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察してくれるはず

 牢に入れられた。

 まあ、俺はいいというか気にしないというか、正直ただの牢なので抜け出そうと思えば力業――ギフト使用――で抜け出せるので、特に思うことはない。

 あとで少し面倒になるかなぁ……と思うくらいだ。

 俺がそういうことができるとわかっているのから、女性ということで別の牢に入れられているアイスラも大人しくしている……と思われる。

 気配で察して、動いていないので確かだ。

 俺の動き待ちかもしれない。

 アイスラも自力で抜け出すことは可能なので、抜け出す時は同時に動き出すだろう。


 だから、今気にするべきは、同じ牢の中に居る――。


「……自分。エルフ……はは……そうか。自分、軽く流される存在だったのか……いや、待てよ。それは自分だけか? 自分だけなのか? それとも、自分を含めたエルフ全体の話? ……あれ? もしかして、もうエルフってそんなに珍しい存在じゃない? いやいや、ルルム王国ではそれなりの扱いだったから……ウルト帝国だけ? ……はっ! 自分、気付いた! この帝都には別大陸への船が出ている港がある! 都会に憧れる若い人ならぬ、別大陸に夢を抱く若いエルフが次々とここから……時の流れってヤツか」


 落ち込んでいたかと思えば妙なことを言い始めたロレンさんと――。


「………………牢屋……暗い……怖い……鉄格子……嫌い……ああ……あああああ……」


 何やら牢に対して精神的苦痛を抱いているご様子のフレミアムさまの二人だろう。

 状態的にはフレミアムさまの方がヤバく見える。

 落ち着いてください。大丈夫。まずは深呼吸を意識してし続けてください。と伝えておく。

 マシになるかはわからないが、現状維持はできると思う。

 ただ、ロレンさんにしろ、フレミアムさまにしろ、早く牢から出さないと不味い気がする。

 出るための問題は、帝都の門番がこちらを完全に怪しい者たちだと疑っていることだ。

 出して。と言って出られるとは思えない。


 ……やはり、ここは力業で脱獄だろうか?

 それが話は早い気がする。

 何しろ、脱獄すれば騒ぎになって、門番で対処できないとなれば兵士、騎士が現れるので、その辺りであればフレミアムさまのことを知っている人も居るかもしれない。いやいや、騒ぎを聞きつければお祖父ちゃんたちが出張ってくるは………………待てよ。そうか。お祖父ちゃんたちに、俺たちがここに居ることを気付いてもらえばいいのか。

 ……ん? あれ? お祖父ちゃんたちは帝都に居るよな? 居ないと困るというか、居ないのなら本気で脱獄を考えないといけなくなるのだが。

 というか、お祖父ちゃんたちに知らせるのは……どうやって? 門番にお願いしても、現状の関係値だと普通に断られることがわかる。取り合ってもらえない。

 なら、ここから好感度を稼いだとしてもいつになることか……そもそも、その前にどう好感度を稼げばいいのやら。

 会話か? だが、今門番は近くに居ない。

 強い気配でも出して招き寄せるしか………………それだ!

 お祖父ちゃんたちなら気付くはず。家族の絆を信じる。


 気力を溜めて……帝都全体に届くくらいまで勢い良く一気に放つ。

 何かが大きく広がっていく感覚。気付く人は気付くと思う。

 これで察してくれればいいのだが……。

 少し待つ。

 本当に、少ししか待たなかった。


 外が騒がしいな? と思ったら、門番と共にお祖父ちゃんが現れたのだ。


「おお! 本当にジオではないか! 帝都に来たのか! ロレンも居るし、アイスラも! よくぞ来た! ん? そっちは……まさか、フレミアムか? 大きくなったな! ベリグに捕まっていたのをジオに助けられたか! 口にした通りに助けたのか! さすがはジオだ! はっはっはっ! ………………なんでジオがここに来ているのだ!」


 それは俺自身も思ったというか、まさかここまで来るとは思っていなかった――けれど、海を見ることができたので個人的には満足だ。

 いや、海を見に来た訳ではなく――俺はお祖父ちゃんにここまで来ることになった経緯を話した。

 お祖父ちゃんはそういうことかと納得して、門番に出すように指示を出すと、門番は「わかりました」とどこか嬉しそうに指示通りに動き始める。


「……お祖父ちゃん」


「どうした? ジオよ」


「お祖父ちゃんはルルム王国の人だよな?」


「何を当たり前のことを。パワード家をルルム王国が誇る最強の一家にまで押し上げたのは、このお祖父ちゃんだぞ!」


 お祖父ちゃんが誇らしげに胸を張った。

 まあ、それはそれとして――。


「だったら、何故門番がお祖父ちゃんの指示に従う? 門番はなんかキラキラした目でお祖父ちゃんを見ていたし」


「ああ、それか。まあ、ここに来た時に沖の方で巨大なイカ(クラーケン)が船を沈めたりと暴れていてな、放置するのは忍びなく、こう、お祖父ちゃんたちがちょちょっと出張って倒したのだ! 皇帝からも感謝されてな! それから、この帝都の人はお祖父ちゃんたちに対して友好的なのだ! 一定の信頼は得た!」


 一定以上だと思う。

 ともかく、門番がお祖父ちゃんの指示に従った理由はわかった。

 あと、帝都内の宿屋だと人が集まり過ぎるということで、今は帝城内の空いている部屋を使わせてもらっているそうだ。

 なるほど。それは……話が早い。

 直ぐに牢から出され、詰所の外に出る。

 アイスラは何事もなかったようにいつも通りだ。

 フレミアムさまは、直ぐに元に戻ってお祖父ちゃんに挨拶をする。


「イクシーさま。お久し振りでございます。ご存命であったこと嬉しく思います」


「ははは! そう畏まるな! 以前はもっと砕けていただろう! それに、今のお前はルルム王国の王だ! 当時のままで構わないぞ!」


「それこそご容赦を。当時は若かったのです」


 お祖父ちゃんとフレミアムさまは面識があったようだ。

 まあ、考えてみれば、お祖父ちゃんはフレミアムさまの父であるコンフォードさまと、母であるウェルナさまと行動を共にしているのだから、あって当然か。

 そんな感じでフレミアムさまは牢の中に入らなければ……大丈夫そうだ。


 ただ、ロレンさんは戻っていない。

 一度立ち直ったかと思ったのだが、やはりどこか落ち込んだままだ。

「ロレンはどうしたのだ?」と、お祖父ちゃんがこそっと確認してきたので、ロレンさんの身に起こったことを隠すことなく教える。

 お祖父ちゃんは「そうか」と言ってロレンさんを少し慰めたあと、帝城まで案内すると言うので付いていった。

イクシー「ほれ、行くぞ!」

ジオたち「わかった」


作者(牢の中)「……自分のことを忘れていくと思った!」


このあと、戻ってきたジオに回収されていった。

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