エピローグ 2
セントル大平原での大きな戦い――巷では「ルルム王国大戦」と呼ばれている戦いが終わってからそれなりの月日が経ち、漸くルルム王国内は落ち着きを取り戻してきた。
その間も、各所では色々と変わったようだ。
―――
俺の身近で言えば、今代聖女ことキャットレディだろうか。
教会自体は問題ない。
精々が、フレミアムさまが陛下に戻ったことを教皇が大喜びして、王都にある大教会どころか宗教全体でフレミアム陛下を賛美しようとして、やり過ぎだと枢機卿たちと熱く語り合ったくらいだ。
キャットレディの身に起こったことは……簡単に言えば、俺との婚約話が浮上したのである。
どうしてそんな話になったかというと、母上が関係していた。
今回の件で、王都脱出の際やフレミアム陛下救出の時に協力や情報提供されたことを聞きつけた母上が、俺と相性が良さそうなのと、キャットレディの能力を買って、教皇と結託していつの間にか話が進んでいたのである。
もちろん、当事者である俺とキャットレディ、それとアイスラが拒否を示した。
ただ、母上と教皇は譲る気はなさそうである。
なので、この話はまだ決着していない。
「嫁に来たら、パワード家が後ろ盾になるから、最強戦力も使えるわよ?」
「……え?(トゥンク)」
揺れるな、キャットレディ。強い意思を持て。
―――
協力者といえば、ジネス商会のキンドさんもそうだ。
ただ、キンドさんに関しては独力で諸々を解決していたというか、セントル大平原で勝利したあと、王都に凱旋すると既にブラク商会を潰していた。
何をどうしたのかわからないが、ブラク商会はジネス商会に対して莫大な借金を背負う形になっていたのである。
凱旋時に会った時は――。
「やってやりました」
と、もの凄くいい笑顔を浮かべていた。
ジネス商会は再び王家御用達店になり、今も忙しくしているようだ。
―――
ヘルーデンに居る人たちも元気にしている。
鍛冶師のラックスとエリーには、俺が使っていた剣に興味を持った兄上が依頼を出していて、俺の剣の手入れもあるので偶に会っている。
ウェインさまとルルアさまの方は、父上と母上が連絡を取り合っているのだが、母上は純粋に親交を深めているのだが、父上の目的は「魔の領域」だった。
父上が行きたがっていて、それにウェインさまが追従し、ルルアさまが母上の協力を得て止めている感じらしい。
……多分、その内無断で行って怒られるだろうな、これは。
ウェインさまとルルアさまといえば、王都で二人の娘であるラウールア、それと執事のアトレとも会った。
ラウールアはセントル大平原の戦いに参加したかったそうだが、それはさすがに、ね。
まずは学園を卒業しないと、と言っておく。
ちなみに、時は何も解決しておらず、相変わらずというか、アイスラとアトレの相性は悪いままだったので、二人が実力行使に出る前にラウールアと協力して止めた。
ヘルーデン関係で言えば、ウェインさまに預けているレオが居る。
レオはウェインさまがセントル大平原に連れて来ていたが、大活躍だったらしい。
どれくらい大活躍だったかというと、剣の才能を発揮して次々と敵を斬り伏せただけではなく、ウェインさまが多数に囲まれて危ないというところに駆けつけて、そのまま敵を斬りまくって助け出したそうだ。
その場面を見たかった。
また、それで驕ることもなく、ウェインさま指導の下、シスター見習いであるマーガレットに応援されながら日々鍛錬しているようだ。
成長したな、とアイスラと共に喜ぶ。
あと、忘れてはいけないのは、ハルートたちだろう。
ハルートたちとの関係は今も続いている。
連絡も取り合っていて、ちーちゃん、もしくはつーちゃんが、手紙を運んでくれているのだ。
母上とルルアさまもお願いしているので、ちーちゃんとつーちゃんとは頻繁に会っていた。
ハルートの肩に止まっているぴゅいちゃんや、ぐるちゃんも元気らしい。
シークとサーシャさんはハルートと冒険者パーティを組んだまま、楽しく過ごしているそうだ。
今の二人を見て、元凄腕暗殺者だと思う人は居ないだろう。
ただ、二人のことを話した時、ウェインさまと同じように父上が戦いたがったので、止めておいた。
いや、無手の暗殺技術を学びたいからと言われても。
あと、ハルートからは近況だけではなく、相談の手紙が届くこともある。
相談内容は、エルフのララがぐるちゃんのためにヘルーデンに住み着いたけれど、どうすればいいか? とか、他にも少し面倒なことや大したことないものといった大小様々だ。
ララに関しては、それがきっかけとなってエルフたちがヘルーデンに来るようになるかもしれないし、いいのではないだろうか? と返しておく。
このままエルフに関してはハルートたちが窓口となって欲しい。
ただ、最近は天使さんに関する相談が多かった。
何やら画策しているそうだ。
何を画策しているかというと、頻りにハルートにギフトを使わせようとしているのである。
――何故、ギフトを使わせたいのか。
それは、ハルートを長生きさせたいから。
ハルートが長く生きれば、それだけ天使さんの休暇は続く。
そのために、天使さんは自らの力を行使して、ハルートがギフトを使えば不死鳥が来るように仕向けていた。
不死鳥の力で長生きさせるつもりである。
何故、そこまでというか、俺が天使さんの思惑を知っているかというと、天使さんから俺に向けて協力要請が届いているからだ。
天使さんなら俺の助けは必要ないと思うのだが、何やら神さまが妨害しているらしい。
……俺が天使さんに協力したとして、何かが変わるとは思えないのだが、天使さんによると違うようで、運命力がどうこう――と難しい話が関わってくるようだ。
………………。
………………。
とりあえず、下手に関わってはいけないと思うので、ハルートには頑張れと返しておいた。
その内に否が応でも関わりそうではあるが。
まあ、何にしても皆元気そうで何よりである。
作者「ハルートくんたちもお疲れさまでした」
ハルートたち「いえいえ。そちらもお疲れさまでした」
作者「……こうやって普通の反応をされるだけで涙が……」
ハルートたち「何かありました?」
作者「ハルートくんたちの前がちょっと、ね……」