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「ルルム王国大戦」 27

 俺のギフト「ホット&クール」で形作られた空間は、当然のように目には見えない。

 臭いだってしない。

 そこだけに起こっている変化で、察することはできない――はずなのだが、ジェドに槍型の超熱空間を放つと避けられた。

 驚きで目を見開いてしまう。

 いや、違う。止まっている場合ではない。

 まだ、槍型の超熱空間は残っている。

 そのまま槍型の超熱空間を薙ぐように振るう。

 面積の広い胴体であれば、当たるはずだ。


「――む!」


 当たる直前でジェドはその場で高く飛び上がり、槍型の超熱空間の薙ぎ払いを避けた。

 先ほどといい、今といい、見えていないと避けるのは無理なはずだ。

 ……まさか、見えているのか?

 違っていたとしても、驚愕なのは間違いない。

 何しろ、俺が何をしたのか理解している兄上とアイスラも、ジェドが突飛な挙動をした上で無傷なため、避けたのだと察して驚愕しているのだ。


「……まさか、見えているのか?」


 思わず、尋ねてしまう。

 ただ、これは悪手。さすがに、動揺してしまったようだ。


「そう尋ねてくるということは、貴殿が何かしたということで間違いないようだな。ジオ・パワード。そういえば、こちらの空からの攻撃が途中から消されるようになった時、貴殿が戦場のど真ん中で空を見ながら、そちらのアイスラ嬢に抱っこされていた――なんて、聞くだけで荒唐無稽な報告を受けたが、もしかしてそれが真実であり、今のと関係あるのだろうか? 今後のためにも、是非とも教えて欲しいのだが? どうだろう?」


「……教えるとでも?」


「まあ、無理だろうな。これがもし、貴殿にとっての切り札的ものであるのなら、教える訳がない。ただ、それでもわかることはいくつかある」


「何?」


 わかること……それも、いくつも、だと?


「まず一つは、それが何かはわからないが、見えないということだ。意外と、これが馬鹿にできない。見えないけれど存在していると知らなければ一方的にやられるだけになってしまうからな。さらに付け加えるのなら、直前に二人が離れるといった反応を見るに、視認できるのは使用者だけではないか? 二人には見えないため、間違っても当たらないように離れたのでは?」


 お、おお……当たっている。


「あとは、今のところ仮定の話となるが、こちらの空からの攻撃をすべて消し去っていたのと同種の手段であるのなら、こうして避けられた結果を見るに、範囲もある程度自由に決められるということになる。でなければ、二人も巻き込まれていたからな」


 む、むむむ……。


「それに繋がる推測として、こちらの空からの攻撃を消し去っていたのがジオ・パワードであった場合、一か所に留まって空をジッと見上げていたことと、今の視線の動きを踏まえれば、視界の中に作られる何かによって、こちらの攻撃を消し去る、あるいは攻撃することができる……つまり、視界の中に対象を捉える必要がある手段なのではないか? と私は睨んでいる」


 ……な、なるほど。

 ジェドの話を聞いて思うことは一つ。


「……ま、まともだ。まともな敵だ」


 今のやり取りでそこまで当てることができるとは……思わず、拍手したくなった。

 いや、しないが。

 わざわざ正解だと言う必要はない。

 ただ、同意は得られる。


「確かに、これまでの敵とは違い、まともで強い敵のようですね」


 アイスラが頷きながら同意する。


「……確かに、まともだ。これまで、父さまからは対等に戦える者と聞いていたので、てっきり父さまと同じ感覚派だと思っていたのだが……ジェドは理論派だったのだな」


 兄上も頷きながら同意する。

 対するジェドはなんとも言えない表情を浮かべてこちらを見ていた。

 なんというか、こう……オール(アレ)と一緒にするな、と言いたげである。


 しかし、状況は非常に悪い。

 まさか、ギフト「ホット&クール」の攻撃を見破られるとは思ってもいなかった。

 しかも初見である。

 こんな人物が居るのか、と思ってしまう。それも、敵として。

 だが、槍型の超熱空間はまだ近くにある。

 もう一度、本当に通じないのかどうか――と、ジェドに槍型の超熱空間を向かわせようと視線を動かした瞬間、視界の中からジェドの姿が消えた。


「――ちぃっ!」


 直感に従って、横っ飛びする。

 先ほどまで俺が立っていた場所に、ジェドが持つ巨槍の先端が通過していった。

 あのまま突っ立っていたら、串刺しになっていただろう。


「ほう。しっかりと視界から外れたはずなのに、避けるのか。確か、噂でオールの下の子は出来損ないと言われているそうだが、やはり噂などあてにはならないな」


 巨槍を引きながら、ジェドが俺に向けてそう言ってくる。


「それは、どうも」


 喜んでいいかはわからない。

 少なくとも、油断してくれていた方が、隙を突きやすいのは確かだ。


「ジェド! ジオを貫こうとするなど、万死に値するぞ!」


「ジオさまの体に穴が空いたらどうするのです! 許せません!」


 兄上とアイスラがジェドに向かっていく。

 ジェドはそれを迎え撃ち、激しい戦闘が始まる。

 槍型の超熱空間は維持しておく。

 隙を見て打ち込むためだ――が、多分、もう無理な気がする。

 最初からそうだったが、ジェドに油断している様子は一切ない。

 それどころか、直接戦闘をしている兄上やアイスラよりも俺を警戒しているようで、兄上やアイスラを上手く使って俺の視界から外れようとしてくる。

 それだけではなく、時に一気に距離を詰めて俺を巨槍で突こうとすらしてきた。

 牽制であったり、兄上やアイスラに邪魔されて、と未だに一撃も受けていないが、それでも自分を俺の視界の中で留まらせない、という意味では大成功だ。

 俺のギフト「ホット&クール」での攻撃は、封じられたようなもので、意味を成さなくなった。

 ジェドでも倒せる攻撃だが、その攻撃を当てることができないとなると、双方の実力を考えれば……敗色濃厚かもしれない。


 ――だからといって、諦めはしないが。


「通じないなら、直接やってやるよ!」


「それでこそ、オールの子だ! そうでなくてはな!」


 槍型の超熱空間を解除して、俺もジェドへと向かっていく。

ジオ「くっ。俺のギフトが効かない、か」

アイスラ「……(ここで精神的に弱ったジオさまに優しく寄り添えば、きっとジオさまは私に依存してくれるようになって、さらに甘やかせば、もう私なしでは生きていけなくなるはず。私に縋るジオさま……いい……)」

作者「……なんか邪な葛藤をしているように感じるのは気のせいだろうか」

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