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 マスター・アッドに仮説本部のようなところに連れていかれ、人払いされた上で――一連の流れを話すと、まず確認された。


「嘘でも冗談でもなく、グリフォンをテイムしたと? いや、ここに呼べと言っているんじゃない。これが嘘や冗談であれば相応の処罰が下る。それを理解した上で答えて欲しいだけだ。事実なんだな?」


 事実なのでハルートが頷き、俺とアイスラも実際に見たので頷く。

 そして――怒られた。

 滅茶苦茶怒られた。

 ほら見たことか。だから大人しくしておけと言ったのに。と俺に対しては小言も言われた。

 甘んじて受けるので、アイスラは怒気を発しないように。


「……他にも色々と言いたいことはあるが、それはあとだ。ここで待て。冒険者の方は俺がどうにかしておくとしても、騎士団と警備隊の方には話を通しておかないといけない。そっちが先だ。……グリフォンは深層に戻っていくのを見た者が居たので大丈夫かもしれないが、中層まで来た影響で森から魔物は溢れ出てくる可能性はあるので警戒は続けて欲しい――とでも伝えてくるか。話は終わっていないから帰るなよ」


 そう言って、マスター・アッドが出て行く。

 大人しく待っていると割と直ぐ戻って来た。


「話は通してきた。それならそれで訓練になると、騎士団長と警備隊長も言っていたから問題ない。冒険者の方も良い刺激になるだろう。だから、こちらについてはもう気にしなくてもいい。今からは今後についての話だ」


 大丈夫そうなので内心で安堵する。

 さすがに、結構の数が動いていたので気になっていた。

 そう。グリフォンとは、それだけの事態を起こす存在なのだ。

 だからこそ、「ハルートがグリフォンを連れて戻らなかったのは正解だ」とマスター・アッドに言う。

 俺が懸念した通りの――いや、それ以上のことが起こるのは間違いない、と断言した。


 そこでマスター・アッドは大きく息を吐いて、俺を見る。


「ハルートを鍛えるというのは賛成だ。まあ、今も鍛えているようだが、テイマー自身は弱く見られがちだからな。そこである程度の強さを示せば手を出してくる数はぐっと減る。それでも手を出そうとしてくるのは居るだろうが……グリフォンが共に居れば蹴散らすなり、逃げるなり、取れる手段はいくつもある。まあ、他にも手っ取り早く周囲から伸びてくる手を防ぐ手段があるにはあるが」


「そ、それは一体!」


 ハルートが食い付く。

 自身、それとグリフォン(ぐるちゃん)の身を案じて、気が逸っているのだろう。


「権力者の後ろ盾を得ればいい。これからもヘルーデンに居るのなら、辺境伯の後ろ盾があれば、まず表立って手は出されないだろう。それでも裏から手を回される懸念は前まではあったが、今はもうなくなったから大丈夫だ」


 マスター・アッドがチラッと俺とアイスラを見る。

 ああ、なるほど。裏からというのは「血塗れの毒蛇(ブラッディーバイパー)」のことか。

 でもそれは新たな裏ギルドなりができるまでの話。

 だから、それまでに何かしらの対策を講じておけ、ということだろう。

 その手段の一つが、辺境伯の後ろ盾、ということだ。


 辺境伯次第ではあるが、俺としては受けてもいいと思う。

 ……パワード伯爵家があれば、と思わなくもない。

 それに、決めるのはハルートである。


「……貴族(権力者)の後ろ盾……辺境伯と会ってから決めても?」


「ああ、それで構わない。俺もお前が判断するまでは、グリフォンについて辺境伯には伝えないでおく。その方が、グリフォンを手に入れるための態度とか疑わずに、辺境伯の人柄を知ることができるからな」


 これで話は終わりだ。もう行っていいぞ。とマスター・アッドが締めくくったので、帰ろうとした時――。


「もう一度言っておくが、頼むから妙な騒動を起こす、あるいは騒動を呼び寄せないでくれよ」


 何故か俺を見てそう言ってきた。

 いや、グリフォンをテイムしたのはハルートであって、俺は寧ろ大人しくしていたのに……どうして俺に向けて言うのか。

 不思議に思っていると、アイスラが一声かけてくる。


「それは、ジオさまが世界の中心だからです」


「いや、中心ではないから」


 それに、中心なんて忙しそうだからごめんである。


「では、こちらももう一度。全然問題ない。本当に大丈夫だ」


 マスター・アッドから呆れるような目で見られつつ、この場をあとにして宿屋「綺羅星亭」へと戻った。


     ―――


 翌日。「魔の領域」である森は、本日に限り立ち入り禁止となった。

 魔物が溢れ出てくる可能性があるし、何よりその場合は浅層でも中層の魔物が押し出されて現れるかもしれないため、非常に危険だからである。

 なので、冒険者、騎士、警備兵による合同での一日様子見、警戒する日となった。


 俺も大人しくしておく。

 下手に外に出ようとして門番に見つかれば、また敬礼付き挨拶だ。

 一体何者だ? と注目を集めて、今まで以上に話が広がるのは止めておいた方が良いと判断した。

 それに、ハルートに関しても休息は必要である。


 今日をその日にあてると、ハルートは町中へと出かけた。

 ぐるちゃんの好みを探るために、食べ物を販売しているところを回って色々と集めるそうだ。

 金の心配をしたが、一応蓄えがあるそうなので大丈夫らしい。

 まあ、今度についてはぐるちゃんが居れば「魔の領域」の中層の魔物は余裕だろうし、余裕で稼げるのは間違いない。


 そこで、思い出した。

 そういえば、巨大な蜘蛛の糸を売るつもりだったのだ。

 いや、売れるかどうかはわからないけれど。

 折角休日にした訳だし、その確認をしに行こうと思う。


「アイスラはどうする?」


「私は常にジオさまと共に。それはジオさまが生まれた時からの私の運命です」


「いや、アイスラはそもそも母上専属メイドだから、家に居た時は共に居た訳ではなかったよな」


「つまり、一つ屋根の下で共に居た、ということですね」


 解釈が大きい気がするが……まあ、いいか。

 アイスラと共に、元々そこで納品するつもりだったので冒険者ギルドへ向かう。

 冒険者ギルド内はかなり慌ただしかった。

 グリフォン関連もそうだが、まだ「血塗れの毒蛇(ブラッディーバイパー)」壊滅の件が尾を引いていると思われる。


 俺とアイスラが回収した巨大な蜘蛛の糸はかなりの数だ。

 間違いなく時間を食う。

 ………………まあ、今日でなくてもいいか。

 現状の慌ただしさの邪魔をするのは躊躇われる。


 冒険者ギルドからそっと出て、そのあとはアイスラと共にヘルーデン内を回ってのんびり過ごした。


     ―――


 翌日。朝食中に冒険者ギルドからの使者が現れて、辺境伯と会う日が決まったと告げられる。

辺境伯「そろそろ出番だな! ……なんか準備した方がいいか?」

作者「いえ、もうそのままでお願いします」

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