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金策?

 考えたのは一瞬――。


「行くか、アイスラ」


「ジオさまがそう望むのであれば、私に否はございません」


 聞こえてきた男性の鬼気迫る声に演技のようなモノは感じられなかった。

 本当に緊急事態が起こっているのだと思う。

 アイスラもそれがわかっているからこそ、止めはしないのだ。

 具体的な位置はまだわからないが、まずは声が聞こえてきた方へと向かって駆け出す。


「この! くそ! 返せ! 返せよ!」


 駆け出した方向から、再び鬼気迫る男性の声が聞こえてきた。

 先ほどよりも緊急性が高くなっている感じだ。


「――あっ! くそ! 放せ! 放せよ!」


 現場に辿り着く。

 森の中で少し開けた場所。

 位置は、おそらく中層に踏み込んでいる。

 状況は――蜘蛛の糸でぐるぐる巻きに絡め取られた青い髪が目立つ男性が一人と、こちらの倍はある大きさの巨大な蜘蛛が一体居る、というモノだった。

 ……巨大な蜘蛛に襲われている男性、ということでいいんだよな?

 他に見えようはないし。


「放せ! それと返せ! 俺の大事な友達なんだ!」


 あと、巨大な蜘蛛は俺とアイスラに気付いてこちらを見ている――目がたくさんあって実際のところはわからない――が、青い髪の男性はそれどことではないようでまったく気付いていない。

 他に意識を向けている青い髪の男性の視線を追うと、巨大な蜘蛛の足が一つ上がっていて、その先に男性と同じく蜘蛛の糸でぐるぐる巻きにされて吊るされている青い色の小鳥が居た。


「ぴゅい! ぴゅい!」


 青い色の小鳥が青い髪の男性に向けて悲痛な鳴き声を上げる。

 これは……巨大な蜘蛛に襲われて囚われた人と小鳥、という見たままの状況でいいのだろうか?

 青い髪の男性に聞くのが一番早いと思ったのだが、その前に巨大な蜘蛛が動く。


「フシャー!」


 巨大な蜘蛛が飛び上がり、近くにある木の上に乗り、もう一度飛び上がって、空中でこちらに向けて蜘蛛の糸を線状に吐き出してきた。

 それなりの速度だが、避ける。

 巨大な蜘蛛はさらに連続で吐き出してきた。

 俺だけではなくアイスラにもだが、すべて避ける。


「返せよ! というかどこを狙って……え? 誰?」


 青い髪の男性がこちらに気付く。

 声をかける前に、巨大な蜘蛛が再び糸を吐き出した。

 ただし、線状では当たらないと判断したのか、広範囲を目的とした蜘蛛の巣のような放射状である。

 これもそれなりの速度であるため、先ほどよりも避けにくくはあるが――まあ、問題ない。

 俺もアイスラも避ける。


 巨大な蜘蛛がさらにたくさん吐き出してくるがこれくらいなら問題ないので、青い髪の男性に声をかける。


「大丈夫か? 怪我とかはあるか?」


「え? あっ、はい。別に傷とかはないですけど……ただ、こんな状況なので無事ではないといいますか」


「それだけ話せるなら大丈夫だな」


「はあ……え? 本当に誰? というか、もしかして助けてくれるってこと?」


「ああ。助けるつもりだから、こうして残っている……あれ? もしかして、助けない方がいい? ここから何かしらの策を用いて逆転を」


「ありがとう! 助けてくれるなら本当にありがとう! もう駄目かと思っていたから!」


 策はないようだ。

 ただ、これから助かるというのに、何故か青い髪の男性は申し訳なさそうな表情を浮かべる。


「えっと、助けてもらう立場でお願いするのは恐縮なんだけど……俺だけじゃなくて、他にも」


「あの青い鳥も助けて欲しい、か?」


「あ、ああ! 俺のテイムモンスター……いや、友達なんです! だから!」


 青い髪の男性の表情は真剣であり、口にしたように友達なのだろう。

 それも、大事な。

 その思いが伝わってきた。


「わかった。任せろ」


 アイスラを見る。

 どっちが行く? 俺が行こうか? ……わかった。大人しく待っている。と視線で会話をしたあと、アイスラが動く。


 巨大な蜘蛛が木の上に着地する瞬間を狙って駆け出し、勢いそのままに木を駆け上がり、巨大な蜘蛛へ一気に肉薄して、青い鳥を優しく掴んで釣っている蜘蛛の糸を手刀で切りながらすれ違い、綺麗に着地を決めてから戻ってくる。


