表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
169/204

到着

 ブロンディア辺境伯の騎士兵団と冒険者たちが来た。

 天幕に居た全員で様子を見に行くと、かなりの歓声で出迎えられている。

 まあ、それも理解できるというか、こちらの旧ルルム王国軍にとって、一大勢力となるのは間違いない。

 何故なら、「魔の領域」最前線で鍛えられていて、人数も多いからだ。

 本当に頼もしい。


「きゃあああああっ!」


「うわあああああっ!」


「いやあああああっ!」


 と思っていたら、何故か突如方々から悲鳴が上がった。

 何事かと思えば……なるほど。最初から見せていく方向でいくようだ。

 ぐるちゃんがちーちゃんとつーちゃんを従えるようにして、ブロンディア辺境伯の騎士兵団と冒険者たちの上を飛んでいた。

 それを見て、悲鳴を上げているようである。


 ぐるちゃんたち、優しいのに。

 それなりの騒動になっているが……まあ、この事態はウェインさまがどうにかするのだろう。

 それに、味方とわかれば、誰もが頼もしいと思うはずだ。


     ―――


 騒動は直ぐに収まった。

 ウェインさまもそうだが、フレミアムさまが現れて、救出された時のことを大々的に話して味方であると宣言し、害す者は決して許さないとハッキリと告げたのだ。

 それで大局が決したと思われる。

 まあ、だからといって、直ぐに受け入れられるというか、近付くのは難しいようで、今は遠巻きになって様子を見ている状態となった。

 敵対するよりはマシだ。

 なので、ハルートたちをこちらに来させることが簡単にできた。

 お祖父ちゃんとお祖母ちゃん、じいちゃんは、今後についての話があるウェインさまの下と向い、こちらは先に軽く挨拶を済ませたあと、母上が使っている天幕へと戻る。

 さすがにぐるちゃん、ちーちゃん、つーちゃんは中に入れないので、天幕の外で待機することになってしまう。

 ただ、その前に母上はご満悦な表情を浮かべて、ぐるちゃんたちを撫でた。

 ちーちゃん、つーちゃんは実際に会っているからわかるが、初見のぐるちゃんに対してもまったく臆していない。

 さすが母上だ。


 そのあとに天幕へと入り、まずはハルートたちを紹介する。


「――それで、こちらから、ハルート、天使さん、シーク、サーシャさんで、これまで色々と手伝って助けてくれた……なんだろうか? 師弟? 仲間? 協力者? 友達? ……う~ん」


 どれだろうか? と確認の視線をハルートに向けた。

 ハルートに確認したのは、代表者は間違いなくハルートだからである。

 少しだけ悩んだあと、ハルートは「全部では?」と返したので、そういう色々な関係となった。


 母上は、まずハルートに感謝の言葉を伝えた。

 ちーちゃん、つーちゃんが居たおかげで本当に色々と助かりました、と。

 ハルートは気恥ずかしそうにしていたが、嬉しさは隠し切れていなかった。

 母上はそのまま天使さん、シークとサーシャさんにも声をかけていく。

 その間に、ハルートから色々と聞いた。

 まず、ウェインさまは、あのあとフレミアムさまのところへ向かったそうだ。

 こちらに来るかは……多分、こちらから向かった方が話は早そうなので、あとで向かうことにした。

 ルルアさまは来ていない。

 自分には直接戦う力がないと、ヘルーデンに残っている。

 ウェインさまとルルアさまの娘である、ラウールアも執事のアトレと共にヘルーデンに戻って来ていて、ルルアさまの側に居るそうだ。

 安心して任せられる。


 ハルートから、手紙を二通渡された。

 一通はラウールアから俺に向けて。

 中を確認すると――本当は大きな戦いに参加したかったけれど、ルルアさまを残すのは心配だからヘルーデンに残る。その代わりに、自分の分まで暴れてこい、と……激励かな?

