「ルルム王国大戦」 19 サイド 4
――これまでのリアン・パワードは。
オール・パワードが自ら捕らわれることでリアンは逃れることができ、ルルム王国の南部にある町――サウゲトで元王妃、友である元王子、婚約者である元王女の一行と合流。
共に南の国・シシャン国へと逃れ、レレクイアの親戚が居るシシャン国の王都を目指すのだが、その途中で貴族同士の争いによって足止めを食ってしまう。
先を急ぎたいリアン一行はその争いに介入。
早期解決を目指したが、争いは王軍が現れたことによって終結した。
ただし、王軍の目的は争いの終結だけが目的ではなく、リアン一行の迎えだったのである。
何故? と困惑するリアン一行に、どういうことかを教えたのは、王軍を率いる美麗な女性軍団長だった。
リアンの母、カルーナ・パワードがレレクイアの親戚に向けて手紙を出して、先に事情を伝えていたのである。
そうして、リアン一行は王軍と共にシシャン国の王都に入った。
そこで、シシャン国の王から、ベリグ王ではなく、フレミアム元王に協力する旨が直接伝えられる。
シシャン国が介入する理由はいくつかあるが、大きなものは二つ。
一つは、元々国交はあり、シシャン国の王とルルム王国の王であったフレミアムはそれなりの関係値を築いているのだ。
自分の近しい人の結婚相手に相応しい人はそっちの国に居ない? と聞くきらいには――王として他国の王と接するよりも、少し進んだ関係値である。
それこそ、友人か? と問われれば、自分はそういう関係性でも構わないが、相手がどう思っているか、と互いに思うくらいだった。
もう一つは、やはり隣の国は平和であって欲しいものだ、という思いからだ。
これでベリグ王がそのまま王であったとしても、後々サーレンド大国に取り込まれるだろうということは容易に想像できてしまう。
そうなれば、ウルト帝国だけではなく、シシャン国も危ない。
間違いなく攻めてくる。寧ろ、そうなった時に攻めて来ない理由がない。
だから、シシャン国はフレミアムに協力するのである。
援軍を送るのだ。
送る援軍の数は凡そ一万五千。
率いるのは、美麗な女性軍団長。
軍団長とは他国で言えば大将軍のような地位で、この美麗な女性軍団長は武力でこの地位まで上り詰めた実力者である。
そして、実力者であるからこそ、美麗な女性軍団長はリアンの実力を見抜いた。
だからこそ、美麗な女性軍団長はリアンに戦いを挑む。
例に漏れず、この美麗な女性軍団長は、婿にするのならまず自分よりも強い者でなければならないと公言しているタイプであり、これまでにお眼鏡にかなう者は居なかった。
――で、リアンは勝った。
美麗な女性軍団長は即座に求婚し、リアンの婚約者であるロズベイラが前に出て来て、色々と悶着が起こりはした――何ならシシャン国の軍団長職は辞職して嫁ぐとまで言い出したため、まだ結論は出ていない――が、リアンがその力を示したのは間違いない。
援軍全体を率いて取り纏めるのは美麗な女性軍団長であるが、リアンの希望によってその内の千人ほどがリアン直属の配下となる。
ちなみに、その千人は美麗な女性軍団長の婚期を心配していたため、「自分たちは手や足のように使って構いませんから、どうか、よろしくお願いします」とリアンに向けて頭を下げて悶着再びとなりそうになった。
だが、この千人はリアンの指示にしっかりと応えられるくらいに優秀である。
リアンは強力な味方を得た。
そして、リアンはシシャン国の援軍と共にルルム王国へと向かう。
一行の中で同行するのは、ライボルトだけ。
レレクイアとロズベイラは非戦闘員ということもあって、護衛と共にシシャン国に残る。
リアンと援軍は、まずシシャン国とルルム王国の間を遮る巨大な川を下っていった。
普通に巨大な川を越えてルルム王国に入れば、まず間違いなく存在がバレるので、それを避けるために、フレミアム側の貴族が治める領の港から入国するためだ。
どの領であるかは、カルーナの手紙に書かれていた。
その情報を元に、リアンと援軍は無事にルルム王国へと入国する。
そこを治める貴族に対しては、レレクイアがライボルトに書状を持たせていたため、援軍についても受け入れてもらえた。
しかし、その貴族からは既にルルム・ウルト同盟軍、ルルム・サーレンド連合軍がセントル大平原に向けて出発したことを教えられ、リアンと援軍は間に合うことを信じて直ぐに出発する。
偵察も出し、セントル大平原の情報を得つつ――リアンと援軍は、ルルム・ウルト同盟軍とルルム・サーレンド連合軍の戦端が開かれて少し経ってから、戦場が見える位置まで辿り着いた。
状況は偵察からの情報で理解している。
ルルム・サーレンド連合軍がリアンと援軍に気付いた様子はない。
今攻め込めば、ルルム・ウルト同盟軍と共にルルム・サーレンド連合軍を挟む形になる。
攻め込まない理由はなかった。
そうして、リアン・パワードは戦場に現れる。
―――
「は? ――ぎゃあっ!」
「え? ちょ――ぐわっ!」
「なんで後ろから――あぐっ!」
ルルム・サーレンド連合軍の者が次々と斬られていく。
斬っているのはリアン。
リアンは最前線――どころか援軍の先頭に居た。
ルルム・サーレンド連合軍の者を斬りながら奥へ、先へと進んでいっている。
そのあとに援軍が雪崩れ込むように続き、ルルム・サーレンド連合軍を切り取るように蹂躙していく。
突然だけではなく、後方から現れたということもあって、ルルム・サーレンド連合軍はまともに対処できずにほぼ一方的にやられていった。
リアンの歩みは止まらない。
そんなリアンに、共に来たライボルトが声をかける。
「リアン! 前に突っ込み過ぎだ!」
「ライボルト! もう我慢できないのだ!」
「何をだ? ルルム・サーレンド連合軍への怒りか?」
「違う! 私にわかる! こいつらの向こう側――抜けた先にジオが居る! 気配がする! まずはジオが無事か! 安全か! それを確認してからでないと、戦いに集中できない! だから、まずはジオに会う!」
そう言いながらも、リアンはルルム・サーレンド連合軍の者の急所を的確に攻撃して即座に倒していく。
その速度が緩むことはない。
寧ろ、増している。
友人として、リアンの性格をよく知っているライボルトは、これは止まらないな、と思った。
「……はあ、このままだとリアンが使い物にならない。いや、これはこれで問題ないのだが、まともな指揮は期待できないか。仕方ない。まずはリアンの援護だ! このままルルム・サーレンド連合軍の中を抜けていく! しっかりと付いて来いよ!」
「「「おおっ!」」」
ライボルトが指示を出し、援軍と共にルルム・サーレンド連合軍内を切り開いていくリアンのあとに続いた。
そんなリアンの姿に何か感じるものがあるのか、ルルム・サーレンド連合軍の者は恐怖して逃げ出そうとするが、人数が多いために逃げ出そうとして直ぐ逃げられるような隙間はなく、リアン、またはあとに続くライボルトか援軍によって倒されていく。
そして、リアンは速度を緩めることなくルルム・サーレンド連合軍の中を突っ切って抜け出し、ルルム・ウルト同盟軍の奥――空を見上げるジオの姿を視界に捉える。
「ああ! ジオ!」
リアンのその声は喜びに満ち、誰もが見惚れるような満面の笑みを浮かべていた。
作者「ーーここまでのジオ・パワードは」
アイスラ「ーーーーーー(長文のため表記不可)」
作者「まあ、そうなるよね」