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対「魔物大発生」 4

 普通に眠っても大丈夫そうなので、眠って――翌日。

 呼び出されることなく起きることはできて、アイスラだけではなくラウールアとアトレとも何事も合流したが、まずは夜に何かあったかどうかの確認をすることにした。

 緊急事態ではないのでウェインさまとマスター・アッドはまだ休んでいるようだが、こちらにはウェインさまの娘であるラウールアが居るので、騎士に聞いても教えてくれるのは間違いない。


 ――特に異常なし。

 平時であればなんでもない言葉だが、今聞くと安堵する言葉である。

 多少の増減はあったようだが、森から出てくる魔物は変わらず浅層の魔物で散発的であったため、警戒を怠っていないヘルーデン混成軍で余裕を持って対応できたそうだ。

 ただ、いくら松明と魔法で照らされていたとはいえ、夜の時間帯は視界不良な部分があるため、多少の負傷者は出たらしい。

 といっても、既に回復済みで死者は出ていないので、それは喜ばしいことだ。


 確認したあと、門から出て、森を見る。

 昨日と変わらず……いや、より禍々しい雰囲気を感じる。

 ……今日は浅層だけではなく中層の魔物も出てくる気がした。

 今日の戦いは間違いなく激しくなる――と予感させるには十分である。


 だからこそ、今しかないと思った。

 今行くべきだ、と何故か思う。


「アイスラ、ラウールア、アトレ。森に入って様子を窺うなら今しかないと思わないか?」


 三人共、否はなし。やる気に満ちている。


     ―――


 自由にやれるからこそ、森の中に入って様子を窺うことができるのだ。

 魔物は散発的に現れているため、入る分には問題ない。

 問題なのは、ヘルーデン混成軍に入るところを見られるということだ。

 遊撃とはいえ、勝手に動いた結果で後追いが出て来られても困る。

 なので、現状で責任者と思われる、強面の筋骨隆々な騎士に、報告をしっかりと行う。


「……なるほど。昨日の活躍を見ているからこそ、危険だから駄目とは強く言えませんな。それに、森の中の確認はしておいた方がいいのは間違いない。……あなた方にとって危険と判断する状況というのは、かなりの危機的状況のような気がしますが、それでも自分の命を優先して、無茶をせずに生きて戻ってくること。それが約束できるのであれば、許可します」


 約束をして、許可をもらう。

 ちなみに、あとでラウールアに聞いたら、この強面の騎士が騎士団長だった。


 許可をもらえたので、森から出てくる魔物が増える前に森の中へと突入する。

 入って直ぐに、周囲の気配を探っておく。

 今は出てくる魔物の数が散発的ということもあって、魔物の数は多く感じるのだが、それでも針を縫うように先へと進むことはどうにかできそうだ。

 なので、進む前に確認をしておく。


「いざという時は木から木へ飛び移るように移動しようと思うが、構わないか?」


 俺はできるが、そっちは? とラウールアとアトレを見る。

 アイスラはできることを知っているので問題ない。


「構わないわ! やったことはないけれど、飛び移るだけならできるでしょ!」


「造作もございません。ラウールアさまの補佐もできますので、こちらのことは気にせずとも大丈夫です」


 まあ、アイスラとやり合えるアトレが居るから、やったことはないと言うラウールアも大丈夫だろう。

 しかし、ラウールアは辺境伯令嬢なのに思い切りがいいというか、普通にやる気満々である。

 貴族令嬢には淑女教育があると思うのだが……ルルアさまが苦労していそうな気がした。


 ともかく、大丈夫そうなので進みながら森の中の様子を窺っていく。

誘魔(ゆうま)」の影響で、魔物は他には目も向けずにヘルーデンへと誘い集められていっている。

 ……ところで、「誘魔(ゆうま)」が特殊な臭いを発する禁止魔道具というのは聞いたが、実物を見たことがないな。

 どういうものから特殊な臭いを発しているのか見てみたい気もするが……禁止されているものだから無理だろうし、諦めるしかないか。

 そんなことを考えつつ、どこからか魔物が現れて集まっていくのを見つけたり、浅層に中層で出てくる魔物の多くが入り込んでいるのを見かけたので、周囲に他の魔物の気配がなくて倒しても問題ないのはできるだけ倒していき、下手に戦うと周囲の魔物も呼び寄せかねない場合は木に登って木から木へと飛び移ることで回避していく。

