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「ルルム王国大戦」 14

 ルルム・サーレンド連合軍が撤退し、ルルム・ウルト同盟軍は夜営の準備を始める。

 夜襲については……正直なところ、今日はどうなるかわからない。

 向こうの方が多いのは多分変わっていない。

 こちらの十分に力を振るって戦ったが、それは向こうも同じ。

 直接戦闘をしたということで、昨日よりも大きな被害を与えたが、それはこちらも同じ。

 少なくない被害を受けている。

 数が逆転したことはないだろう。

 それはエルフの集団が合流しても同じ。

 数千が増えたが……実際どれくらいなのだろうか?

 他のところ――お祖父ちゃんやハルートたちの動向も気になるし、まずは大天幕へと向かう。

 ロレンさんはエルフの集団の方へ向かうそうなので、一旦別れた。


 松明や魔法の光によって照らされている中を進んでいく。

 薬師や回復魔法の使い手が大忙しに動き回っている姿がよく目に映る。

 それだけ、直接戦闘が激しかったということだ。


 大天幕に着いて中に入ると、母上とフレミアムさまだけではなく、お祖父ちゃんたちにランドス陸騎士団長、それとウェインさまが居た。


「よく頑張ったわね! ジオ!」


 母上に抱き着かれた。

 むぎゅっ、と少し苦しいが、それだけ心配していたということだから、甘んじて受け入れる。

 ………………。

 ………………。

 長くない? と思ったところで解放された。


 そのあと、お祖父ちゃんたちの無事な姿を見てホッと安堵する。

 ナイマンとジェドの相手をしていたのだから、間違いなく本日一番激しい戦闘をしていたところだ。

 お祖母ちゃんとウェルナさまは無傷だが、お祖父ちゃんとコンフォードさまは軽傷ではあるが傷を負っていた。


「お祖父ちゃんたちが無事で良かったよ」


「わっはっはっはっ! 心配させてしまったか? お祖父ちゃんは強いからな! この程度で死にはせんよ! ……まあ、向こうは無傷だがな。防御に関しては正しく鉄壁であった」


 唸るお祖父ちゃん。

 お祖父ちゃんが相手をしていたのは、確かナイマンだったな。

 伊達に、父上が「自分が居なければルルム王国最強」ではないということか。

 そのことをお祖父ちゃんに伝えると――。


「そうか。オールが認めているということか。ワシもあと二十年は若ければな……」


 考え込むお祖父ちゃん。

 全盛期ではないが、それでもどうにかできないだろうか? と考えているようだ。

 そんな呟きが聞こえてくるのだが……必殺技が……というのはどういうことだろうか? 必殺技なるものがあれば、ナイマンをどうにかできるということだろうか?

 お祖母ちゃんにどういうことか、視線で問う。

 ――放っておきな。あと、ジオは関わっちゃいけないよ。そういうことに憧れるかもしれないけれど、後々頭を抱えることになるかもしれないからね。と長文だけどしっかりと返ってきた。

 ……頭を抱えることになるの? と疑問だが、お祖母ちゃんがそうした方がいいというのなら、と放っておくことにする。


 コンフォードさまにジェドについても聞いてみたが、「全盛期であればアレくらい余裕だから! 寧ろ、私の全盛期の時と言ったら――」と自慢……ではないな。自分、負けてないから、と言いたいようだ。

 ウェルナさまが視線でそういうことだと教えてくれた。


 フレミアムさまからは、独立遊撃部隊――俺、アイスラ、ロレンさんが地上戦に向かったあとにハルートたちがどうしていたのかを教えられる。

 残るワイバーンライダー四騎はあのあと出て来なかったようで、俺、アイスラ、ロレンさんが右側に行ったので、ハルートたちは左側に向かって、空中から援護を行っていたそうだ。

 それで助けられた人たちが多く、今はぐるちゃんたちに直接感謝を伝えに行く人たちに囲まれているらしい。

 だから、この場には居ない、と。

 まだまだぐるちゃんたちを怖がっている人は多いが、それが少しでも緩和したのなら何よりである。


 ランドス陸騎士団長からも、ぐるちゃんたちが居て非常に助かった、と言われた。

 本当に、かなり活躍したようだ。


 ウェインさまからはエルフの集団について教えられる。

 規模は約三千人。

 俺が上空から見た時はエルフしか見えなかったが、実際は獣人も共に来ているそうだ。

 エルフはあの弓術だけでなく魔法も得意のようであるし、獣人は身体能力が人よりも高いと聞く。非常に心強い戦力である。

 ただ、エルフの集団からは一つだけ要望があった。

 今日は到着したばかりで仕方ないとしたらしく、このあとはエルフの中心的人物であるロレンさん、あるいは大恩あるお祖父ちゃんたちか俺たちに指揮を取って欲しいそうだ。


「なるほど」


「私もそうだが、フレミアムさまもそれで異論はないそうだ。どうにかできそうか?」


「できそうというか、もうどうにかなっているのでは?」


 多分、ロレンさんがエルフの集団が居る方に向かったのは、そういうことなのだろう。

 お祖父ちゃんも、この場にロレンさんが居ないのはそういうことなのだと察したようだ。

 そこに、ロレンさんがタイミングよく戻って来て、エルフの集団の指揮を自分がしてもいいだろうか? と聞かれたので、もちろんと返す。

 一応、エルフの集団も独立遊撃部隊として、ロレンさんに任せることになった。


「これはもうエルフの中心的人物として返り咲いたと言っても過言ではないな! それに、エルフたちは戦局を左右しかねないだけの強さを持っている! つまり、これからこの戦いは自分を中心に動いていくことに――」


 そこまでなるだろうか?

 いや、ロレンさんの指揮能力が高ければ、もしかすると――と思わなくもないが、お祖父ちゃんたちの反応は、大丈夫だろうか? と首を傾げている。

 なら、お祖父ちゃんたちの誰かが、と思ったが、全員指揮よりも戦いたい、と拒否した。

 ……もう少しやりたがろうよ。ロレンさんが少し悲しい顔になっているから。


 もう休もうと母上と共に天幕へと戻る途中で、ハルートたちを見つける。

 フレミアムさまが言っていたように、ぐるちゃんたちに感謝を伝えるルルム・ウルト同盟軍の人たちに囲まれていた。

 当初の怖がられて避けられていたことを思うと、良かったな、と思う。


 夜襲に警戒しつつ、寝た。


     ―――


 翌日。

 夜襲はなかった。

 ただ、信じられない光景を目にする。

 ルルム・サーレンド連合軍の数が、さらに大きく増えていた。

作者「ジオくんも、ここらで必殺技の一つや二つ、どう?」

ジオ「………………今更?」

作者「ですよね」

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