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対アイスドラゴン 3

 ロレンさんが出現させた巨大な木が巨大な魔法陣と共に消える。

 アイスドラゴンは、空から落ちたところまで押し飛ばされていた。


「グガアアアアアッ!」


 アイスドラゴンがこれまでで一番強い咆哮を上げて、再度氷の鎧を身に付けた。

 お祖母ちゃんの魔法でなくなった部分も元通り――いや、腹部分も氷で覆い、他の部分はさらに厚く、堅くなっているように見える。

 アイスドラゴンの目には強い怒り。

 先ほどまでお祖父ちゃんに向けていたのよりも強い怒りの視線が、お祖母ちゃんとロレンさんに向けられる。


 ……お祖母ちゃんになんて目を向けていやがる。用意しているギフトで、瞬間焼死させてやろうか?


「ジオさま。怒りが漏れ出ています」


 アイスラに注意されて頭が冷える。

 しかし、不思議だ。

 お祖父ちゃんの時はそこまで思わなかったのに……あれかな? お祖父ちゃんは父上に似ていて……逆か。父上がお祖父ちゃんに似ているのか。

 まあ、それはいいとして。

 お祖父ちゃんは父上と似た感じというか、殺しても死なない感じ……殺しているのに死なないとはどういうことだ? 元々死人? 幽霊? ゾンビ的な何か? ……ともかく、そんな感じだ。

 要は、死ぬところを想像できないのである。

 もちろん、死ぬ時は死ぬ。当たり前。

 父上とお祖父ちゃんは、それを連想させないくらいの存在感なのだ。

 だから、心配し辛いというか……いや、しっかりと心配しておこう。

 お祖父ちゃんなのだ。

 孫が心配するのは当然。

 ……アイスドラゴンめ。先ほどはお祖父ちゃんにあんな目を向けるなんて。よくも。


「………………」


 アイスラが注意してこないのはどういうことだろうか?

 見ると、どうかされましたか? と首を傾げられる。

 ……怒り、足りなかったかな?


「グガ、ゥゥゥゥゥッ!」


 アイスドラゴンが唸りながら前傾姿勢を取る。

 これは意思表示だ。

 もう何をやられても止まるつもりはない、と。

 おそらく、こちらが優勢で進めていたため、これ以上手間取れば時間経過と共に己の方がより不利になる、と考えたのだろう。


 それにしたって、嫌な手というか、面倒な手を選択したな、と思う。

 アイスドラゴンは鈍重ではない。こちらが思うよりも速く動くし、人の数倍はある巨体だ。

 そんなのが止まる気がなく突進してこようとしているのである。

 避けるのも難しく、止めるのはそれ以上に難しい。


「問題ない! そうだろう? コンフォード!」


「そうだな。問題はない。イクシー」


 お祖父ちゃんとコンフォードさまが戦線復帰する。

 ウェルナさまの回復魔法で負った傷は癒されたようだ。


「シーリス。止められるな?」


「ウェルナも、私とイクシーを回復させたばかりだが、シーリスと共に止められるか?」


 お祖母ちゃんとウェルナさまが頷きを返す。


「少しでいいから止めておけと言いたいのだろう? 大丈夫だから、安心して斬ってきな」


「ええ、まだ魔力に余力はありますので、問題ありません。その代わり、しっかりと斬ってきてくださいね」


 お祖父ちゃんとコンフォードさまが頷き、お祖母ちゃんとウェルナさまも一緒に、ロレンさんを見る。


「頼むぞ!」「頼むね」「頼んだ!」「頼みます」


「うん、わかっているけれど、簡単に言ってくれるな! いや、もちろん気持ちは伝わってきているよ? でもね、なんというか、その言葉だけだとなんか物足りなくない? もっとこう、色々と言ってくれてもいいと思うんだけど?」


