エピローグ 3
もちろん、ルルム王家も健在である。
フレミアム陛下はベリグによって乱れた国政を立て直すのに今も忙しくしていて、ライボルトさま、シシャン国から戻って来たレレクイアさまとロズベイラさま、それとコンフォードさまとウェルナさまも手伝っているようだ。
これも一つの家族交流だろうか。
まあ、コンフォードさまの付き添いとして、ロレンさんもそこに加わっているが。
とにかく、今はそちらの方が忙しいため、兄上とロズベイラさまの結婚は落ち着いてから、となっている。
そこで新たに聞いたのは、バラバラになっていた間に、兄上に側室ができたということだ。
誓って言うが、兄上とロズベイラさまの仲は良好である。
そんなロズベイラさまとは既に話がついているそうで、ロズベイラさまが本妻で、側室となるのはシシャン国の美麗な女性軍団長だ。
セントル大平原の戦いのあとで軽く挨拶されたが、確かに美麗であった。
今はシシャン国に戻って、こちらに嫁いでくる準備中である。
このことを知った時、兄上は苦笑を浮かべていたが、兄上の器量なら二人共幸せにすると思う。
なので、兄上とロズベイラさまは問題ないのだが、別で問題中なのがあった。
お祖父ちゃんとお祖母ちゃんとは、王都にあるパワード家の家を取り戻したあとに一緒に住んでいるのだが、お祖父ちゃんとコンフォードさまが顔を合わせると、毎度のように孫自慢で争いを始めるのだ。
所謂、自分の孫の方が凄いんじゃ、である。
当事者である俺からすれば、どうでもいいというか、比べるようなことではないと思う。
もちろん、兄上と、ライボルトさまとロズベイラさまも同意見だ。
どちらにもいいところがある、では駄目なのだろうか?
お祖父ちゃんもコンフォードさまも、それでは駄目だと譲らない。
なので、メーション侯爵に仲裁をお願いしてみた――が、当然の流れというかお祖父ちゃんと結託して、コンフォードさまは劣勢に立たされた。
興味がなかったので、そこから先はどうなったか知らないが、いつか三人が手を取り合う日が来ればいいな、と思う。
まあ、ルルム王家は今日も安泰である。
―――
パワード家は、本来は伯爵家である。
ベリグによって貴族籍は剥奪されたのだが、そのベリグが居なくなり、ルルム王家が戻ってきたので、フレミアム陛下から父上にパワード家の貴族籍を戻すという打診があった。
今回のことでパワード家はそれだけのことをしたので、戻すことは容易らしい。
家長である父上が代表として王城に行き……帰ってくると……。
「はっはっはっ! 今日から侯爵だ!」
伯爵ではなく? と家族の誰もが思った。
まあ、兄上がロズベイラさまと結婚すれば、新たな公爵家を作る、なんて話もあるくらいだし、侯爵くらいは………………あれ? 兄上が新たな公爵? となると、パワード侯爵家を継ぐのは………………深く考えないことにした。
未来の自分に任せようと思う。
ただ、父上は爵位の他に手にしてきたものがあった。
長期休暇である。
サーレンド大国が攻めてくる気配もないし、今の内にしっかりと英気を養って欲しいというのと、バラバラになった家族が揃ったのだから、家族孝行してこい、というフレミアム陛下なりの気遣いらしい。
なので、お祖父ちゃんとお祖母ちゃん――メーション侯爵はフレミアム陛下が今居なくなられると内政が終わると止められた――と、アイスラを含めた幾人の執事、メイドと共に家族旅行に出た。
途中、ヘルーデンにも立ち寄り、ハルートたちやウェインさまと会って様子を見たりして、そのまま東へと進んで、ウルト帝国に入る。
ウルト帝国は目的地ではあるが、最終目的地ではない。
その先――船に乗って別大陸へと向かうのである。
「こんな形でまた海を見ることになるとは思わなかったな」
「そうですね」
船に乗り、甲板で出発まで海を眺めながらアイスラと話す。
アイスラは母上専属メイドだったが、今ではもう当然のように俺の隣に居る。
俺も、これが普通になっていた。
母上が何も言わないので……まあ、いいのだろう。
「海の向こうか。私もまだ行ったことがないから楽しみだ」
「はっはっはっ! 私もない! これだけ長期の休暇が取れなかったからな!」
「そうね。本当、忙しくしていたもの。ゆっくりしたいわ。でも、確かお義父さまとお義母さまは伺ったことがあるのでしたよね?」
「うむ。若い頃にな! いやあ、あの頃は向こう見ずでな!」
「それは今も大して変わっていませんよ。かなり年月が経っているし、向こうの大陸も様変わりしているでしょうから、行ったことがあるといってもあてにはならないわね」
兄上、父上、母上、お祖父ちゃん、お祖母ちゃんもこちらに来た。
まあ、何にしても、何が起ころうとも、家族が揃っていれば、どうとでもなる。
それは間違いない。
だから、旅行を楽しめばいい――と思っていたのだが、別大陸にある魔導国家を訪れた際、些細なことから始まった騒動の結果で、転移魔法陣の罠に嵌って家族は別大陸各地へとバラバラに飛ばされて、再び無事に揃って事態を解決するまでに別大陸の勢力図がいくつか変わり、「パワード家を敵に回すな」と言われるくらいに名が広まったのは、また別の話。
終わり。
作者「お疲れさまでした」
ジオ「お疲れさまでした」
アイスラ「うい」
作者「いや、今までそんな気安い態度ではなかったよね?」
ジオ「ははは」
―――
これで完結です。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます。
少しでも楽しんで頂けたのなら幸いです。
一応、次も考えていて、執筆を始めてはいますが、もう少しストックを作ってサクサク投稿したいので、投稿開始まで少しだけ時間を頂きます。
良ければ、そちらの方でも、またお付き合いして頂けると嬉しいです。
ではでは。ありがとうございました。