 ラウールアも問題なく飛び移ることができた。

 本人は楽しいのか笑みを浮かべている。


 そうして、どうにか中層付近まで来ると――浅層に近いところは魔物が多くて荒れていたが、中層の奥の方は落ち着いていた。

 おそらく、奥の方は禁止魔道具の効果範囲外なのだろう。

 それと、ここまで来たら魔物が集まり出して、ヘルーデンに向かっていっているのが見えた。

 ヘルーデンの方は、既にたくさんの魔物が森から出ている状況かもしれない。


 中層の魔物が出て来そうになっているのと、「魔物大発生(スタンピード)」はまだ続きそうなのがわかっただけでも十分だろう。

 一旦戻ろうかと、ヘルーデンまで無事に戻れそうな道があるか調べるために広範囲の様子を探った時、戦闘が起こっている気配を感じるところがあった。

 大勢で複数の魔物を相手取っているような、そんな感じだ。

 魔物同士で争っていると思ったのだが、一方――大勢の方には魔物特有の禍々しい気配が一切感じられない。

 人が魔物と戦っている? この状況で? ヘルーデンで戦うのではなく? どこか他所から来たのだろうか?

 三人に相談して、とりあえず見に行ってみることにした。


 地上で進むと魔物と遭遇するので木から木へと飛び移りながら、戦闘が起こっているところに向かいつつ、気配で様子を感じ取っていると大勢居る方が優勢のようで、思ったよりも早く戦いが終わりそうだ。

 それでも、戦いが終わる前に、様子を見られるところまで近付くことはできた。


 戦いはもう終わっていて――一瞬、目を疑う。

 三人を見れば、俺と同じように目を疑っているようだったので、幻でもなんでもなく現実だと認識する。


 大勢の方は、髪色は様々だが、誰しもが同じ特徴を持っていた。

 耳が長い。エルフだ。間違いなくエルフである。

 エルフたちが中層に現れる魔物たちを倒していて、持ち帰ろうとしているところだった。

 無駄な戦闘を避けるために気配を消していたのが功を奏したのか、エルフたちがこちらに気付いた様子はない。

 漸く得られた手掛かりに心が揺り動かされる。

 後を追おうと思えば追えそうだが……。


「どうされますか? ジオさま」


 アイスラが尋ねてくる。

 俺は少しだけ考えて……。


「ここは一旦見なかったことにして、ヘルーデンに戻ろう」


 状況的にヘルーデンを守る方を選択する。


「かしこまりました。ジオさまの選択を尊重します」


 アイスラは問題ない。

 俺の件に関係ないが、ラウールアとアトレにも言っておく。


「ラウールア。アトレ。エルフを見たことは広めない方がいいと俺は思う」


「なんか訳がありそうだけど……いいわ。ここだけの秘密ってことにしておく。下手に騒がしくしてしまうと敵対行動だと取られかねないしね」


「ラウールアさまがそうすると言うのなら、私に否はございません」


 二人も黙っていてくれるようだ。

 ただ、この場と、エルフたちが去っていく方向だけは、決して忘れないと目に焼き付けておいた。

ジオ「……漸く見つけた……手がかり……しかし………………良し。任せた。後を付けておいてくれ。あとで追いつく」

アイスラ「任せました。後から追います」

作者「いや、来ないだろ! というか、後を追うってどうやって追うつもりだよ!」

ジオ&アイスラ「「……勘?」」

作者「無理だあーーー!」

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