこれは天使級です!」
「何よりですわ。確かに天使的うまさ、というものかもしれませんね」
「死ぬほどうまいと言い換えてもいいな」
「そいつは勘弁だぜ……」
苦々しい表情のカリナ。咎人牢墓で味わったあの花蜜を思い出したのだろう。
これまで安全だったもの、有用だったものが牙を剥くあの感覚。
正直に言えば、フミカも二度とごめんだ。
安全なものは安全なままであって欲しい。
ちら、と視線を送る。
大きな泉の中に浮かぶ、とても小さな妖精に。
「ミリルも飲んでみたら?」
「ボクに必要は――」
「いいから」
「むぐっ!?」
顔から浴びるように花蜜を受けたミリルが、抗議の眼差しを返してくる。
が、即座に態度は軟化した。もしかしなくても、口に入った花蜜が原因だ。
「ま、まぁ、悪くはない……けれど」
「意味がないことだって、してもいいでしょ? 極端に言っちゃえば、それが生きるってことなんだし」
「お前は無駄の割合が多すぎるけどな。勉強に割り振らなきゃいけないリソースもゲームに費やしてるだろ」
「うるさいなぁ。いいんだよ。ゲームは人生なんだから」
「ゲームは、人生……」
「それじゃ生活できないだろ」
「できますぅ。どうにかしてくれるって。未来の私がね!」
「他力……いや自力……? どのみち無理じゃねえの……?」
「……ボクはいいと思うよ」
「ホント!? だよねーミリルならわかってくれると思ってた!」
フミカが満面の笑みを作ると、ミリルは顔を背けた。
恥ずかしがっているのだろうか。なんにせよ、以前より打ち解けてきている気がする。
このまま、仲間から友達にクラスチェンジできる日も遠くなさそうだ。
コミュ障で友達が少ない自分が、である。
流石、私。やればできる子。
などと、自画自賛したところで。
「じゃ、ヨアケさんも復活してだいぶ経ちましたし。先延ばしにしてた問題と対峙しますか」
全員の視線が、泉の傍に生えるヤシの木に集中する。
そこに隠れるようにして腕を組んでいる、顔をスカーフで覆っている男へと。
「ここに辿り着いたということは、なかなかの勇敢さだな。尊敬してやるよ」
「なんだこいつ、偉そうな奴だな」
早速食って掛かるカリナ。
茶色いスカーフ男は、吟味するようにフミカたちを見比べた。
「しかしこのエリアは、あらゆる場所と比較しても過酷だ。無事に生き残れるか……ふん、どうせ死にはしないか。生きたまま砂に埋もれないよう気を付けるんだな」
「なんだって――」
「暖簾に腕押しするようなものだ。やめておけ。本題に入ろう」
ナギサに窘められて、カリナが身を引く。
スカーフ男がようやく本題に入った。
「俺は情報屋だ。ここまで辿り着いたことを祝し、一つ、耳寄りな情報を教えてやろう」
チッ、というカリナの舌打ち。暑さで普段よりもイライラしているのかもしれない。
「この世には、摩訶不思議なものがある。例えば、楔の花なんてのは最上級の神秘だな。由来はせいぜいが伝説だけ。神が植えた花だと言う奴もいれば、星から降ってきたなんて話もある。或いは、祝福に見せかけた、呪いの花だって言う奴も。けどよ、不思議じゃないか? みんな花は見たことあるのに、種を見たことがない。花が生えるためには、種子が必要なのにな」
「確かにそうですわね」
ヨアケが相槌を打つ。情報屋は饒舌に続けた。
「噂では、どこかに、種があるらしい。近くには守護者がいて、それを見守ってるとか。なんでも、楔の花とは別系統の不死の守護者らしいが、心当たりあるか? もしあれば、よく探ってみることだな。なあに、気にすることはない。不死ならば死なん。少しくらい殴っても、ちょっと怒られるぐらいで済むさ」
「何かありますか? フミカさん」
ヨアケはフミカを真っ直ぐ見つめてくる。過去の記憶を思い起こそうと、うんうんと唸る。
しかし思い当たらない……厳密に言えば、死なない敵ばかりでどれが対象なのかがわからない。
種自体もここに至るまでいくつか入手している。
回復用の木の実だとか。調合用の種子だとか。
「うーん、それっぽい敵、多くないです?」
「不滅の敵だらけですからね。それにまだ出会っていない可能性もありますから。……ミリル、あなたはどうです?」
「どうしてボクに?」
「フミカさんは、そしてわたくしたちはプレイヤーです。ですがあなたは違う。そうですね、細かく言えば違いますが、ゲーム実況を見ているリスナー……とでも言えばいいでしょうか。見え方が、わたくしたちとは違うはずです。そして、気付きもまた」
