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再び出会う

 結局、浅層の探索ではエルフに関するモノは何も見つけられなかったので、中層の探索を行うことにしてから数日経ったが、今のところ成果は芳しくない。

 いや、隠していても仕方ないので、正直に言えば何も見つかっていなかった。

 まあ、初めから手掛かりは一切なかった訳だし、そう簡単に見つかるようなら、既に見つかっているだろう。

 エルフの一人でもいいから、ヘルーデンに来てくれるとありがたいのだが……。


 ともかく、今は中層の探索に集中しよう。

 俺もアイスラも現れる魔物にはまだ余裕で対処できるが、それでも油断していい訳ではない。

 何より、今は人の頭部を丸呑みできそうな大蛇の魔物との戦闘中だ。


「ふっ!」


 飛びついてきたところを回避から、剣を振り下ろす。

 大蛇の魔物を胴体から真っ二つにすると、少し暴れたあとに絶命した。

 ラックスさんが作った剣は中層であってもまだまだ通じるので、さすがの出来だ、と言える。


「私に恐怖を感じていないのなら、獣としての本能が死んでいますね。それとも、『魔の領域(ここ)』はそういうのは関係なく襲ってくるのでしょうか?」


 アイスラは大猿の魔物数体と大猪の魔物を同時に相手取っているのだが、魔物たちはアイスラの敵となっていなかった。

 大猿の魔物の方は殴り、蹴りで的確に急所を打って――というか、打ち貫いて倒し、大猪の魔物の方は投げ飛ばしたあとに追撃で急所を踏み抜き、あっという間に倒す。

 こちらはこちらで、さすが、である。


 とりあえず、倒した魔物は余程損傷が酷くない限りは回収しておいた。

 シークが欲した巨大な蜘蛛のように、いつか使う時がくるかもしれないし、中層の魔物であれば売るとそれなりの金になるからである。


 それなりに出会う魔物を倒しつつ、中層の探索を続けていく。


     ―――


 翌日。

 まだ成果は出ていないが、諦めてはいけない。

 本日も中層の探索に向かうため、ヘルーデンの門に向かって進んでいると、門が見えた辺りで声をかけられる。


「お久し振りですね、ジオさま」


 視線を向ければ、そこに居たのは白髪が混じり出した黒髪に、どこにでも居そうな糸目の平凡な顔立ちの四十代の男性――ジネス商会・三代目のキンドさんだった。

 キンドさんはアイスラにも一礼してから、改めて俺を見る。


「……え? キンドさん? どうしてここに?」


「はい。実はこの度、ジネス商会はヘルーデンに店舗を構えることになりました。そこの店長を私が勤めることになりましたので、それでご挨拶をするために待っていたのです」


「ヘルーデンの店長? 待っていた? いや、でも、それなら王都の店舗の方は?」


 疑問を口にするが、キンドさんは「このような道端で話すような内容ではありませんし、ジネス商会の店舗に行きませんか?」と誘われたので、応じることにした。

 キンドさんに案内された場所は、ヘルーデンの大通りの一等地にある三階建ての大きな商店。「ジネス商会」の看板が提げられているのだが、まだ開店はしていないのか「準備中」の札もかけられている。


 裏手に回り、裏口から中へ入るとそこは倉庫で、キンドさんの姿を見た従業員と思われる人たちがはきはきとした挨拶をしていく。

 従業員たちは倉庫内にある商品を店舗の方に持っていって並べているようだった。

 その中を通り過ぎていき、三階まで上がって「店長室」の札がかけられた部屋の中に入る。


 品の良い調度品もいくつか置かれている、非常に整った部屋。

 そこに置かれたソファーに腰を下ろし、テーブルを挟んで置かれているソファーにはキンドさんが腰を下ろす。

 アイスラは俺の後方に控える。


「それで、話の続きですが、王都の店舗の方はどうなったのですか?」


「あの時予想していた通りのことになりました。ブラク商会が潰しにかかってきたのです。強引で乱暴な手も出そうとしてきましたので、従業員を守るために撤退を選択しました。もちろん、いつかブラク商会をやり返して王都に返り咲くつもりですし、従業員も無事ですから、そこまで悲嘆している訳ではありませんので、ご心配なく」


 キンドさんの表情が悲しげなモノとなるが、それは少しだけで、直ぐに笑みを浮かべる。

 気丈に振る舞っているという訳ではなく、思い出すと悲しいがもう前を向いている感じだった。

 やり返してやる、という気概が見える。


「そうですか。キンドさんならきっとできますよ」


「ありがとうございます。ですが、そのためにはまず新王をどうにかしなければいけません。そちらも、悲嘆していません。パワード家がどうにかすると信じていますから。その手助けを少しでもするために、私はここに来たのです」


「それは、こちらこそありがとうございます。ですが、ここに来たとは? まるで俺がここに居ると知っていたかのように聞こえますが」


「ええ、それはカルーナさまに聞いたと言いますか、ジオさまに助けられたことを話したあと、直接的な言葉は避けて、ヘルーデンに店を出した方がいいと助言してきたのです」


 なるほど。母上の指示か。

 キンドさんが俺と会った位置から、俺がどこに向かって、何をやろうとしているのか読んだようだ。

 母上に隠し事はできないな。


「不思議に思いましたが、実際に来て驚きましたよ。カルーナさまが言っていたように、懸念であった裏ギルドはなくなっていましたし、ジオさまの姿を見かけた時はこういうことか、と。直ぐお声をかけたかったのですが、妙に気を張っているように見えましたので、時機を見ることにして店舗準備を先に行ったのです」


 俺とアイスラが裏ギルドを潰すところまで読んでいたようだ。

 本当に、母上には隠し事ができない。


「そうですか。それはなんというか、ありがとうございます。ヘルーデンに来て、こうしてまた会えたことを嬉しく思います。今後も協力関係は続いていく、ということで合っていますか?」


「もちろんです。商人として協力させて頂きます。必要な物があれば手に入れますし、物によっては高額で買い取らせて頂きますよ」


 そう言われると、何かあったかな? と考えてしまう。

 何かある気がする。

 直ぐには思い当たらなかったので、アイスラに何かあるか? と尋ねると――。


「では、少々よろしいでしょうか?」


 そう断りを入れ、内密にしたいようでキンドさんを連れて部屋の端へと向かった。

 俺にも秘密のようだ。いや、わざわざ詮索するつもりはないが、それよりも……なんだったか……こう……言葉が出そうで出ない。


「……秘密……洋服店……メイド服……短く……露出を……」


「……はい……それは……ほう……なるほど……ジオさまに……」


 あっ、わかった。

 何があったのか。

 早速伝えようとアイスラとキンドさんを見ると、よろしくお願いします、とアイスラが頭を下げて、わかりました、とキンドさんが頭を下げたように見えた。

 何か成立したようだ。


 なので、次は俺の番だとキンドさんにお願いする。


「お待たせしました。ジオさまも何かあるようですね。何か必要でしょうか?」


「あっ、中層の魔物をそれなりに持って帰っているので、買い取りをお願いできますか?」


 全部という訳ではないが、それなりの数をそれなりの金額で買い取ってもらった。

アイスラ「メイド服以外でも……露出……ビキニ……」

キンド「それですと……これくらいで……ですので……」

作者「怪しい会話だなあ……」

ジオ「俺もキンドさんに話が」

作者「うん、ちょっと待とうか、ジオくん。今は駄目だ。まずは俺と話をしよう」

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