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遊撃部隊

 フレミアムさまから、少数精鋭の独立遊撃部隊を任せたいと言われる。

 任せたい――つまり、俺がそれの部隊長ということか。

 ………………兄上ならまだしも、俺には向いていないと思う。柄ではない。

 そう思うのだが、そう提案されるということは、そこに何かしらの意図があると思うので、詳しく聞いてみると……母上からの提案だった。

 俺は集団の中で動くよりも個人で動いた方が、より大きく力を発揮する、とフレミアムさまに伝えたそうだ。

 これで、そこらの人が提案したことなら気にも留めないと思う。

 だが、この状況を見越して色々と考察して当ててきた母上からの提案であるため、フレミアムさまは頷きを返したそうだ。

 まあ、その通りである。

 集団の中だと、やはり俺の本領であるギフト「ホット&クール」は使いづらく、使えないとなると俺は決め手に欠けるのは事実だ。


 なので、存分に動けるのならその方がいいと、わかりました、と受諾す――待って欲しい。

 少数精鋭の独立遊撃部隊? 少数? 部隊? つまり、俺だけではないということ。

 他に誰が居るのか先に教えてもらいたいのだが……アイスラ、ロレンさん、ハルートたち――ぐるちゃんたちと天使さん含む――だけ?

 ……え? それだけ? 本当に少数だけど。

 それなら、俺ではなくロレンさんが部隊長の方が……本人の希望?


「部隊長では前に出て活躍できないだろう? 活躍できない。つまり、目立てない。それでは駄目だ。そして、下手なところに組み込まれれば、イクシーやコンフォードの方が活躍する一方で、自分は目立たないまま終わりだ。もちろん、エルフという一点において十分に目立つと言えるが、それだけでは足りない。だから、ジオと共に行動する。ジオなら何かやってくれるかもしれない。それが派手なことなら、そこでバッ! とエルフの自分が飛び出せば、より目立つことに――」


 まあ、ロレンさんは本人がそう望むのなら、別に構わない。

 ただ、ハルートたちは……え? もう確認済みで了承している?

 どういうことかと言えば、未だぐるちゃんたち――特にグリフォン(ぐるちゃん)――に委縮している者たちが多く、このままだとどちらにとってもいいことにはならなさそうなので、それならいっそのこと、ハルートたちだけで一部隊として扱った方がいい、と考えたそうだ。


 なるほど。つまり、元々ハルートたちを遊撃部隊としようとしていたところに、母上が提案を持ってきて、ロレンさんが便乗した――といったところだろうか。

 そういうことなら――と今度こそ、遊撃部隊を率いることを受諾した。


     ―――


「――という訳で、この度、この遊撃部隊の部隊長に就任したジオ・パワードだ。よろしく」


 陣形を組んでいるルルム・ウルト同盟軍の後方の一角で、アイスラ、ハルートたち、ロレンさんを集めてそう口にすると、集まった人たちから拍手が送られる。

 歓迎されているようで良かった。

 まあ、知らない仲ではないので気が楽なのは確かだ。

 それともう一人。


「顧問の母上です」


 部隊長に就任したからというよりは息子の成長が嬉しいと拍手していた母上が、ニッコリと笑みを浮かべて皆に一礼する。


「カルーナ・パワードです。まあ、顧問といっても私に戦闘能力はないから形だけのものだから安心してください。この遊撃部隊を動かすのはジオで、私は報告しに行くとか、何かあった時の責任を取るための存在だから」


「え? いや、母上に責任を取らせるつもりはないけれど、動かすのは俺? 指示とか? 命令とか?」


「私に戦闘のことを聞かれても困るわ。合わせて、戦術、戦略もね。そういうのはリアンも専門よ」


「……その兄上は?」


「まだ来ていないわね」


 まだ(・・)か。このあと合流する予定があるのだろうか?

 兄上なら……間に合わせるか。

 え? となると……俺が考えないといけないのか?

 頼れそうなアイスラを見ると、頑張ってください、と両手を握っていた。

 俺に任せるようである。

 ハルートたちは俺に任せる姿勢を崩さない。

 ロレンさんは期待している、と親指を上げている。

 ……う~む。とりあえず、今後どのように動くかは、一応遊撃であるし、戦いが始まってから状況を見て動けばいいと思うのだが、そういう行動を決めるにあたって事前に確認しておきたいことが一つある。


 天使さんに視線を向けると、「なんでしょうか?」と首を傾げられた。

 俺が天使さんに視線を向けたことで、他の皆も天使さんを見て「……ああ」と納得するような声を漏らす。

 確かに、確認はしておいた方がいいと同じ結論に至ったようだ。

 何しろ、こちら側の最強戦力と言っても過言ではないのだから、どこまで手伝ってくれるのか、確認は必要である。

 ただ、母上だけは、どういうことかしら? と首を傾げていた。

 アイスドラゴン戦を体験していないと、天使さんの力は実感しにくいだろう。

 母上にはアイスラが説明しておくようなので、天使さんに確認すると――。


「期待はしないでください。アイスドラゴン戦は相手がドラゴンということで特例です。地上に居るためには色々と制限がありますので、以前のような協力はできないと考えてください。まあ、マスターを守るためなら容赦はしませんが」


 そういうことらしい。

 天使さんが地上に居続けるために、ハルートの安全は万全のようだ。

 それがわかっただけでも十分である。


「まあ、そんなに強いの?」


 アイスラの説明を受けた母上が感嘆するように言った。

 天使さんはそんなに強いのです。

 母上が感嘆したことが嬉しかったのか、天使さんはどこか自慢げである。


 ともかく、天使さんは戦力として数えない――が、人を運ぶくらいはやってくれると思う。

 つまり、ぐるちゃんたちも居るから、この遊撃部隊は空からの強襲も可能だということで、戦い方の幅は他よりも広い。

 これを活かせば、いくらでも活躍……空から………………思えば、パワード家が貴族家ではなくなって、一家離散みたいな状況になっているのは、ベリグ王が原因だ。

 ベリグ王との決着はフレミアムさまかコンフォートさまに委ねるのが一番いいと思うが、今の内に少しくらいは意趣返しをやってみても許されるのでは? とも思う。

 なので、俺がふと考えたことを口にすると――なんとも言えない表情が返され、母上は「いいんじゃないかしら? そういう王として後世に語り継がれるようになれば、それも一つのやり返しだもの。やるなら戦端が開かれる前がいいかしらね。話を通してくるわ」と賛同した。

作者「自分も戦力として数えられると、ちょっと……」

ジオ「えっと……わかった」

アイスラ「元々数えていません」

ジオ「まあまあ、アイスラ」

作者「……うん。そうだろうなって思ってた」

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