「……知らないよ」
「そうですか。なら仕方がありませんわね。後でいっしょに考察しましょうか。このステージを、クリアしてから。でないと……」
「でないと?」
「またもや、溶けて、しまいそうです……」
微笑みながら倒れかけるヨアケ。
「わ、わーっ!? 急いで泉に!」
※※※
「申し訳ありませんが、先に進んでくださいますか? 後から追い付きますから……」
真っ青なヨアケに言われて、カリナたちは三人で進むことになった。
うだるような暑さではあるものの、情けない……とは少し思ったものの、虫沼の楽園での失態を思い出し、言及するのはやめておいた。
「進むのはいいが、どこに行けばいいんだこりゃ」
「向こうだな、恐らくは」
迷いなく方向を指し示す、人間探知機もといナギサ。
その超人っぷりをすごいなとは思うが、嫉妬はしない。
ただ、
「流石ナギサさんですね!」
目をキラキラ輝かせるフミカ。
そっちの態度は引っかかった。
「さっさと行くぞ。暑いことに変わりはないんだからな」
オアシスの存在は心の拠り所にはなるが、あくまでも精神的にマシというだけだ。キンキンに冷やした花蜜にも限りがある。幸いにも冷却効果は保たれているので、人一倍暑さに弱いヨアケ以外なら問題なく活動できる。
ただ、一度飲んでしまえば冷やし直しだ。いつもよりも神経を使う。
「でも、ナギサさんの探知でどうにかなりそうです。ありがとうございます! 良かったね、カリナ!」
「ふん。そうだな」
鼻を鳴らすとフミカが不思議そうな顔をする。
こっちの気を知らずに、ナギサはそそくさと進み始めた。
暑さを物とせず先導して、軍人みたいにハンドサインを出してくる。
止まれ、とのことだった。
先の砂を指し示す。砂がいくつも盛り上がっているのが確認できた。
小声で静かに囁いてくる。
「ここに先程のドラゴンが9体ほど潜んでいる」
「で、どうすんだ。このままバトルのか?」
「私は構わないが、君たちはどうする? 花蜜はなるべく温存しておきたいだろう?」
「そうですね……無傷で突破したいところです」
「魔法で一掃するか?」
「けど、ドラゴンって元々あまり魔法が効かない生き物なんだよね」
つまりせっかくの高火力も形無しであるらしい。
「皮膚は強固に思えた。となれば、打撃が有効だ」
「それはいいんですけど、流石にこの数の相手は無理ですよ」
しかし釣るのも難しそうだった。一匹が反応したら最後、全ての敵がアクティブになるだろう。
「音を聞く限り、彼らは回遊しているようだ。魚のようにな」
「と言いますと?」
「タイミングを見計らって音を出せば、出現位置をコントロールできる。そこをフミカ君が叩くんだ。こちらに接近するまで、地上に姿を現さないようだからな」
「いいですね。けど、どうやって」
「こうするんだ」
おもむろにナギサがナイフを投擲する。
と、そこへ複数の砂だまりが動き始めるのが見えた。最初こそ盛り上がっていたが、深く潜ったのか沈んでしまう。これでは、どこからどのタイミングでやってくるかわからない――ナギサを除いては。
「右だ」
「はい!」
フミカが右へとメイスを振るった瞬間、タイミング良くドラゴンが飛び出して、その脳天に直撃を受けた。
「左」
「はい!」
「前、右斜め前」
「はいっはい!」
モグラ叩きのように効率よくドラゴンを叩いていくフミカ。
その姿はまるで正月の代名詞、餅つきのようだった。
息ぴったりの職人が、阿吽の呼吸で餅をつく。
周囲のギャラリーはただ、歓声を上げながら見つめるだけ。
二人以外、割って入る余地はない――。
「……っ」
「いい具合にダメージを与えたな。まとまってくるぞ。前方だ」
今度はわかりやすく巨大な砂だまりがフミカの元へ移動してくる。
そこへ、フミカは勝ち気にメイスを構えた。
「行きます! 地割れ打ち!」
フミカのスキルで一網打尽となったドラゴンたちは、悲鳴を上げて絶命。
敵を殲滅したカリナたちは順調に目的地へと進んでいく。
「こりゃなんだ? 遺跡か?」
現れたのは、かつては壮大だったであろう建築物。
古代文明の遺跡とでも言うべき廃墟が点在している。
「アルタフェルド王国のもの……ですかね?」
「ここに来るまでいくつか文字を見たが、形状が違う。別の文明なんじゃないか。ヨアケならもう少しわかるだろうが」
「なんにせよ滅びたんならどうでもいいだろ」
「こういうのが攻略の鍵になったりするんだから。ちゃんと考察しないともったいないよ?」
