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「ルルム王国大戦」 4

 ワイバーンライダーの一騎を早々に落とすことができた。

 落ちた先でルルム・サーレンド連合軍の一部を下敷きにしている。

 ……そうだよな。落とす場所も考えなければならない。

 できれば、ルルム・サーレンド連合軍の上がいいが、ルルム・ウルト同盟軍の上になる場合もあるだろう。

 その時は……体当たりで弾き飛ばすか?

 つーちゃんならいける?

 一応聞いてみたが、無理だと首を横に振られた。

 それだけの首振りではない。こう……逆に吹き飛ばされる、と言いたげな首振りだ。

 まあ、翼をなくそうともワイバーンは巨体だから、それはそうなるか。

 でも、勢いを付ければ……いや、無理は良くない。

 それで通用せずに落ちるということは、そのまま背に乗っている俺とアイスラも落ちるということである。

 落ち切る直前に離脱して衝撃を逃がすこともできるが、きっとやってはいけないことだろう。

 諦める。


 それに、次もそう上手くいくとは限らなそうだ。

 こちらが早々に一騎落としたことで、残るワイバーンライダー五騎は、かなり警戒を強めている。

 俺とアイスラが乗るつーちゃんだけではなく、他のハルートとロレンさんが乗るぐるちゃんと、シークとサーシャさんが乗るちーちゃんに対しても。

 ……ぐるちゃんはグリフォンであるし、ワイバーンライダーからしても普通に警戒対象では?

 ともかく、ここからは気を引き締めていかないといけない。

 それと、時間もない。

 直ぐに戦闘準備に入ってそのまま始まったので気付けなかったが、空に上がったことでそろそろ陽が落ちそうだとわかった。

 さすがに夜通し戦う――なんてことはしないだろう。

 少なくともフレミアムさまはしないだろうが、相手のベリグ王が愚王であれば、夜でも戦えと馬鹿みたいなことを言い出すかもしれない。

 ……そうでないことを願う。

 ただ、その可能性がある以上、今の内にできるだけルルム・サーレンド連合軍の戦力を削いでおきたいので、今の内にワイバーンライダーをできるだけ落とすつもりである。


「――アイスラ!」


「わかっています! 陽が落ち切る前にもう一騎は落としましょう!」


 アイスラも同じ考えのようなので、わざわざ説明する手間が省けた。

 空中での動きはつーちゃんに任せて、俺とアイスラはワイバーンライダーの動きを注視して隙を探る。

 ワイバーンライダー二騎が、こちらに迫ってきた。

 速度が乗っていて、そのまま体当たりするつもりのようだ。

 つーちゃんが小回りを利かせて、ワイバーンライダー二騎の間を縫うような動きで回避。

 その時に騎乗している者を落とそうとしたが、それは向こうも同じ意図だったようで、互いの武器を交えただけに終わ――いや、アイスラの鋭利な風纏いの剣オールスィングス・イージーカットは相手の武器を斬り払っていたので、次はそのまま斬ることができるだろう。

 こっちが優勢になったと言える。


 ただ、相手の警戒がさらに強まり、こちらを追ってはくるが交差するような動きは控えるようになって中々機会は訪れなくなった。

 そのため、他の様子を窺うことができる。

 残るワイバーンライダー三騎の内、二騎はぐるちゃんに乗ったハルートとロレンさんが相手取り、一騎はちーちゃんに乗ったシークとサーシャさんが相手取っていた。

 ぐるちゃんの方はさすがグリフォンと言うべきか、ワイバーンライダー二騎を相手にしても遜色はない――どころか、逆にワイバーンライダー二騎が離れようとしているところを追っているので、寧ろ上回っていると言うべきか。

 ちーちゃんの方は、つーちゃんと同じく小回りを利かせて上手く回避していて、状況はこちらと似たようなものだった。

 まあ、何にしても互いに隙を窺いながら、空中を飛び回っている。


 なるほど。正直に言って、相手の見込みが甘い。いや、早々に一騎落ちたことでそうせざるを得なくなったというか――ちーちゃんに乗るシークとサーシャさんを相手に一騎とは……足りないのではないか?

