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王城潜入 4 救出

 ――王城。地下通路。


 階段を下りて、王城の地下へと辿り着く。

 幸いなこととしていいかはわからないが、ここの地下は一階だけだ。

 地下二階も地下三階もない。

 この階だけで済むのは、少し助かる。

 ただ、その分、それなりに広い。

 というのも、地下には牢があるだけではなく、他にも物置とか色々とあるが、その中でもこの王城にある三つの宝物庫の内の一つがあることが重要だろう。

 元々父上からそのことを聞いていたが、見取り図を見てここだな、と正確な位置がわかった。

 といっても、そこは目的地ではない。

 寧ろ、反対側だ。

 だから、宝物庫を守る兵士が居たとしても、そちらには行かないので問題ない。


 途中で通路が分かれていても見取り図を参考にして、地下通路を進んでいく。

 地下牢がある場所までは迷うことなく最速で辿り着いたので、そう時間はかかっていない。

 しかし、出入口には当然のように見張りの兵士が居る。

 まずはそれをどうにかしないといけなかったのだが――。


「………………」


 居眠りをしていた。

 ……まあ、人気の場所でないことだけは確かだ。

 暇なのも間違いない。

 寧ろ、ここは暇でないと駄目だろう。暇ではないということは、地下牢に入っている者が出ている、ということなのだから。

 シークとサーシャさんが手早く対処して、居眠りではなく気絶へと変えた。


 地下牢がある場所へと足を踏み入れる。

 最低限の明かりしか確保されていないので、薄暗い。

 あと、掃除もそう行われていないのだろう。臭いが少し強い。


「ハルートたちはここで見張りとして待っていてくれ」


「わかった」


「ロレンさんは……」


「コンフォードの息子だろ? 何度か会ったことがあるから、自分も行こう」


「それは構わないが……この中、少し臭いからそのつもりで」


「………………わかった」


 眉間に皺が寄るくらいまで悩んだロレンさんが了承すると頷く。

 そうして、俺、アイスラ、ロレンさんで、中に地下牢がある場所へと足を踏み入れる。

 牢屋はいくつもあって、中には人が入っているとこもあった。

 時間が時間なので全員眠っているようだ。

 薄暗い中を進んでいく。

 明かりは用意しない。

 それで目を覚まされて騒がれると面倒だからだ。

 音を立てず、起こさないように慎重に、前王が入っている一番奥の牢へと向かい――辿り着いた。

 最奥の牢の中で横になって眠っていると思われる男性が一人。

 薄暗いので容姿は見づらいが、今代聖女(キャットレディ)の情報を俺は信じる。


「……陛下……『フレミアム・メイン・ルルム陛下』ですか?」


 牢の中の人にだけ聞こえる程度の声量で、声をかける。

 最初は動きがない。

 何度か声をかけると、身じろぎをして……こちらに視線を向けてきた――ように見えた。


「……誰だ……兵士では、ない、ようだが……」


 非常に弱々しい声だった。

 聞き覚えは……ある。ただ、かなり衰弱しているように聞こえた。

 まあ、ここは環境が悪いだろうし、食事も不味いだけではなく、満足に与えられてもいなさそうだ。

 ギリギリ生きていられるだけのことしかやっていないのだろう。

 それだけで、新王に対して怒りを抱く。

 目の前の人が前王だから、ではない。

 父上の友達だから、だ。

 ……父上が知ったらキレそうだな、と思う。


「俺……私はジオ・パワードです。パワード家で何度かお会いしたことがあるのですが、憶えておいででしょうか?」


「ジオ、パワード……オールの息子、だったな……憶えて、いる……ただ、もう私、は……王ではない……名で呼んで、構わない」


「わかりました。『フレミアム』さま」


「……うむ。それで、いい………………ところ、で、そんな、真っ黒な顔、だったか? 日焼け、か? 日焼け、し過ぎる、と、将来シミになる、とレレクイアが言って、いた……男性も、気を付けろ、と」


 なるほど。真っ黒に見えるのは周囲が薄暗いからだと思うが、日焼けは気を付けた方が――ではなく、もしかすると、思っていたよりも元気なのかもしれない。

 弱っているように見せかけて、いざという時が来たら直ぐ動けるように、とか?