「フミカ君の言う通りだ。調査した方がいい」
フミカとナギサの意見が一致している。
ただそれだけのことなのに、妙な感情が内側から溢れてくる。
「チッ。じゃあ、さっさと済ませろよ。あたしはアイテムがないか見てくる」
「あ、待ってよ。カリナ。私も行くから」
「いや別に一人で――」
「それはナギサさんの役目。でしょ?」
「……好きにしろよ」
嫌な態度を取ってしまう。
そんな自分に嫌気が差しながらも、カリナはフミカと探索を始めた。
※※※
どちらかというと、エジプトだとか、そういう砂漠系の遺跡だった。
フミカの脳を占める要素は大抵がゲームだが、幸いにして遺跡調査も経験がある。
もちろん、ゲームで学んだ知識だ。
トレジャーハンターが主人公のゲームのおかげで、ちょこっとだけならわかる。
無論、現実の考古学や遺跡調査とはかけ離れているだろうが、
「同じゲームになら通用するよね……!」
鼻歌交じりに壁画をチェックする。文字らしきものが書かれているが、当然読めない。
それでも絵は理解できた。ドラゴンの絵だ。
たくさんのドラゴンと、人々がいっしょに暮らしている絵。
薄暗い石造りの建物の中を、カリナと見て回る。
「やっぱりドラゴンと関係があるみたいだね」
ちら、とカリナを見る。彼女は苛立っている。
原因は暑さのせいか、はたまたそれ以外か……。
いいや、きっとそれ以外だ。
「なんか、ごめん」
「なんで謝るんだよ。悪くないのに」
似たようなやり取りを、ゲーム内で出会ってすぐにした気がする。
でも、今回は確信があった。とりあえずで謝っているわけではない。
「自意識過剰だったらさ、恥ずかしいんだけど」
「あ?」
「直接的な原因じゃないとは……思うけど、無関係ではないよね? カリナが怒ってるの」
「は? なんでそう思う――」
「わかるよ、もう」
カリナへ距離を詰めて、その瞳を見つめる。
カリナが不機嫌になった時、必ずと言っていいほど、自分と関係していた。
なんでそうなるのか。ロジックは説明できないし、完全に理解しているとは言い難い。
でも、自分が関わっているのは確かなのだ。
だから、この謝罪には正式な理由がある。因果がある。
「だ、だとしてもおかしいだろ。悪いわけじゃないのに謝るのは――」
「悪いから謝ってるわけじゃないよ。気苦労かけてごめんねってこと」
「だから――」
「……誰にでも言う訳じゃないよ? カリナだから、言ったの。親しき仲にも礼儀ありってやつ」
「なら……いいか」
カリナは顔を背けた。自然と笑みがこぼれる。
会話を続けようとして、ナギサの声が反響した。
「重要そうな壁画を発見した。来てくれ」
※※※
砂埃を被った、ところどころに欠け、ひび割れ、色褪せた壁画。
それでも、大事な部分は残っていた。
「ドラゴンと……花……?」
黒色の巨大な竜と、これまた同じくらい大きな金色の花が描かれている。
「楔の花だと私は推察するが。君はどう思う」
ナギサの問いかけに、フミカは顎に手を当てた。
「私もそう思います。けれど――」
「なんか、怪獣映画みたいだな」
カリナの例えはわかりやすい。
まさに怪獣同士が睨み合っているような。
特撮映画のワンシーンめいた壁画だ。
設定では古代の人々が描いたということになっているが、実際これを作り上げたのはマメシステムズというゲーム会社のプログラマーであり、デザイナーであり、シナリオライターだ。
そういうジャンルのオマージュが含まれていても不思議ではない。
そこまで考えて、ナギサは思考を改める。
(メタ読みは良くない、か。黙っておこう)
フミカが続ける。
「やっぱりこれ、戦ってるように見えるよねえ」
「ま、喧嘩前の睨み合いだわな」
「或いは、決闘に臨もうとしている最中だ」
ナギサとカリナは視線を交わした。が、カリナから視線を外した。
そのことに違和感を覚えつつも、フミカの考察に耳を傾ける。
「竜と花が争ってる……。そして――」
フミカが壁画を指す。指先には、花の元に集った人々がいる。
剣や弓、槍を掲げる古代人の姿が。
「多勢に無勢だな」
少数のドラゴンと、花の元に集まった軍隊。
どちらが勝利者であるのかは。
「む」
「何か気付いたことでも?」
「ヨアケに任せるんじゃなかったのか?」
「いや、私は特に考察を深める気はない。専門外だからな。だが、こちらは別だ」
「こちらってなんだよ?」
「あちらと言い直すべきか」
「あちら――」
ナギサは天井に向けて人差し指を立てる。
今にも崩れそうな天井に開いた穴を。