 お祖父ちゃんたちとロレンさんは、まるで談笑でもしているかのような雰囲気だ。

 といっても、気を抜いているとかではない。

 しっかりとアイスドラゴンを意識していて、たとえ止まらない突進が行われようとも、それでもどうにかする、と決意しているようだ。

 いや、お祖父ちゃんたちとロレンさんだけではない。

 エルフたちも「やってやるぞ!」と声を張り上げて戦意を高めている。

 誰も、避ける気も逃げる気もない。

 ……まあ、そうした場合、アイスドラゴンはそのまま世界樹の方に向かうから、だろう。


 そうして、「ガアアアッ!」と己を鼓舞するように咆哮したアイスドラゴンが突進してくる。


「いくぞ! コンフォード!」


「ああ! イクシー!」


 お祖父ちゃんとコンフォードさまが空中へと駆け上がっていく。

 落下する力も加えて、一気に斬るつもりだと思う。


 エルフたちがアイスドラゴンに向かって、矢と魔法を放ち続ける。

 氷の鎧に阻まれてアイスドラゴンにはなんの痛痒も感じていないようだが、それでも数多く飛んでくるというのは、少なからず煩わしさを感じるはずだ。

 それで少しでも意識を割くことができれば――僅かかもしれないが対応は遅れる。


「いくよ、ウェルナ」


「ええ、シーリス」


「ふっ。こういう時、女性の二人の間に入るほど野暮ではないつもりだ。まあ、それでも一声くらいはかけて欲しかったけれどね」


「はいはい。わかっているよ、ロレン。しっかり踏ん張りな」


「忘れている訳ではありませんよ。ロレン。頑張りましょう」


 ロレンさんがやる気を滾らせ、お祖母ちゃんたちが動き出す。

 お祖母ちゃんは魔法でアイスドラゴンの大きさに合わせた巨大な炎の盾を作り出してぶつけていき、ウェルナさまは魔法で地面から小山のような突起を突き出して巨壁として、ロレンさんは先ほどと同じく木々を当てて妨害していく。

 まずは突進の速度を少しでも落とす、という意思を感じる。

 だが、アイスドラゴンの突進速度は変わらない。

 氷の鎧が砕け、体表に傷を負おうとも、速度は緩まない。

 ここでこのまま轢き殺す。何がなんでも――と既に覚悟完了しているようだ。


 きっと、前の戦いはこちら側が死に物狂いだったから撃退できたのだろう。

 けれど、今はお祖父ちゃんたちが前よりも強くなり、アイスドラゴンは傷を癒しただけであるため、立場が逆転したのだ。

 今回死に物狂いとなったのは、アイスドラゴンの方。

 だから、この死に物狂いの突進は止められない。

 このままであれば。


「アイスラ!」


「問題ありません! いけます!」


 俺とアイスラは駆け出し、お祖母ちゃんたちより前に出て、アイスドラゴンに向かっていく。


「死に物狂いだろうがなんだろうが、想定外なことが起こると動きは止まってしまうものだよな?」


 アイスドラゴンが迫ってくる。

 俺のことを視界に捉えてはいると思うが、意識しているかは怪しい。

 まあ、関係ないけれど。

 さて、どうなるかな?

 用意していたギフト――大きな盾型の超熱空間を、突進してくるアイスドラゴンの左前足の進行上に設置。

 そこに到達すると、アイスドラゴンの左前足は焼失した

 う~む。竜の鱗があるし、焼き爛れる程度だと思っていたが、それ以上だった。

 でもまあ、これでも問題ない。

 突然左前足がなくなったことで、アイスドラゴンはバランスを崩して倒れ、突進の勢いを殺し切れずに体が浮き上がって前転する。

 結果。仰向けになるアイスドラゴン。


「アイスラ!」


「お任せを!」


 アイスラが収納魔法の中から、剣身が燃えている剣を取り出す。

 確か「燃え上がる剣(ソード・オブ・フレア)」だったかな。

 それで氷の鎧を瞬時に溶かし、右前足を地面と縫い付けるように貫く。

 アイスドラゴンとだいぶ近いが、アイスラは寒くないのだろうか? 剣が燃えているから大丈夫なのかな?


 俺が合図を送るまでもなく、お祖母ちゃんは動いていた。

 お祖母ちゃんは巨大な炎の盾をアイスドラゴンの首部分に当てて氷を溶かしたあと、巨大な炎の盾を砕いて形を変え、巨大な炎の鎖をいくつも作り出して、アイスドラゴンの各部を拘束する。

 ウェルナさまは巨大な炎の鎖を土で覆ってさらに拘束を強化、ロレンさんがその上から木々を絡ませるように押し当ててより拘束を強化して、アイスドラゴンの動きを完全に封じた。

 アイスドラゴンは足掻くが、拘束はそう簡単には外せない。

 それに、そんな時間はもうない。

 上空からお祖父ちゃんとコンフォードさまが落下してくる。

 いや、魔法陣を蹴って、落下速度をさらに上げていっていた。


 お祖父ちゃんが大剣を構える。


「でえ――りゃあああああ!」


 タイミングを合わせて振られた大剣が、アイスドラゴンの首を両断――できなかった。

 竜の鱗が予想よりも頑丈というのもあるだろうが、アイスドラゴンが瞬間的に首部分を氷で覆って守ったため、それで威力が落ちたのだ。

 アイスドラゴンがニヤリと笑ったように見えた。

 甘い。


「おお――りゃあああああ!」


 コンフォードさまが落下してきて、首に刺さったままのお祖父ちゃんの大剣に、二本の剣を押し当て――アイスドラゴンの首を両断した。


 少し待てどもアイスドラゴンはそれからぴくりとも動かず――「う、おおおおおっ!」とどこからともなく上がった歓声をきっかけに、至るところで歓声が広がっていく。

作者「(拡声器を持って)ここは自分の場所であ〜る!」

天使さん「……Zzz」

作者「今直ぐ起きて、この場所を返しなさ〜い!」

天使さん「……うるさい! 寝られないでしょ!」


波◯砲みたいなのが空に向かって放たれる。


ジオ「……無理ではないかな。諦めよう」

作者「そうだね。自然に起きるのを待つことにするよ。命大事」

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