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「ルルム王国大戦」 13

 ルルム・サーレンド連合軍の兵士を踏み台にして上空へと飛び上がり、後方を確認するとエルフの集団が見えた。

 数はざっと見た限りだと数千は居る。

 間違いなく一大勢力だ。

 元々協力してくれるという話であるし、味方なのは間違いない。

 実際、ルルム・ウルト同盟軍には攻撃していないし………………あれ? そういえば、誰がエルフの集団と話を通すのだ?


 俺とアイスラ、ロレンさんはここに居る。

 ハルートたちは空の上。

 お祖父ちゃんたちは中央で未だに戦っている。

 フレミアムさまは……直ぐに出たから顔を覚えられているかどうか……。


 あれ? エルフの集団の矢面に立てる人が居なくない?

 そう思っていると、ウェインさまが向かう姿が見えた。

「魔の領域」である森近くにあるヘルーデン繋がり、ということだろうか?

 いや、単純に、今回のことで事前に知己を得ていたか?


 まあ、何にしても、任せて良さそうだ――と考えたところで、俺は下を見る。


 上空に上がったはいいが、現在落下中。

 近くにハルートたちは居ないので、そのまま落ちるだけ。

 ただ、落下先には、俺が踏み台にした兵士とその仲間たちが待ち構えていて、それぞれ手に持っている剣や槍といった武具を突き立てている。

 まるで剣山のようだ。

 このまま落ちれば、体中が穴だらけになるだろう。

 普通なら。

 狙いは、一番突き出している槍。

 タイミングを合わせて体を動かし、穂先を足場にして蹴れば――剣山の範囲外に逃れて無事に着地できる。


 できなかった。違う。する必要がなくなった。


「貴様ら、何をしようとしているのですか? 私が見逃すとでも思っていたのですか? 私がそのような行為を許すと本気で思っているのですか? そもそも、戦場でそのような棒立ちで居るなど、自ら倒してくださいと言っているようなもの。愚の骨頂です」


 なんてことを言いながら、アイスラが鋭利な風纏いの剣オールスィングス・イージーカットを持っていない方の手で数人を殴り飛ばし、そのまま数人を蹴り飛ばして――あっという間に着地点の剣山はなくなり、俺は無事に着地した。


「助かったよ、アイスラ」


「いえ、当然のことをしたまでで――(……はっ! しまった! ミスってしまった! 今、落ちてくるジオさまを受け止めていれば、そのままぎゅっと抱き締めても落ちないようにと言い訳ができますし、それだけ密着するということは、流れでジオさまの匂いを嗅いでも違和感はなかったので怪しまれる、あるいは察せられることはなかったはず。惜しい。惜し過ぎます。絶好の機会を逃してしまいました)ございます」


 アイスラがなんでもなかったように一礼するのだが、ここはまだ戦場。

 周囲の中から剣を構えて襲いかかってくる騎士が現れる。


「なんでメイドがこんなところに居るのは知らないが、隙だらけだ、お」


「メイドがここに居るのは、もちろん主がここに居るからです。そんな当たり前のこともわからないような頭は必要ありませんよね? それと、今の私は自分に腹を立てていて不機嫌ですので、少々荒っぽいですよ?」


 もちろん、アイスラに隙はなく、しっかりと反応していて、空いている手で騎士の顔面を鷲掴みにすると、そのまま力を込めていっている。


「は、はな――いだだだだだっ! ご、ごめんなさい! ゆ、ゆる――いだいいいいいいっ!」


「謝る必要はありません。敵なのですから。倒すか、ぶち倒すかです」


 倒されるはないのか。

 まあ、アイスラが倒される姿は想像できないけれど。

 アイスラはそのまま騎士を地面に叩き付けたあとに力強く放り投げて、近くに居たルルム・サーレンド連合軍の者たちを数人巻き込ませて倒した。

 しかし、アイスラが自分に腹を立てるとは……アイスラなりに上手く対応しようとして、できなかったことがあった、とかだろうか?

 色々とできるからこそ、求めるものが大きいのかもしれない。


 ともかく、今は上空に上がって見たことに関して、ロレンさんに確認を取るため、次々と襲いかかってくるルルム・サーレンド連合軍の騎士や兵士、冒険者たちの相手をしながら、ロレンさんに尋ねる。


「ロレンさんは来ているってわかっていたようだけど、そういうのがわかるのか?」


 どこどこにエルフが居る、とか?

 そういう繋がりがある、とか?


「事前に来るとわかっていれば、大体わかる! 向かって来ているのはわかっていたが、ここまで絶好の機会で来るとは思っていなかった! ……あれ? もしかして、自分よりも目立つのではないか? いやいや、向こうは集団で、自分は自分だけ……個人で考えれば自分の方が……」


 エルフだからと欲をかいた、ルルム・サーレンド連合軍の冒険者たちをボコしながら、ロレンさんが、そう答えてくれた。

 ……なるほど。近付いて来ているのがわかっていたから、何やらそれっぽいことを口にしていたのか。

 戦場の右側を選んだのも、エルフの集団がこちら側から現れると感じ取っていたからか。


 まあ、何にしても、こちらにも援軍が来た。

 どれくらいの数かはわからないが、見た通りの数千規模であれば、ここから押し返す――どころか、そのまま一気に勝敗を決する……のは時間的に難しいので、とりあえず、押し返すことは可能だ。

 少しでもルルム・サーレンド連合軍の数を減らそうと、アイスラ、ロレンさんと共に戦っていると――不意に矢が飛んできて、近くに居たルルム・サーレンド連合軍の兵士に当たり、その兵士は倒れる。

 一体何が? と思ったところで、矢は次々と雨のように降ってきて、周囲の騎士に兵士、冒険者が倒れていく。

 それだけではない。

 倒れているのは、ルルム・サーレンド連合軍の者だけだ。

 ルルム・ウルト同盟軍の者は、誰一人として矢が当たっていない。


「凄いな。これがエルフの弓術か」


 思わず、そう口に出てしまう。

 それくらい圧巻で圧倒的だった。

 ロレンさんが鼻を膨らませて自慢げに胸を反っていたとしても気にならないほどに。

 それに、これでルルム・ウルト同盟軍には勢いが付く。

 ここから一気に巻き返――そうとしてできなかった。

 突然、ルルム・サーレンド連合軍の奥から三本の煙が上がる。

 それを契機にして、ルルム・サーレンド連合軍は攻勢を止めて、引き返していった。

 何故? とより遠くを見れば、もう陽が落ちそうなことに気付く。


 どうやら、思いのほか長く戦っていたようだが……それでも決着はまだ着かなかった。

 ただ、もうそろそろ決着が着く。そんな予感がした。

エルフたちが次々と矢を放つ。


作者「よっ! ほっ! はっ! なんで自分も狙われているの! 味方! 自分、味方だから!」

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