 十分、励ましになった。


 もう一通はルルアさまから母上に宛てたもの。

 そうか。ここにちーちゃんとつーちゃんが居るから配達することが――。


「……いや、俺ではなく母上宛なら母上に渡せよ」


 俺に渡してどうする……直接は恐れ多い? さっき挨拶したから、初対面でもないし、寧ろ母上はお前に恩を感じているから優しく接して――そういうことではない、と?

 ……まあ、別に渡すくらい構わないが……今回だけだからな。


 母上にルルアさまからの手紙を渡し、母上がそれを読んでいる間、ハルートたちと話していると、出発の合図が届いた。

 思っていたよりも合流が早かったため、今日はもう少し進むようだ。


     ―――


 順調に進んでいく。

 時折合流してくる一団はあるが……まあ、勢力としては小さい。

 大きいところは、メーション侯爵家とブロンディア辺境伯家のところで終わりだろう。

 ……いや、俺が知る中でもう一つある。

 エルフだ。

 来ると思っていたが、来ていない。

 近いし、ブロンディア辺境伯家のところと共に来ると思っていたが、来なかった。

 もしかして、来ない? いやいや、きっと来る。

 まあ、個人ならまだしも集団で「魔の領域」の森から出るのは大変だろうから、仕方ない。


 今でもかなり大きな軍勢となっている――が、向こうはそれ以上だろう。

 母上もそういう予測を立てている。

 少なくとも、数の上では向こうに軍配が上がる、と。

 それでも負けるつもりはない。


 進んでいく中で、俺は母上、アイスラだけではなく、ハルートたちも共に居る。

 やはりというか、騎士、兵士、冒険者問わず、ぐるちゃんたちが敵ではないとわかっていても、そう簡単に近付ける訳がなかった。

 そのため、少しでもぐるちゃんたちの居心地が良くなるように、と俺たちの側に居させることにしたのだ。

 母上は乗ったり撫でたりとご満悦である。


 途中で、ウェインさまと挨拶を交わした。


「いよいよ大きな戦いが始まる」と言えば、「存分に暴れさせてもらう」と頼もしい発言が返ってくる。

 頼りにさせてもらう。


 そこで、気付いた。

 ウェインさまはレオ(少年)を伴っていたのだ。


「見どころがあるからな。私の側で戦場の経験を積ませるつもりだ」


 大丈夫だろうか? と思うが、ウェインさまが大丈夫だと判断したからこそ、この場に居るのだろう。

 その判断を信じる。

 それに、レオからやる気は感じられるが、大人しいというか、落ち着いているというか……どうした? やってやるぜ! みたいなことは言わないのか?


「俺をどういう目で……いや、前までの俺は確かにそんな感じだった。考えなしに突っ走っていた。でも、それだけじゃ駄目なんだと教えられた。それに、ここで負けるとヤバいんだろ? なら、俺は俺にできることをやるだけだ。それが結果的に……守ることになるんだろ?」


 成長しているようで何よりである。


「突っ走り気味だった少年が……」とアイスラは空を眺めていた。


「何を守りたいのかしら、ね?」と母上は何故かウキウキしている。


 ……レオよ。何故そこで助けを求めるように俺を見るのか。アイスラが空を見ている理由も、母上がウキウキしている理由も、俺にはわからないというのに……。

 とりあえず、「頑張れ。でも、死んだら何も守れないから、死ぬなよ」とレオを激励しておいた。

 そうではなく、アイスラと母上から守って欲しい? 無理だ。


     ―――


 そして、セントル大平原に辿り着く。

 平地で、見渡しのいい大平原。

 ここが戦場となる場であったが、それは敵が居ればの話。

 居ないのなら、そのまま先へと進むだけだが――セントル大平原の向こう側に、こちらよりも規模が大きな軍勢が居た。

 どうやら、向こうも着いたばかりのようで、慌てて戦闘準備を始めている。

 それならこちらも――と戦闘準備を始めた。

作者「ジオくん。俺はどんな関係?」

ジオ「う〜ん………………」

作者「そんなに考えないといけない感じ? 泣くよ?」

ジオ「年に一度か二度、顔を合わせる親戚の人のような……」

作者「うん。もう少し会っているよね? もう自分、涙が零れないように空を見ているよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