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気にしないことにした

 何かしらの空で動ける手段があった方がいいか尋ねると、お祖父ちゃんたちとロレンさんはあるのなら是非とも欲しい、と返された。

 アイスドラゴンを地に落とすのに、相当苦労したそうだ。


「手に入るなら、コンフォードを振り投げなくても良くなるな」


「あれはあれでいいものだぞ」


 着地が大変だと言っていたのに、お祖父ちゃんとコンフォードさまはまたやりそうな気が……いや、やれる時があれば必ずやるという確信があった。

 ただ、一度ヘルーデンに戻る必要があって……ヘルーデンでどうこうよりは、ここに連れてきた方が話は早いだろう。


「新たにここに人を招くことになると思うが、大丈夫だろうか?」


 尋ねると、コンフォードさまが悩みながら答える。


「う~む……まあ、ここについては来ようと思って来れるような場所ではないのは確かだ。しかし、だからといって、この場所と手段が広まるのが避けたいのも事実。その招こうとしている者が、ここのことを他者へ言いふらさないと断言できるか?」


「そんなことをするようなヤツではないと、俺は信じている」


「そうか。どう思う?」


 コンフォードさまがロレンさんに尋ねる。

 ロレンさんは少し考えたあとに口を開く。


「そうだな。いいんじゃないか? いや、もちろん、これは自分的な判断だから実際は今のエルフの中心的存在に尋ねた方がいいと思う。ほら、俺はもう中心的存在から外れたてしまった――」


 とりあえず、他のエルフに聞いた方がいい、ということのようだ。

「それでは、誰か連れてくるか」とコンフォードさまが出て行く。

 ……なんというか、先々代の王さまなのに身軽というか、誰かを呼びに行かせていいのだろうか?

 いや、俺の立場としては仕方ないというか、エルフの国・エルフィニティには来たばかりで、知り合いらしい知り合いはララとリリくらいである。

 また、来たばかりということで地理にも詳しくないので、例えば俺が誰か連れてこようとしたとしても、迷ってどうにもならず、戻ることすらできなくなると思う。

 だから、任せるしかないのだが……残ったお祖父ちゃんたち、あるいはロレンさんでもいいような気がして視線を向けてみるが……。


「ん? どうした? ジオよ。……はっ! そうか! その顔は何かをねだる顔だな! 何か欲しいものでもあるのか? お祖父ちゃんが好きなものをなんでも買ってやるぞ! それとも、お祖父ちゃんと戦いたいのか? お祖父ちゃんとして、まだまだ壁として立ち塞がるぞ!」


「何を言っているんだい、まったく。ジオよ。気にする必要はないよ。イクシーのことだけではなく、コンフォードのことも。あれはなんでも自ら率先して動く気質なんだよ」


「そうよ。嫌なことであれば逆にまったく動こうとしないもの。自分で進んで動いたのなら、コンフォードにとって嫌なことではないってこと。だから、気にしなくていいからね」


「……ああ、コンフォードのことを気にしていたのか。前々からあんな感じで、王さまという割には身軽なヤツだったな。まあ、自分が誰かを呼びに行っても良かったのだが、そこはまあ、エルフの中心的存在から外れたとしても、戻ってくれば大きな宴が開催されるくらいには人気者の自分だ。誰かを呼べば多くの人が集まって――」


 お祖父ちゃんはまた戯れたいようだ。

 お祖母ちゃんとウェルナさまは察してくれて、それを聞いたロレンさんがさらに答えてくれた感じだろうか。

 まあ、気にしてなくていいのなら、今は気にしないでおこう。


 それからそう時間はかからずに、コンフォードさまはララを連れて戻ってきた。


「ジオと知己を得ている者の方がいいだろうと思ってな」


 この気遣い。さすが先々代の王である。

 しかも、ここに来るまでの間に、コンフォードさまはララに用件を説明していたようだった。


「話しはコンフォードさまから聞いた。アイスドラゴンを倒すために必要であるのなら許可する。ただし、その者が問題を起こせば、ジオにも責任を取ってもらうかもしれないが、それでも構わなければ、だが」


「わかっている。俺が責任を以って対処する。まあ、そういうヤツではないがな……でも、ララが決めていいのか?」


「問題ない。これでも纏め役の一人だ」


 ………………お祖父ちゃんたちに視線で確認を取ると、頷きが返ってきた。

 そうだったのか。

 ララが少しだけムスッとした表情で口を開く。


「……なんだ? 年若い私が纏め役では不安か?」


「いや、エルフの中でも頼りになる人に早々に出会えて良かった、と思っていたところだ」


「そ、そうか。それなら、いい」


 褒められ慣れていないのか、ララの頬が少し上気した。


「……将来が少し不安になるね」


「下手をすれば何人も囲いそうね」


 お祖母ちゃんとウェルナさまが呆れたような視線を俺に向けているのは何故だろうか?

 まあ、考えてもわからないので事を進める。

 エルフ側の許可がもらえたので、あとは行き来だ。

「転移樹」は特定のエルフにしか使えない。

 また、時間を決めて待ち合わせとするのがいいと思って提案してみると――。


「それだと時間の無駄だろうから、私が共に行こう」


 ララが付いて来ると言ってきた。

 後ろ――アイスラから冷えた空気が流れだしたような気がしたので振り返るが、そこには笑みを浮かべる(普段通りの)アイスラが居るだけなので気のせいだろう。


「ありがとう。ララに頼む。となると、あとはヘルーデンに戻っている間に、アイスドラゴンが襲ってこないかどうかだが……」


「「「「「「……」」」」」」


 誰も答えなかった。

 アイスドラゴンに「ちょっ、準備してるから待ってろよ!」と言ったとしても、元々言葉が通じないのなら意味はない。

 いや、待てよ。実は言葉が通じているのだが、「自分は竜。最強の種族である」と驕り高ぶっていて、こちらの言葉に答える気はないと無視していた可能性はないだろうか?

 ……ないか。ないな。うん。

 アイスドラゴンがいつ襲ってくるか明確な日がわからない以上、行って戻ってみなければわからない。


 早速行動を開始する。

 一応、パッと見でエルフだとわからないように、顔も覆うローブを羽織ったララを伴って、アイスラと共にヘルーデンへと戻った。

作者「はあ……はあ……あ、あの! ここはエルフの国ですか?」

男性エルフ「はい。そうですよ。ここはエルフの国・エルフィニティでーーて人族! であえ! であえ! 人族のカチコミだあ!」

作者「え? いや、え? カ、カチコミ? 違う違う! と、とと、とりあえず、両手上げておいた方がいいかな?」

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