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何故か

 ――王都・ルルインドア。

 外からはわからなかったが、中に入ると俺が居た頃とはまったく違っていることに直ぐ気付いた。

 高く、綺麗な建物が多く、それは大通りほど顕著であり、活気があって、華やかで、往来が多く、正しく国の中心である都。それがここ王都・ルルインドアだった。

 しかし、今は違う。

 荒廃したとか、少し落ち着いたとか、人が少なくなった、とかではない。

 パッと見た感じでは。

 注意深く見ると、俺が知っている王都・ルルインドアとは様相が違っていた。


「おら! 退け退け! 邪魔だ!」


「王命である! 道を開けよ!」


「運べ! まだ次があるからな! 早く運び出せ!」


 荒々しい声が大通りのそこかしこから聞こえてきて、どこの荒くれ者が? と思ったら、この国の騎士、兵士だった。

 慌ただしく動いている。

 巡回……という訳ではなさそうだ。

 大店から大量の物資を運んでいたり、訓練帰りと思われる汚れた状態の者がいたりと、理由は様々なようだが、視界の中に騎士、兵士が多いだけに、どこか物々しい雰囲気が流れている。

 騎士、兵士自体もどこか神経質になっているように見えるので、このあとに起こる大きな戦いに向けて準備を始めているのだろう。

 その影響が如実に現れている。


 また、騎士、兵士が多いということで、俺とアイスラの顔を知っている者が居るかもしれないため、肩掛け鞄(マジックバッグ)の中からフード付きローブを取り出して気持ち深く被っておいたのは正解だったと思う。


 それと、大通りから脇道へと視線を向ければ、以前まではそれほど見かけなかった浮浪者を見かけるようになっていた。

 単純に数が増えている。

 ……まあ、そうなっている要因には容易に想像がつく。

 新王は多くの貴族の協力を得ているようなので、何事も貴族優先というか、平民を後回しや蔑ろにしているのだろう。

 その結果で浮浪者が増え、王都・ルルインドアの治安もどことなく悪くなっているように見えた。


 ……新王。王になったのだから、もっとしっかりと統治しろよ、と言いたい。

 まあ、それももう直ぐ終わりだ。

 大きな戦いが終わったあと、新王がルルム王国を統治することはない。

 そのためにも、必ず勝ってみせる。

 そして、勝つために、前王は絶対に救出しなければならない。


 ………………。

 ………………。

 待てよ。俺。アイスラ。ハルートたち。ロレンさん。天使さん。呼べばぐるちゃんも加わって………………あれ? このまま王城に攻め入っても制圧できるのでは?

 ……いやいや、慢心は良くない。

 完全無欠のような天使さんでも、ハルートという繋がりを失ってしまえば元居た場所――どこかは知らない――に戻らないといけなくなると思う。

 ここは本拠地で、数は相手の方が圧倒的に多い。

 乱戦になると不測の事態が起こらないとも限らないので、ここは慎重に動いた方がいいだろう。

 ……父上と兄上が居たら強行しても良かったのだがな。


     ―――


 とりあえず、時間が丁度良かったので、近くにあった飲食店に入り、個室があって全員が入れたので、まずはそこで話し合いをしつつ一息吐く。

 味は良かったのだが、値段は少々高い気がした。

 気のせいかもしれないし、別にそれで金に困るということはないのだが、騎士、兵士が大量の物資を運んでいたので、それで物の値段が高騰しているのかもしれない。

 まあ、そもそも現状で長居するつもりはないので、気にしないことにした。


「この値段でこの味ですか……私の方がより上等なものを作れますね。コックに文句を言ってきてもいいでしょうか?」


 いや、駄目だから。

 これくらいなら許容範囲内だから、アイスラは落ち着くように。

 アイスラを宥めつつ、今後について考える。


 まずは、王都・ルルインドアにある大教会に行って、聖女(キャットレディ)に会って情報を得てこないといけない。

 ……情報が手に入ってない、ということはないと思う。


「これが都会の味か……いや、美味しいんだけど、なんか味付けが濃い気がしない?」


「そうだな。ヘルーデンの方と比べると確かに濃い。調味料が豊富に使われている感じだ」


「そうね。辺境よりも王都の方に物が多く集まるでしょうし、たくさん手に入るのかも。でも、私はヘルーデンにある飲食店の味の方が好きだわ」


 正直なところ、俺もハルートたちと同意見である。

 いや、不味い訳ではない。寧ろ、美味しい。けれど、調味料がたくさん使われ過ぎていて……アイスラと一緒にコックに一言……ではなくて、今後のことだ。


 一応、情報がなかった場合のことも考えて……これはその時でいいか。

 ともかく、まずは大教会に行くところから始めないといけないが……ハルートたちとロレンさんはどうしよう。


「……ふむ。悪くないが、ここはやはりエルフとして、自然の恵みが足りないとか言っておいた方がいいだろうか? あんまりくどいとエルフが誤解されるかもしれないので、丁度いいくらいを見極めないといけないな。あっ、サラダではなくてそっちの肉をくれないか」


 さすがに現状で自由に動いてもらうのは止めておいた方がいい気がする。

 そもそも、ハルートたちは王都・ルルインドアに来るのは初めてで、ロレンさんはコンフォードさまに話をしに来たそうなのだが、それは有名な話だから随分の前のことだから、様変わりしているのでほぼ初見、と考えられるので……王都は広いし、別行動した途端に道に迷う可能性は高いので、共に行動した方がいいと思う。

 しかし、そうなると、大教会に行って聖女(キャットレディ)と会う時は……正体を隠している訳だし、さすがに俺とアイスラだけの方がいいか。


「濃い味付けは別に構わないのですが、ここは天界ではなく地上……体に影響が出るのでしょうか? 太……いえいえ、私は元天使長。体型維持はバッチリです」


 ただ、大教会に天使さんを連れていって大丈夫だろうか?

 ……まあ、見た目は人そのものだし、大丈夫か。

 それに、前王がどこに捕らわれているかわからないことにはどうしようもないので、まずは情報を得てからでないと行動のしようがない。

 食事が終わったあと、早速大教会へと向かう。


     ―――


 大教会に赴いて中に入って――。


「来たな! 神敵よ!」


 直ぐに、もの凄く立派な祭服を身に纏った老齢の男性に、何故かそんなことを言われた。

 しかも、本当に何故か、天使さんに向かって。

ジオ「いや、でも、やっぱり制圧できるのでは……」

アイスラ「ジオさまがお求めになるのであれば、私が一人でも必ず成し遂げましょう」

作者「本当にできそうだから怖い」

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