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「ルルム王国大戦」 7 サイド 2

「壁の場所は適当で構わん! こちらで合わせて盾として使う! 向こうまでの弾避け用の道を作ってくれればいい!」


 イクシーの声を受けて、付いて来ている騎士、兵士、冒険者の中から、土壁の魔法を使える者や防御系の魔法を使える者がその通りに発動させていく。

 進路上に散りばめられた土壁を盾にして、イクシー、シーリス、コンフォード、ウェルナが、付いて来ている者たちと共に前へ――ルルム・サーレンド連合軍が陣取っている場所に向けて進んでいく。

 ルルム・サーレンド連合軍からの繰り出される攻撃に関しては、イクシーが口にした通り、土壁や防御系を上手く使い、阻まれることはなく、進行速度も落ちていない。

 ただ、戦いの場となっているセントル大平原は広大であるため、端から端へ移動するとなるとかなりの距離がある。それだけではなく、イクシーたちは突出した形で進んでいるので、相手からの集中的な攻撃に晒されることになるのだが……少なくともイクシー、シーリス、コンフォード、ウェルナの四人は無傷であり、付いて来ている者たちも無傷とはいかないが軽傷で済んでいる辺り、確実に精鋭であった。

 イクシーたちの快進撃とでも言うべき迅速な行動によって、このまま進めばそう遠くない内に、イクシーたちは無傷と軽傷のままでルルム・サーレンド連合軍が陣取る場所へと到達するだろう。

 それだけの勢いがあるからこそ、ルルム・サーレンド連合軍としては、イクシーたちが自陣まで到達すればどれだけの被害を受けることになるかわからないために無視はできなかった。

 当然、イクシーたちの行動を止めるために、自分たちの方からも戦力を前に出す。

 しかし、多少の数や生半可な戦力では妨げにもならないであろうことは理解していた。

 だからといって、大勢を出せば、他のところが薄くなってしまい、その他によって破られてしまいかねない。


 ――故に。

 本人たちの希望もあって、ルルム王国の現騎士団長であるナイマンと、サーレンド大国の騎士団長であるジェドが手勢を率いて出る。


     ―――


「止まれ――いや、散れ!」


 先頭を進んでいたイクシーの声にシーリス、コンフォード、ウェルナは直ぐに反応して、付いて来ている者たちは少し遅れて横に飛ぶ。

 もちろん、イクシーも声を出しつつ回避行動を取っていた。

 そこで、イクシーたちが元居た場所に、空から降って来た者が着弾。

 激しい衝撃で地面が揺れ、大地にヒビが走り、大きな土煙を周囲へと広げる。

 進路上にあった土壁のいくつかが、その衝撃で砕け散った。


「……今のは何?」


 シーリスが近くに居るイクシーに尋ねる。


「さて、なんだったのだろうな?」


「ふざけてんのかい?」


「いや、ふざけてはいない。少なくとも、人ではあった」


「……人?」


 イクシーとシーリス、いや、それ以外の者たちも、土煙の中心へと視線を向ける。

 そこに何かしらの存在を感じ取れるからだ。

 そして、視線が集中している土煙の中に居る者は――。


「げへっごほっ! がはっごほっ! ちょ、土煙が口の中には……ぺっ! ぺっ! 口の中に小石が……なんでこんなに土煙が立っている! 何も見えないし、口の中はざらざらするし……」


 むせていた。

 その声は大きく、それなりの人数に聞こえていて――誰もが自業自得だと思う。

 何人かは、自分でやったことなのに……馬鹿っぽいと思ったが口には出せなかった。


「邪魔だっ!」


 土煙の中の者が腕を振るう。

 その手には大剣が握られていて――その一振りで土煙がすべて吹き飛ぶ。

 大剣の一振りの鋭さに、馬鹿っぽいと思った何人かは口を噤むしかなかったのだ。

 その一方で――。


((((……できる))))


 大剣の一振りで、イクシー、シーリス、コンフォード、ウェルナは警戒するに値する者であると判断した。


 そうして、晴れた土煙の中に居たのはナイマンである。


「ハッハッハッ! ここまで近付いたことは褒めてやろう! だが、それもここまで! ここより先には行かせん!」


 ナイマンがイクシーを見る。


「とまあ、勢い良く言ってはみたものの、オールの父で前の前のルルム王国騎士団長が相手となると、さすがの私もどうなるかはわからないな」


「……ワシが誰か、知っているようだな」


「もちろん。まあ、そちらは私のことを知らないだろうが」


「………………わかるか?」


 イクシーがシーリスに確認するが、シーリスは首を横に振る。


「すまん。わからん」


「ハッハッハッ! で、あろうな! 寧ろ、知らなくても当然! 私が一兵卒から騎士となって直ぐに、あなたは騎士団から居なくなったのだから! 直接の面識はない! だが、私はあなたを超えることを目的として、ここまで――ルルム王国・騎士団長まで登ってきたのだ! あとは、あなたを倒せば目的の一つは叶えられる! とても楽しみだ!」


「そうか。ワシが妻と、コンフォードとウェルナと共に王都を出たくらいの時か。あの頃はもう先を見ていたからな。新人騎士であったおなら、見覚えがないのも頷ける。しかし、ワシを超えるとは、随分と生意気なことを言うではないか! 騎士団長だと? やれるものなら――やってみるがいい!」


 イクシーが大剣を振るう。

 ナイマンも体験を振るう。

 両者が振るった大剣はかち合い、甲高い音を上げて、その衝撃で大気と大地を揺らす。

 そして、両者は一切引かない。

 大剣をかち合わせたまま、相手の大剣を弾き飛ばそうと力を込めていく。

 あまりの力強さに、両者の足が地面に沈むほどだ。


 シーリスは、そこに割って入らない。

 そういう空気ではないとか、イクシーを信じているとか、いくつか理由はあるが、ナイマンが率いてきた手勢――ルルム・サーレンド連合軍が迫っているからだ。


「敵が来るよ! さっさと迎撃準備しな! それと、イクシーが戦っているところには迂闊に近付くんじゃないよ! 巻き込まれて死ぬからね!」


 シーリスはロッドを構えながら、付いて来ている者たちに指示を飛ばして、ルルム・サーレンド連合軍と相対する


 その近くでは、別の戦いが起こる。


「……お初にお目にかかる。サーレンド大国・騎士団長・ジェドと申します」


「丁寧だな。サーレンド大国・大王(ビギングの野郎)は元気か?」


「はい」


「そうか。ここでお前たちを破ったあと、顔を見に行くと伝えておいてくれ。……コンフォード・メイン・ルルムが会いに行く、ともな」


「どちらも生きて帰れたのなら、伝えておきましょう」


 コンフォードが双剣を構える。

 ジェドが大槍を構える。

 二人は戦いを始めた。


 その様子を見て、ウェルナは――。


「さて、突出している二人はコンフォードとイクシーに任せておけばいいから……私はシーリスのお手伝いをするのが良さそうね」


 そう判断して、杖を構え、自分の近くに居る、付いて来ている者たちを引き連れて、シーリスと合流し、ルルム・サーレンド連合軍と戦闘を始める。

ナイマン、ジェド「「私の」」

イクシ、コンフォード「「出番が来た!」」」

この四人「「「「むっ! 何を言う! お前たちの出番ではない!」」」」


作者「ここで争わないで」

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