すぐさま、轟音と共に揺れが起きた。
「なっなんだ!?」
「地震!?」
「違うな。原因はアレだ」
示し合わせたかのように、覗いてくる。
巨大な瞳――黒きドラゴンの眼光が。
「粋な演出だな」
「ま、まずいっ!? 潰されちゃう!」
「案ずるな」
予期していたナギサの右手には、クロスボウが装備されている。
瞳に直撃を受けたドラゴンが絶叫する。
「目薬にしては刺激的過ぎたか」
天井越しでも、行き先はわかっている。ナギサは駆け出した。
「ナギサさん!?」
「あの眼光、見覚えがある。私に任せてもらおう」
瓦礫が転がる薄暗い遺跡を、詰まることなく進んでいく。
自身の持つ身体ポテンシャルを余すところなく発揮して、灼熱の砂地へと到達した。
そこへ現れる巨大な影。
「久しぶりだな。竜の通過路以来か」
上空から飛来する黒色の竜。死黒竜ハイバリ。
その頭部には、傷がある。ナギサが突き刺したサーベルの切創が。
形状は多くの人々が想像するドラゴンそのもの。
ただし巨大だ。渓谷に掛かった長橋を容易く落下させるほどに。
しかし大きさが必ずしも強さに直結するとは限らない。
「ふむ。細かなディティールは異なるが、あの壁画の竜に似ているか」
吠えるドラゴン。滞空しながら、大きな口を開く。
ドラゴン系のオーソドックスな技――火球砲撃。
「いや、考察は私の役目ではなかったな」
流星の如く流れ落ちる火球。地上を爆撃し、砂煙が周辺を包み込む。
「的が小さすぎて、当たらないか?」
煙を貫くように精確に、矢はドラゴンの頭部――古傷へと命中した。
悲鳴を上げながらドラゴンが砂上へと接地。
弓からサーベルへと武器を変え、ナギサは疾走する。
ライフゲージの減少は、三撃を与えたにしては減少率が高い。
(古傷でのダメージボーナスか)
どうやら前回傷付けた頭部が弱点化しているらしい。
これまでの相手はいくら手傷を負わせたところで、その傷が継続することはなかった。
これも考察ポイントだろう。つまり、考える必要はないということ。
「私好みだ」
戦いはシンプルな方がいい。
肉薄したナギサを、ドラゴンが前足を振るって叩き潰そうとする。
それを跳躍で難なく回避。加えて、擦れ違い様に斬撃を見舞った。
今度は身体を回転するようにして、尻尾で薙いでくる。
ブレイブアタックにて迎撃。タックルも同様に。
ナギサにとっては、砂漠に潜んでいた小柄なドラゴンも、巨体が自慢のハイバリも大した違いはない。
倒せる相手。倒す、相手。
「肉が食えれば良かったんだが」
養父によって、サバイバル術は一通り叩き込まれている。
例えドラゴンだろうと、美味しく調理する自信がある。
が、今回は流石に披露する機会はなさそうだ。
「残念だな」
機会に恵まれないのも。
このドラゴンの強さも。
ドラゴンが今一度の大咆哮。必殺の一撃を敢行するつもりだろう。
「訂正しよう――」
無害の一撃……否。
墓穴の一撃だと。
ドラゴンは炎を吐き出しながら突撃してくる。
サーベルによる斬撃が炎を霧散させる。
構わず突進する竜。
大して、動じることなく剣を構えるナギサ。
凛とした眼差しと共に放たれるのは。
「言い得て妙か」
サーベルを鞘にゆっくりと仕舞う。
剣術スキル、竜殺し。
竜を屠るための一閃を受けたドラゴンは、血しぶきを上げて絶命する。
死体が作り上げた砂埃が周囲を覆う。
その不快さも、ナギサにしてみればそよ風と同じだ。
視界が晴れる前に一点を見つめる。
砂埃がなくなると、強烈な日差しが襲ってくる。
苛烈な太陽すら、ナギサは意に介さない。
その影響をまともに受けている仲間が、嬉しそうに拍手をした。
「すごいすごい! 流石ナギサさん!」
「造作もないさ。それに、すまなかった。獲物を独り占めしてしまって――」
「全然いいですよ! そういう時だってありますよね! ゲーマーあるある、です!」
「ふっ、確かにな」
此度の戦いは、効率が良かったから行ったのではない。
純粋なこだわり、戦闘欲だ。戦いという気持ちがゆえだ。
これならば、ヨアケも理解を示してくれるだろう。
歯ごたえはなかった。
されど、スカッとした。
「ありがとう。……む」
「ナギサさん?」
「いや、なんでもないさ。そろそろヨアケも復活したはずだ。迎えに行こう」
「はい! 考察を進めましょう!」
フミカは意気揚々として変わりはない。
しかしナギサは見逃さなかった。
不服そうなカリナの表情と、その小さな呟きを。
「あたしだって、もっと……」