 そう思ったことが間違いではないと証明するように、事態が動く。


 ワイバーンライダー一騎が、騎乗している者の指示でちーちゃんに向かって火の玉を放ちながら突っ込んでいく。

 火の玉で動く範囲を狭めているようだ。

 速度を上げて、一気に叩き落とそうとした――が、当たりそうなところでちーちゃんが宙返りをして回避。

 また、その時にシークがちーちゃんから飛び下りて突っ込んで来ていたワイバーンの上に着地して、騎乗している者を蹴り落とすと、曲芸師のような軽やかな動きで両手に短剣を持ちながらワイバーンの頭部に移動すると、ワイバーンの両目に短剣を突き刺す。

 的確に躊躇いなく急所を刺した姿は暗殺者を彷彿とさせた。

 ……いや、元暗殺者だったな。


「グギャアアア!」


 暴れ落ちていくワイバーンの上にシークの姿はない。

 両目を刺すと同時にワイバーンから飛び下りていた。

 けれど、それで落ちることはなく、ちーちゃんが迎えに来ていて、その背の上に乗っているサーシャさんが伸ばした手を取って、シークはちーちゃんの背の上に戻ったのだ。

 だから、見込みが甘いと言ったのに……いや、言ってないな。

 敵に助言はしていなかった。


 これで、残るワイバーンライダーは四騎。

 また一騎倒されたことで、残る四騎の動揺は大きい。

 その隙を突いて、ぐるちゃんが速度を上げてワイバーンライダー二騎に追い付くと、一騎を牽制するように襲いかかる。

 その間にぐるちゃんの背に乗るハルートがもう一騎に向けて何かたくさんの小さな物をばら撒き――それが何かは直ぐにわかった。


 ――種だ。

 ロレンさんが魔法で種から発芽させて大きく広く伸びた蔓がワイバーンと搭乗している者を絡めとって拘束する。

 ただ、ワイバーンの力の方が強く、翼を大きく広げて引き千切られて、拘束はほぼ一瞬で解かれた――が、それで十分だった。

 牽制していたワイバーンライダー一騎を突如放置して、ぐるちゃんが襲いかかる。

 両前足を振るい、搭乗している者を叩き落とし、ワイバーンの首に強い一撃を与えた。

 首の方からは鈍い音がしたので、折れたと思う。

 無事なワイバーンライダー一騎は直前まで牽制されていたことで判断が遅れ、助けに向かうことはできなかった――どころか、今度は牽制ではないと、ぐるちゃんが襲いかかったので逃走を選択した。


 これで残るワイバーンライダーは三騎。

 このままではマズいと判断したのだろう。

 俺とアイスラが乗るつーちゃんを追っていた二騎の内の一騎が離れて、ぐるちゃんに追われている一騎の方へと向かおうとした。

 状況が何も改善していないのに敵に背を見せるとは――悪手である。

 直ぐ様、つーちゃんが小回りを利かせて反転する。

 体の向きを離れていこうとするワイバーンライダーの一騎に向けた瞬間、アイスラが跳躍して飛び乗り、搭乗している者ごと、鋭利な風纏いの剣オールスィングス・イージーカットでワイバーンの首を斬り落とす――と同時にアイスラは再度跳躍して戻ってきた。

 着地の衝撃など一切感じさせずに、ふわり、と。

 あれかな? 一瞬、メイド服のスカートが少し膨らんだけれど、それで調節したのかもしれない。


「アイスラ、見事」


「ありがとうございま――(しまった。スカートの膨らみを利用してジオさまの頭部をすっぽりと覆うように着地しておけば、ジオさまにスカートの中の乙女の秘密を見せることが自然とできて、ジオさまに私が魅力的な肢体を持つエロい女と、意識させることができたのに)――す」


 アイスラは不満げだ。

 華麗に動き、綺麗に両断したと思ったが、アイスラの中ではまだまだなのかもしれない。


 しかし、これで残るワイバーンライダーは二騎となった――が、ここで時間切れになった。

 もう陽が沈みそうで、ワイバーンライダー二騎は、自陣の方へと逃げていく。

 地上の方も戦闘は次第に止まっていき、どちらも自陣へと戻っていった。

アイスラ「このスカート、もう少しどうにかなりませんか?」

作者「理を曲げることは不可能です」

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