「えっと……とりあえず、助けに来ました。動けますか?」


「……歩く、くらいなら、できると思う、が……肩を、貸してくれる、と助かる」


 やっぱり元気ではないかもしれない。


「まずは中から運び出そう。明るいところで確認して、間違いなければそのまま脱出。それが早い」


 ロレンさんがそう提案してくる。

 確かに、そうした方が早いか。


「陛下。まず、牢を開けるので、少々お待ちください」


 本当に直ぐである。

 というのも、会話しつつ、ギフト「ホット&クール」でナイフ型の超熱空間を用意しておいた。

 牢の柵を焼き切るくらい問題ない。

 サクサクと牢の柵を切り取って、人が歩いて入れるようにした。

 ロレンさんと共に中に入って、左右からフレミアムさまの肩を担いで牢の外に出る。


「すま……ない……」


「気になさらずに。このまま外に出ます」


「あっ、ついでに……そこの、牢に、捕らわれて、いる宰相、も頼める、だろうか?」


「宰相?」


 フレミアムさまがどうにか指し示した牢屋には、確かに男性が一人、横になって眠っていた。

 宰相というと、確か……。


「『コンテント宰相』ですか?」


「……そう、だ……捕らえ、られてから、今まで話し、ていたから……間違い、ない……」


 ふむ。会ったことは……多分。ない。

 顔がわからないのだが……。


「ジオさま。私はわかりますので問題ないかと」


 アイスラがこそっとそう言う。

 なら、フレミアムさまは休ませた方がいいと思うし、一旦明るいところまで連れて行って、アイスラに確認してもらえばいいか。

 フレミアムさまはロレンさんに任せて――。


「コンテント宰相で、よろしいですか?」


 声をかけると、こちらは一度で起きた。

 状況を説明している間に超熱空間のナイフ型をもう一度用意して、同じ手順でコンテント宰相には俺が肩を貸して連れ出す。

 とりあえず、この場は静かなので、こちらの行動に気付いた者は居ない。

 まあ、ここまでくれば、別にバレてもいい……いや、面倒になるから、やっぱり無事に王城、王都を出るまではバレないことを願う。

 そうして、どうにか地下牢から出て、ハルートたちと合流する。

 兵士は来なかったようだ。

 ともかく、明るい場所に出たから確認。

 フレミアムさまは……今は全体的に薄汚れているが――輝く金髪に、整った顔立ちに立派な口髭の四十代くらいの男性。本人。

 コンテント宰相は……こちらも全体的に薄汚れているが――白髪で、眼光鋭い端整な顔立ちの六十代くらいの男性。アイスラが間違いないと頷いたので本人。


「は、はは……コンテント……どうやら、まだ私たちは、終わっていない、ようだな……」


「ええ……どうやら、その、ようです、ね……」


 フレミアムさまとコンテント宰相が、どうにか笑みを浮かべ合う。


「自分も、コンフォードの息子と会えて嬉しく思う」


 ロレンさんがフレミアムさまに声をかける。

 フレミアムさまはロレンさんの姿を見て、少しだけ目を見開く。


「……え? ……あなた、は、エルフ……まさか……」


「色々と話したいところではあるが、今はここから出ることを優先しよう」


 確かに、とフレミアムさまは頷いた。

 直ぐに行動に移り、フレミアムさまはロレンさんが肩を貸して、コンテント宰相には俺が肩を貸して、他の皆には周囲への警戒をお願いして、元来た地下通路を戻っていく。


 そして、地下から一階へと上がる階段の手前で足を止めた。

 上がった先にある部屋の中から、非常に強い人の気配を感じたからだ。

フレミアム「……健康の、ために……食生活も……見直す時が、必要……だ……いつまでも、同じ……ものは食べられ……ない……胃腸が弱くなる、から……年齢に合わせて………………味覚も、変わる……昔は味が駄目、で……食べられなくても……今なら食べられるものも……」


作者「うん。わかったから、今は休んでください」

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