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確認はしない

 ヘルーデンに戻り、宿屋「綺羅星亭」の取っている部屋に入ると、肩掛け鞄(マジックバッグ)の中から道具一式を出して、早速母上に宛てた手紙を書く。

 手紙の内容は、まずは目的というか俺が行おうとしていることについてと、見通しがどれだけ経っているか――これを書いておかないと母上に怒られる――と、あとはアイスラが共に居ることと現状を細かく、といったところだろうか。

 他には……あっ、ちーちゃんについてというか、ハルートについても書いておかないといけない。

 その辺りのことを簡潔にしつつ、漏れがないように書いていく。

 それなりの量だが、一気に書いていった。


 あと、俺からだけではなく、アイスラにも書いてもらっている。

 何しろ、本来アイスラは母上専属メイドであり、俺をメーション侯爵家へと連れて行くために、王都の家へ迎えに来ていたのだ。

 それが今は俺と共にヘルーデンである。

 非常に助けになって頼りにしているが、俺の目的に付き合ってもらっている形なので、その辺りのことをアイスラからも伝えてもらった方がいいと思ったのだ。

 そうすれば、アイスラが母上に怒られることはないと思う。


 そうして手紙を書き終えて、封筒に入れて封をする。

 俺からだと示すサインも入れておいた。

 ……そういえば、ちーちゃんに手紙を直で持たせる訳にもいかないし、ちーちゃんの大きさに合わせたバッグなりを買って、それに入れた方がいいな。

 ハルートの目標(マジックバッグ)のために、明日にでも魔道具店に行こうと考えていたが、その時に配達用のバッグも探してみるか。


 そんなことを考えている間に夕食の時間となったので、食堂に向かうと既にアイスラが待機していた。


「……王都を出てからのジオさまの軌跡を書きましたが……婚姻の許しをカルーナさまから先に得て……カルーナさまが味方となれば、オールさまとリアンさまも……外堀を埋めておけば……やはり、この件も書いておくべきでしたか……いや、現状だと早計……それに時間があれば許しを得られるのに効果的な文言が思い付く……やり取りは今回だけという訳ではありませんし……ここは焦らずにじっくりと……既成事実も諦めずに……」


 何やら深く考えているように見える。

 書いた手紙の内容に不備がないかとか考えているのかもしれない。

 近寄って声をかける。


「アイスラ。もう書き終わったのか?」


「なあに、やることをやってしまえば――はい。書き終わりました。ジオさま。こちらになります」


 アイスラが封のされた封筒を渡してきたので受け取り、俺の封筒も入っている肩掛け鞄(マジックバッグ)の中に仕舞う。

 その前に何か言っていたような気がするが……まあ、気のせいか、あるいは何かの聞き間違いとかだろう。


「さあ、夕食を取るか」


「あの、ジオさま。確認はしないのですか?」


「確認? アイスラの手紙の? 必要ないよ。それに、アイスラは母上の専属メイドだ。二人の間でしか通じないこともあるだろうし、そこに踏み込むつもりはない」


「そうですか……ジオさまが確認しないのなら……あるいは……」


 アイスラが何やら考え出したが、先に夕食を取ろうと伝えて食堂へ向かう。

 食堂で夕食を取っているとハルートが来たので、共に食事を取って手紙を届けることについて――主に、ハルートとしーちゃんの繋がりがどこまで効果を発揮するか、しーちゃんがメーション侯爵家のある町まで行ってもハルートと繋がりがあるのかどうかで対応が変わってくる、ということについて話した。

 というのも、繋がりを通じて、ハルートは向こうの状況や、ある程度の指示出しができるそうだ。

 それができるのなら、色々とやりやすくなるのは間違いない。

 母上からの返事も欲しいので、その間待つことだってできるのだ。

 ハルートの感覚では、多分大丈夫。

 スキルと違ってギフトの性能が破格なのは俺も理解できるが、こればかりは実際にやってみないことには確証は得られないので、駄目だった時のことを考えて話し合った。


     ―――


 翌日。

 朝食を食べ終わると、アイスラ、ハルートと共に、まずは普通の道具店、あるいは雑貨店を巡る。

 配達用のバッグを探すためだ。

 いくつか回って、丁度良いのを見つけた。

 ちーちゃんの大きさでも肩掛けできる鞄で、これなら早々落とすようなことはないと思う。

 それを買った。

 ハルートが「いくらか出しますよ」と言ってきたが、これを使うのかこっちの都合によることなので、全額こちらが払っておく。

 洋服店に売った巨大な蜘蛛の糸の代金や、「血塗れの毒蛇(ブラッディーバイパー)」壊滅でウェインさまから頂いた金といったモノがあるので、これくらいはまったく問題ない。

 そもそも、そんなに高い物ではないのだ。


 ただ、そのあとに、ハルートの一つの目標とするためにマジックバッグの値段を知る目的でいくつか魔道具店に寄って、その中で何個か見つけたのだが、そのどれもが高いの一言に尽きた。

 容量拡大だけではなく、時間遅延付きもあったのだが、そっちはより高額であるため、現状だとまったく手が出せないくらい物である。

 なので、ハルートの目標とするべきなのは、容量拡大だけの物。

 それでも今は手を出せないくらいには高額なので、今後の頑張り次第である。

 頑張れるように、ハルートをもっと鍛えないといけないな、と思う。

 ハルートも、こんなに高いのか、と驚きはしたものの、それをやる気に繋げることができたようだ。


 そのあとは、「魔の領域」である森へと向かった。

 手紙を配達してもらうためだ。

 門番たちは軽く流しながら外に出て、浅層から中層へと入り、少し進んでからぐるちゃんたちを呼んで貰う。

 ちーちゃんだけで良い話ではあるが、折角来たのに呼ばないのは寂しいからである。

 ぐるちゃんたちと戯れている間に、ハルートはちーちゃんに肩掛け鞄を掛けて軽く飛んでもらい、不都合がないかどうかを確認した。

 問題ないそうなので、俺とアイスラの手紙をしーちゃんの鞄に入れる。


「目的地まで行けそうか?」


「問題ない。繋がりを通じて、どの辺りまで飛べばいいか教えている。それに、俺も時々繋がりを通じて確認するから大丈夫だ」


 ここから先はハルートに任せることにする。

 ちーちゃんは、それでは行ってきます、と言わんばかりに俺たちに向けてカーテシーのような仕草を取ってから飛び立っていった。

 それを見送り、ぐるちゃんたちが飛び立つのも見送ったあと、ヘルーデンへと戻り、宿屋「綺羅星亭」に戻っていく――その途中。これまでとは質の違う殺意が感じられる視線を、一瞬だが感じ取った。

ジオ「ここの部分は直した方がーー」

アイスラ「もう少しジオさまとの絡みをーー」

作者「え? ここの添削はするの!」

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