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教育済のようだ

「転移樹」をララに使ってもらい、エルフの国・エルフィニティから「魔の領域」である森の中へと移動する。

 まだ「転移樹」があるところは清浄な空気が流れているので特に思うことはなかったのだが、洞窟を抜けると「魔の領域」特有の雰囲気に変わり……懐かしいというか、そうそう、こんな感じだったな、と思う。

 時間的にヘルーデンへと急ぐ。

 門が閉まる前に辿り着きたい。

 お祖父ちゃんが居ないからか、魔物が襲いかかってくる。

 まあ、ララも強いので、中層の魔物くらいなら余裕だ。

 それほど手間取ることもなく進んでいく。

 浅層に入り、もう少しでヘルーデンに辿り着く――というところで、ふと思った。


 ――しまったな。お祖父ちゃんかコンフォードさまに、ブロンディア辺境伯(ウェインさま)宛に手紙の一つでも書いてもらえば良かったかもしれない、と。


 ……まあ、いいか。一度戻る理由はハルートだ。……シークとサーシャさんも一緒に来てもらった方がハルートは安心だと思うので、共に連れて行こう。

 今は迅速な行動が求められている。

 ウェインさまへの報告は、アイスドラゴンの件が片付き、お祖父ちゃんたちがルルム王国に戻る時でもいいと思う。

 文句の一つくらいは言われるかもしれないが。


 そんなことを考えている間に、ヘルーデンが見えてくる。

 門も開いているので間に合った。

 ララを見て、しっかりとフードを被っているのを確認してから森を抜け出し、平原を一気に駆け抜けて、そのまま門も抜け――。


「「「おかえりなさい! どうぞ、お進み――そちらの方はどなたで? フードを深々と被って顔を隠して、何やら怪しい雰囲気を醸し出していますが、何か身元を確認できる物をお持ちですか?」」」


 門番たちが立ち塞がった。

 うん。そうだよな。普通はそうだ。

 門番たちは悪くない。

 職務に忠実なだけだ。

 怪しいものは通さない。

 それが仕事だ。


 俺とアイスラが既に顔パス状態だったからこそ、失念していた。

 しかし、ララがエルフだとバレるのは、マズい。

 周囲に出入りの人がまだ大勢居るので、ここでエルフ登場となると余計な騒動が起こるのは間違いない。

 ララからどうする? と無言で尋ねられている気がする。

 ……仕方ない。強権を振るうのは好みではないが。


「事情があって詮索不要で頼みたい。明日にはまた出るから、それまでに何かあれば責任は俺が取るから通して欲しい」


「「「いや、しかし……」」」


 門番たちは退かない。

 う~む。威厳か? 威厳が足りないのか?

 年齢的な問題だと今はどうしようもないので、どうしたものか。

 何か別の手段を――。


「私が責任を以って対応しますので、通しなさい」


「「「ははっ! どうぞ、お通りください!」」」


 アイスラの一声で門番たちはさっと退いた。

 ……ヘルーデンでのアイスラの影響力は、俺の想像以上だったようだ。


「助かった。ありがとう、アイスラ」


「いえ、ジオさまのためとなるのなら、このようなことは些事でございます」


 些事ではないと思うが……まあ、いいか。

 アイスラ、ララと共にヘルーデンへと入る。

 とりあえず、一息吐く。

 ヘルーデンの門が閉まっていたら、夜の闇に紛れて秘密裏に入らなければならないところだった。

 無事に入れたので、良し。

 時間的に、ハルートたちなら依頼を受けていても終わっているだろうから、宿屋「綺羅星亭」へ向かう。

 ただ、ハルートたちが長期的な依頼を受けているか、ヘルーデンから出るような依頼を受けていたら、大きな問題だ。

 居ると信じて宿屋「綺羅星亭」に入り――勝った。そう言いたくなる。

 食堂で、ハルートは食事を取っていた。


「おや? 戻ってきたのかい?」


 宿屋「綺羅星亭」の女将さん――ローナさんが声をかけてくる。


「ああ、直ぐ出るけれど、一泊だけ。彼女の部屋もお願いしたいけれど、空いているだろうか?」


 俺とアイスラの宿泊は先払いで部屋を確保しているから大丈夫だが、ララの部屋は今からでも大丈夫だろうか?

 空いているのならいいが、なければアイスラと同室でお願いするしかない。


「空いているけれど……彼女ということは女性? で、姿を見せないのは訳ありかい? ヘルーデンを救った英雄のお願いだから受けたいところだけど、一目だけでも女性だと確認できるかい?」


 確認か……どうしたものか、と思っているとララが声をかけてくる。


「ジオ。この者は事を荒立てない――口は堅い方か?」


「ん? ああ、そうだな……口は堅い方だと思うが、一つ言えるのは女性の味方だということだ」


 でなければ、魔法鍵まで使うほどの厳重な宿屋にはしないだろう。


「そうか。なら――」


 ララが前に出て、ローナさんだけに顔を見せるようにフードの位置を少しずらす。

 ローナさんは一瞬驚いた表情を浮かべたあと、直ぐにいつもの表情へと戻った。


「そういうことなら、ここで一番安全な部屋を用意するよ。一泊でいいんだね?」


 頷きを返し、そこは商売なのできちんと宿泊料金を払ったあと、ララへの魔法鍵の説明はアイスラとローナさんに任せて、俺は食堂へと入り、ハルートたちの下へ向かって、声をかける。


「ハルート」


「え? ジオさん。お久し振り? でいいのか? まあ、それはいいとして、なんか普段と雰囲気が違うような……」


「ああ、時間がなくてな。ハルートに協力をお願いしたいのだが、俺からの依頼という形で金も支払う。明日から時間は空いているか? 少なくとも数日は付き合ってもらうことになると思う」


「協力をお願い――ということはギフト関係かな? まあ、今受けている依頼はないから、数日でも大丈夫だし、俺はそもそも何かあれば協力すると言っていたので構わないけど……シークさんとサーシャさんは?」


「もちろん、二人が構わないのなら同行して欲しい。その方がハルートは安心するだろうし。ハルートたち――パーティへの協力依頼と捉えてもらって構わない」


 わかった――とハルートだけではなく、シークとサーシャさんも付いて来てくれることになった。

 これで、まずは一安心である。


 そのあとは、アイスラとララが合流して、ハルートたちと共に食事を取った。

 ララのことは今ここでは言えないので、ハルートたちには明日話すとして、ヘルーデンまで強行したことで少なからず溜まった疲労を癒すためと、門が開く早朝に出発するために、早々に寝た。

勘違い? は解かれ、エルフ男性の家に招かれる。


作者「え〜と、それで、ここがエルフの国で合っていますか?」

エルフ男性「ああ、ここはエルフの国・エルフィニティだ」

作者「お、おお! 遂に……遂に! えっと、ここにジオくんたちは居ますか?」

エルフ男性「ジオ? ああ、少し前に来た人族のことか。彼ならまたどこかに行ったようだが? 確か、ヘルーデン、だったか?」

作者「ここでまさかのすれ違い!」

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