プロローグ
目の前で子供が殺されそうになっている。
この状況に出会ってしまったとき普通の人間ならどうするだろうか。
状況を説明すると 場所は日本の電車内 運行中で外への出口はない 日中の休日で車内の人間はまばら
犯人は黒ずくめで大きめのナイフを持っている。 子連れの親を殺し 今まさに子供にも刃が向かうところ
こんな状況に鉢合ったとき人はどう行動するだろうか。
普通の人なら逃げる
殺されそうな人を助けることなんてできない
普通の人ならと言って自分なら助けられるといっているように聞こえるかもしれないが
そんなことは絶対にない
でもこんなことをわざわざ考える人も少ないと思う
だから聞きたい どうするかを
今俺はその状況に向き合っている
人生の終わりが今来るなんて そんなの聞いてない
頭が真っ白になってその場に立ちすくんだ俺は子供の血が付いた刃物を向けられ体を押さえつけられた
「たっ、たすけ」
そう叫ぼうとして声が止まった
ほんの少し前まで目の前の子供を助けようか考え、そして助けなかった
たったさっき自分がした選択がゆるぎない答えなのだと思い知った。
でも、俺だって、、、俺だってな、、、
自分が安全だという保障があれば人を助けることだってできたはずだ
自分が一番大事なのはあたりまえだ 仕方ないだろ
人は人を助けられない
でも助けられるなら、助けたい
それが普通で自然だ
最初から矛盾している
それでも誰か
誰か助けてほしい誰でもいい
俺に手を差し伸べてくれ
死にたくない
まだやり残したことが沢山ある
死にたくない死にたくない死にたくない
懇願せずにはいられなかった
子供を見捨てたのに
こんな糞みたいな思いで死ぬなんて
力のないやつは死ぬしかないのか
あぁ…
どうしようもない現実に立ち会った時 人は諦めることしかできない
でも 考えたりあがいたりしないうちに諦めるのは 嫌だ
俺は絶対に諦めない 絶対に…
誰にも聞こえない文句を吐き散らして
俺は死んでいった。