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対「魔物大発生」 1

「ちょっと! 私たちはジオと行動を共にしないと動けないんだから、勝手に動かないでよ!」


 ウェインさまのところに行く前に、ラウールアがアトレを連れて立ちはだかった。


「あなたはどこかに行っても構いませんよ。私がラウールアさまとジオさまをお守りしますので。寧ろ、あなたは邪魔です」


「これは不思議なことを言いますね。邪魔なのはあなたの方です。ジオさまとラウールアさまは私が守りますので、あなたこそ、どこかに行ってそのまま野垂れ死んでも構いませんよ」


 アトレがアイスラの前に立ちはだかる。

 行動を共にするのはいいが、この二人の関係性だけはどうにか改善して欲しいところだ。

 ……まあ、この関係性の影響が致命的なことにはならないというか、致命的になる前にどうにかしてしまう二人だと思うので、その辺りのことは心配していない。


 アイスラとアトレのことは気にせずに、ラウールアに謝る。


「済まない。忘れていた。けれど、ここで待っていれば会えると、戦いの場にでは出ずに待っていた」


「……嘘ではなさそうね。なら、いいわ。飛び出してしまう気持ちはわかるもの。だから、これから暴れてヘルーデンに手を出したことを後悔させてやるわ!」


 ラウールアは戦う気満々である。

 ただ、マスター・アッドが言った俺の役割は遊撃なので、真正面から戦う訳ではないのだが……それでもいいのだろうか?

 まだ確定していないけれど。いや、確定しそうでしなかった、だろうか。

 でも、ウェインさまに聞いても同じことを言いそうな気がしないでもない。

 なので、ウェインさまのところに向かい、聞いてみた。


「真正面から戦わせても大丈夫そうだが、そちらの方は十分な数が揃っている。寧ろ、遊撃の方を行える、任せられる数が少ないから、そちらを頼む。ジオとアイスラは独自の判断で動いてもらった方が良さそうだからな。その方が、私は安心して戦いに集中できる」


 遊撃というか、独自行動を許されたというか……まあ、遊撃でいいか。

 その方がやりやすいのは間違いない。


「――ということだが、遊撃みたいなものだが構わないか?」


「別にいいわよ。危ないところに颯爽と助けに入る、とかでしょ? いいと思うわ」


 ラウールアに確認するとそんな返答だったが、そればかりではないと思う。

 寧ろ、そればかりだと、どれだけ危険な状況になっているのか……。

 ともかく、これでするべきことを任されたので、そのための行動を始めよう――とした時に、ウェインさまから声をかけられる。


「ジオ。預かっている子たちだがな、まだまだ未熟であるため、後方に控えさせているから安心しろ」


 レオとマーガレットのことか。


「わかった。それなら安心だ。ウェインさまも、お気を付けて」


「私はそう簡単には死なんよ。それと言うなら、ジオの方だろう。やるべきことがあるのだから、死ぬなよ」


「俺もそのつもりはない。アイスラには言わなくていいのか?」


「がっはっはっ! アイスラは私の弟子だぞ! これくらいで死ぬような鍛え方はしておらんよ!」


 その通りです、とアイスラが笑みを浮かべた。

 ウェインさまはラウールアとアトレにも同じようなことを言い、そのあとにもう一度俺に声をかけてくる。


「ジオ。ラウールアのことを頼む」


「ああ。頼まれた」


 ウェインさまを安心させるために笑みを返し、アイスラ、ラウールア、アトレを連れて行動に出る。


     ―――


 門から外に出る。


「うおおおおおっ! この一撃で倒す! ――スカッた! 後詰め頼む! ありがとう!」


「あっちからもこっちからも! ええい! 広範囲魔法で一掃する! ――邪魔をするな! 気合で避けろ!」


「衛生兵! こっちだ! こいつは足を負傷したようだから頼む! ――何? 女の衛生兵がいいと? ちょっと待ってくれ! 一回教育する!」


 なんというか、壁の上から見るだけだとわからない状況だと思った。

 いや、見ているだけでは駄目だと、戦場となっている平原へと出て、そのまま駆けながら魔物を倒しつつ、危ない場面を見かければ手助けに入る、といったことをしていく。


「よっ! と――ラックスさんに手入れしてもらって正解だったな。切れ味が増している感じがする」


 俺は剣を使って斬っていく。

 漸くこの剣に慣れてきたというか、この剣が馴染んできた感じがする。


「ふっ! はっ! この程度であれば、いくらでも相手をしてあげるわ!」


 ラウールアはレイピアで魔物の急所を突いていた。

 ずれもなく、正確で的確であるため、かなりの腕前であると見ればわかる。


 俺とラウールアはそれなりの速度で魔物を倒していっていると思うのだが、やはりというか、アイスラとアトレの二人には負ける。


「邪魔ですので、もう少し向こうの方に離れてから、戦っていただけませんか? 私が倒そうとした魔物にあなたが手を出すと、私の流れが乱れるのですが?」


「おやおや、この程度で乱れてしまうのですか? 威勢のいいことを口にしていますが、案外大したことはないようですね。私から見ても邪魔ですので、どうぞ、あちらの方に移動してください」


「やれやれ、私の攻撃はあなたと違って強烈ですから、間違って食らってしまった場合、弱いあなたがそれで死んでしまわないかと危惧しているだけなのですが?」


「いえいえ、そのような心配は必要ありませんよ。のろまなあなたの攻撃など、私はかすりもしませんから」


「ふふふ」


「ははは」


 アイスラとアトレの魔物を倒していく速度は俺とラウールアよりも速いので、ヘルーデン混成軍からしても大きな助けとなっているが……発している雰囲気が怖いからか、なんというか及び腰で「あ、ありがとう」と感謝されている。

 アイスラとアトレの二人が揃ったら、今のところはこんな感じなので、この戦いの内に慣れて欲しいところだ。

 ……それは無理か。


 そうして、魔物を倒しつつ、負傷者が居れば衛生兵が居るところに運んだり、危ないところは手助けか、代わりに受け持ったりと、戦場となっている平原を縦横無尽に駆け回っていく。

 その中で思うことは、森から出て来ている魔物はゴブリンやコボルト、ウルフやボア、あとは虫型といった、事前に調べた通りの多種多様な魔物ばかりということと、浅層に出てくる魔物ばかりで、中層に出てくるのや大型の魔物の姿は見かけていないということだった。


 まだ始まったばかり。

 厳しくなるのはこれから、と予感させるには十分である。

作者「頑張れ〜!」

アイスラ「あなたも来なさい」

作者「いや、一発で終わるから!」

ジオ「大丈夫。一発も当たらなければいいだけだ」

作者「んな無茶な!」

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