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「ルルム王国大戦」 9

 中央突破を試みたお祖父ちゃんたちの足が止まった。

 止められた、と言うべきか。

 お祖父ちゃんはナイマンと戦いを繰り広げ、コンフォードさまは……あれは誰だろうか?


「伝え聞く姿形から、おそらく、サーレンド大国の騎士団長であるジェドでしょう」


 共につーちゃんの背に乗るアイスラが、そう教えてくれる。

 そうか。あれがサーレンド大国の騎士団長のジェドか。

 その名だけは父上から聞いたことがある。

 父上が何度も戦ったことがあって、倒し切れなかった者。

 つまり、父上と同等の強さを持つ者ということだ。

 あれが、そのジェド。


「……コンフォードさま、大丈夫だろうか?」


「そう簡単に倒されるような方ではないと思いますが……念のため、注意はしておきましょう。下手に手を出すと状況が悪くなる可能性もありますが、そもそも、私たちものんびりと見ている暇はなさそうですし」


「そうだな」


 コンフォードさまだけではなく、お祖父ちゃん……は大丈夫そうだが、お祖母ちゃんとウェルナさまのところへ手助けに行きたいのだが、それは状況的に難しかった。

 中央突破を仕掛けたはいいが、足止めされてしまった影響からか、ルルム・ウルト同盟軍の全体的な勢いが落ちたようで、中央はまだしも、左右は要所が押され始めている。

 このままだと一気に距離を詰められ、瓦解するかもしれない。

 そうならないように、俺たちが動くしかないのだ。

 何しろ、地上からだと向かうだけで大変だが、空からなら直ぐである。

 一応、ルルム・サーレンド連合軍にはワイバーンライダーがまだ二騎残っているのだが、こちらから下手に近付かない限りは手を出してこなくなった。

 これ以上落とされる訳にはいかない、とかなり強く警戒している。

 だから、俺たちが危機的状況に陥りそうなところに向かっても、邪魔はされない。


 この戦場の上空は、こちらが制したと言ってもいいだろう。


「――あそこが押し込まれそうに」


「ちょっ! ぐるちゃん!」


 ハルートの慌てた声が聞こえたかと思うと、ハルートとロレンさんを背に乗せているぐるちゃんが押し込まれそうなところに向かって飛んでいき、ルルム・サーレンド連合軍に対して口から火炎を放出して焼き尽くしたり、曲芸のような動きで敵からの攻撃をかわしながら高速で近付いて体当たりや、背に乗るロレンさんが魔法で攻撃したりと、押し込まれそうな状況を一変させる。

 それでルルム・ウルト同盟軍にとって有利な状況を作り出すと、やることはやったと満足げに戻ってきた。

 ぐるちゃんとロレンさんは「ふぅ……いい仕事をした」という感じである。

 一応、俺がこの独立遊撃部隊の部隊長で、その部隊長が指示する前に動いてやることをやってくれるのは……まあ、別にいいのだが、一つ確認したい。


 ……いや、俺が指示を出す前に動いたのは別に構わない……そう。構わない。指示を待って間に合わない、なんてことになるよりいいからだ。俺が聞きたいのはそうではなく、ぐるちゃんが動いた時にハルートが落ちそうになって慌てていたけれど……落ちても大丈夫? 天使さんが居る? 落ち切る前に拾ってくれる? いや、まずは落とさないようにしようか……ハルートも、もう落ちないようにしがみついているから大丈夫ではな……まあ、当人が大丈夫と言うのならいいか。


 ちーちゃんの背に乗ったシークとサーシャさんも、俺が指示を出す前に動いていた。

 ただ、こちらはちーちゃんが動いてシークかサーシャさんが慌てるといったことはなく、三位一体というか、気付けばスゥーッと近付いて、サクッと終わらせている感じである。

 なんというか、こう……気付けば暗殺者が背後に居て終了、みたいな雰囲気だ。

 それと、個人を相手にではなく、小隊とかの単位で行っている。

 元暗殺者の血が騒いでいるのだろうか。恐ろしい。

 何より恐ろしいのは、ちーちゃんもそんな感じの行動になっているのである。

 間違いなく目立つ大きさなのに……暗殺スキルとか会得したのだろうか?

 敵に回すと怖いな、と思う。


 もちろん、つーちゃんの背に乗っている俺とアイスラも見ているだけではない。

 危なそうな場所を見つければ急行――。


「ぐるるるるるっ!」


「ちちちちちっ!」


 したいところではあるが、見つけた時にはもう遅いというか、ぐるちゃんかちーちゃんが向かっているので、両者が向かっている間に起こった、別の危なそうな場所へ急行している。

 ……え? 出遅れている? いやいや、そんなことはない。

 ぐるちゃんとちーちゃんの行動が速過ぎるだけだ。

 それに、結果的に危機的状況が解決しているというか、解決速度はどちらにも負けていない。

 寧ろ、どこよりも速い。

 危機的状況の場所の上空に着いた瞬間――。


「では、行って参ります」


 そう言ってアイスラが飛び降りると、ルルム・サーレンド連合軍を相手に無双というか蹂躙というか、あっという間に片付けて、なんでもないように跳躍して戻ってくる。

 それは、まあ……いいのだが、俺の出番は?

 もちろん、文句なんてない。それで危機的状況が解決するのなら。


 まあ、アレだな。うん。独立遊撃部隊らしく、皆独立して遊撃しているようなものだな。

 ……俺、部隊長で居る意味あるのだろうか?


「ございます。ジオさまが上に立っているからこそ、私たちが自由にのびのびと戦うことができるのです。つまり、変に力が入らずに、本来の力を発揮できるということに他なりません。これは、ジオさまだからこそ、なのです。ジオさまのこれまでの行動の結果で、この独立遊撃部隊は作られて、共に行動している者たちはジオさまがどのような人なのかを理解しているからこそ、自分たちが思うように――」


「……アイスラ。そこまで言われると、何か誤魔化しているように聞こえてくるけれど?」


「そのような気は一切ございません。すべて真実でございます」


「そう」


 それで力を出せるのなら、別にいいけれど。


 そうして要所の対応をしていると、ふと視界の端というか先で、捉えるものがあった。

 ルルム・サーレンド連合軍の奥の方の上空で、ワイバーンライダー二騎は待機している。

 最初は、その数が増えた? と思った。

 けれど、直ぐに違うと気付く。

 いや、増えたのは間違いないが、まだ到着していないというか、新たなワイバーンライダーが数騎、向かって来ているのが見えたのだ。

 それはつまり、ルルム・サーレンド連合軍の援軍がもう間もなく到着するということを指している……いや、先行してきているだけか?

 目を細めて見れば……ワイバーンライダー数騎のさらに奥に大軍が見えるような……。

 陽が落ちるまで、まだかなりの時間がある。

 この状況で相手の援軍が到着するとなると……あれ? もしかして非常にマズい状況か、これ。

作者「ちなみに、自分の指示には従い」

ぐるちゃん「ぐるるるるるっ!」

作者「ですよね」

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