「ギッ?」


「え?」


 巨大な蜘蛛と青い髪の男性から困惑の声が漏れた。

 俺はその動きを目で追っていたのだが、青い髪の男性だけではなく、巨大な蜘蛛も反応できていなかったようだ。

 まあ、それなりの速度での行動だったので、こういうこともあるだろう。


「さすが、アイスラだ」


「この程度なんでもございません。あっ、と忘れていました」


 そう言ってアイスラが再び動き、今度は青い髪の男性を引き摺りながらこちらまで戻ってくる。

 引き摺ってはいるものの、ぐるぐる巻きの蜘蛛の糸で守られていたので大丈夫。


「はっ! いつの間に! 引き摺られたような感覚があるけれど体は痛くない! でも、なんか精神が痛いというか消耗している気がする!」


 うん。それだけ口にできるなら大丈夫だ。

 しかし、大丈夫ではないというか、状況の変化に対して怒りを露わにするモノが居る。

 巨大な蜘蛛だ。


「ギイ! ギッ! ギイイイィィィ!」


 それらは自分のモノだ、と声を荒げて、巨大な蜘蛛が木の上から飛び上がる。

 また蜘蛛の糸かと思ったが、俺とアイスラには通じないと判断したのか、直接攻撃に切り替えたようだ。

 足を突き出し、こちらに向かって飛んでくる。


 俺とアイスラからすれば敵ではない。

 サクッと倒してしまうか――と、そこで俺は考えたというか閃いた。


「アイスラ! 攻撃は待った!」


 巨大な蜘蛛がアイスラの方に襲いかかっていて、アイスラが反撃で倒そうとしていたので、待ったをかける。

 アイスラは青い髪の男性を軽く蹴り上げて抱えると、即座に下がって巨大な蜘蛛が突き出した足を回避した。


「うわっ! ちょっ! 何事が!」


 見えない位置でのやり取りであるため、青い髪の男性から驚きの声が漏れる。

 巨大な蜘蛛はアイスラに狙いを定めて足で連続突きを繰り出すが、アイスラはかすりもさせずに避けながら尋ねてくる。


「何かお考えが?」


「ああ」


 青い髪の男性は確保した。

 青い小鳥も確保した。

 どちらももう安全である。

 しかし、巨大な蜘蛛はこの場に残り、こちらを攻撃する気満々なので戦闘は続く。

 ということは、この巨大な蜘蛛の吐き出す糸をもっと回収できる、ということだ。


 これでも一応少し前までは貴族だったので、なんとなくわかるのである……正確には母上が知識豊富で色々と詳しく、魔物素材についても教わっていたからである。

 その時に得た知識として、この巨大な蜘蛛の糸……なんか使えそうで高級そうだ、と。

 間違っていたらどうしよう……高額で買い取ってくれなかったら………………まあ、駄目だったらその時だ。


 とりあえず、回収できるだけ回収しよう。


「アイスラ。この蜘蛛の糸、使い道ありそうな気がしないか?」


「なるほど。かしこまりました」


 すべて理解と頷いたアイスラが、巨大な蜘蛛から距離を取って――そこから詰めさせないように一定の距離を保つ。

 近距離攻撃をさせないように、ということだろう。

 それで焦れたのか、巨大な蜘蛛が飛び上がって糸を吐き出した――俺に。

 隙を突いたつもりなのかもしれない。


 だが、ここで慌てることはない。

 きちんと警戒していたので。

 近くに落ちていた木の枝を取り、吐き出された糸を巻き取っていく。


「ギッ? ギイッ!」


 巻き取られると思っていなかったのか、巨大な蜘蛛が困惑して怒りを露わにして、再度糸を吐き出すが巻き取る結果に変わりはない。

 糸を吐き出す攻撃手段を行うように、俺も巨大な蜘蛛から一定の距離を保つ。

 すると、巨大な蜘蛛の攻撃は糸を吐き出すだけになった。

 どうやら、他の遠距離攻撃を持っていないようで好都合だ。


 木の枝はそこらにたくさんある。

 どんどん巻き取っていこう。


 そうして、青い髪の男性と青い小鳥を近くに置いて――隠してきたアイスラも途中から加わり、巨大な蜘蛛の体が少し痩せ細ったかな? と思える見た目くらいになるまで蜘蛛の糸を回収したあと、アイスラが収納魔法から輝く剣を取り出してサクッと斬り裂いた。

アイスラ「こっちもサクッと!(剣を振る)」

作者「うおっ!(横っ飛び)」

アイスラ「まさか避けられるとは。まあ、当てる気はありませんでしたが」

作者「いや、避けなければ当たる軌道だったと思うけど」

アイスラ「人間ですから。ミスもします」

作者「そっか〜……で終わらせていい内容じゃないよね!」

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