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前の戦いについて聞く

 一応、弁えてはいたのか、回復魔法で直ぐに治る範囲の怪我でお祖父ちゃんたちとロレンさんの戦いは終わった。

 アイスラの投入もなかったし、理性は残っていたと思われる。

 結果としては引き分け? だろうか。

 いや、どうだろうか。

 最初はロレンさんがお祖父ちゃんたちの一人一人と戦ってみるという流れだったのだが、そこでロレンさんが「おいおい、俺は病み上がりみたいなものだと言っただろ。全員とやるだけの体力は回復していないし、全員とやったとしても後半は疲れ切っているから相手が有利になる。それで勝って嬉しいか? 勝ったと言えるのか? 自分より強いと胸を張れるか? だからまずはそっちで代表者を決めてくれないか? それに勝てば自分が一番だろ?」と言い、お祖父ちゃんたちが代表者一名を決めるのかと思ったら、そのままロレンさんを巻き込んでの乱闘になったのだ。

 それで、結果は全員がほぼ同時に倒れたので……まあ、引き分けでいいか。

 ただ、エルフィニティから少し離れたところで行われたのだが、その場は激しい戦闘があったとわかるくらいに荒れた。

 ……いいのだろうか? この辺りはエルフの領域なのに、ここまで自然破壊をして。


 ――大丈夫だった。

 ロレンさんが魔法を使って元の状態に戻した。

 草木や大地の回復力を高めて、さらに促進させて――と説明を受けたが、もう少し詳しい説明を受けないと難しいかもしれない。

 アイスラはふむふむと理解しているように頷いていたのだが、俺にもわかったことに、エルフにしか使えず、さらに近くに世界樹のような自然力が非常に高いものがないと、ここまで元に戻すことはできない、と言っていたので、俺やアイスラには使えない魔法の類である。

 まあ、知識として覚えておいた、ということだろう。

 ともかく、戦闘痕はなくなって、元に戻った。

 皆、強い。それでいいじゃないか。


「「「「「……あともう一歩前に出ていれば」」」」」


 皆、思うところがあるようだ。

 でも、これ以上は止めて欲しい。

 なんというか、見ていて落ち着かないから。


 ただ、全員本当に強い。

 ギフトなしの一対一で俺は勝てないと思う。

 父上なら勝てそうな気がする……そんな気がするからこそ、それを口にはできない。

 言えば、間違いなく父上よりも自分の方が強い、と言って戦いそうだから。


「賢明な判断かと」


 俺の表情から読み取ったのか、アイスラがそう言ってきた。


     ―――


 その後、エルフの国・エルフィニティに戻ると同時に、お祖父ちゃんたちとロレンさんは、「今度こそ! アイスドラゴンを倒してみせる!」と宣言した。

 それに呼応して、エルフたち――獣人も含めて――「打倒! アイスドラゴン!」と息巻き、それに向けて動き出す。

 武器の手入れを始めたり、鍛錬を始めたりと、昨日の大きな宴から一変して、エルフの国・エルフィニティ全体の空気が引き締まったように感じる。

 こういう時、自分も何かした方がいいのでは? と思う。

 一応、手出し無用と願われたが、それは実際に戦う時の話であって、それまで手伝ってはいけない、ということではない。

 なので、お祖父ちゃんたちとロレンさんに、何かしら手伝えることがないかと尋ねると、それなら話を聞いて欲しいと言われる。


「……話? 何の?」


「ワシらがアイスドラゴンとどう戦ったのか、だ。当然、そこから得たことを元にして対策を講じておる。だが、経験していないからこそ気付くこともあるかもしれない。万全を期したいのだ。ジオとアイスラなら、何か妙案を思い付くかもしれないしな。ああ、だからといって、無理に策を講じろという訳ではない。何かあれば、で構わない」


 お祖父ちゃんの説明に、わかったと頷く。

 アイスラも同じく頷いた。

 まあ、俺かアイスラが何か画期的な策を編み出すのを期待してというよりは、誰かに話すことで自分たちの中でも抜けがないかどうか確認する、という意味合いの方が強いと思う。


 そうして、場所を大きな屋敷の談話室へと移し、アイスドラゴン戦の話を聞く。

 ………………。

 ………………。

 簡潔に纏めると――お祖父ちゃんたちとロレンさんが前衛パーティとして前に出て、エルフたちは後衛で援護、という形でアイスドラゴンと戦ったようだ。

 前衛パーティの中でもさらに前衛後衛に分かれ、お祖父ちゃんとコンフォードさまは武器を持って最前線に出て、時に攻撃、時に回避か防御でアイスドラゴンを抑え込み、お祖母ちゃんとウェルナさま、ロレンさんは少し下がった位置から魔法で援護、あるいは威力の高い魔法を放って確実に傷を与えていった。


 だからといって、一方的に、という訳ではない。

 お祖父ちゃんたちとロレンさんも無事ではなく、エルフたちの手厚い後方支援があるにも関わらず、回復し切れない傷を負っていく。

 それだけはない。

 アイスドラゴンの特性とでも言えばいいのか、存在するだけで周囲の気温を著しく下げるそうだ。

 寒さは動きを鈍らせる。

 最前線で戦うお祖父ちゃんとコンフォードさまはその影響をもろに受けるはずなのだが、気合でどうにかできるそうだ。

 ……気合、凄いな。


 また、竜の鱗は非常に頑丈で魔法にも強いため、それでも傷を与えられるお祖父ちゃんたちとロレンさんが凄いということだが、一度に大きな傷を与えるのは非常に困難だった。

 長い戦いとなる。


 それでも、優勢なのはお祖父ちゃんたちとロレンさんだった。

 一気に決めることはできなくとも、少しずつ追い詰めていった――のだが、自身の不利を悟ったアイスドラゴンが逃亡を図ったそうだ。

 そこで生まれた隙を狙って、お祖父ちゃんが渾身の一撃を食らわせたのだが、それで仕留めることはできず、アイスドラゴンがブレスを放つ。


 破れかぶれだったのだろう。

 狙いすましたものではなかったため、アイスドラゴンが放ったブレスは世界樹に向かっていたのだ。

 このままでは世界樹が凍り付くかもしれない、あるいは何かしらの影響があるかもしれない、しかし、ブレスを防げるだけの魔力はもうない、と即時に判断したロレンさんは、ブレスの軌道が自分に向くように結界を張り、ブレスを一身に受けて氷漬けとなった。

 お祖父ちゃんたちはそれに動揺して、その隙にアイスドラゴンは逃亡した――というのが一連の流れのようだ。

 その時に受けた傷を癒して、アイスドラゴンが再び襲いに来そうになっている、というのが現状である。


 しかし、まあ、なんだ。

 まず、さすがは竜と言うべきか、一体でお祖父ちゃんたちとロレンさん、エルフたちを相手にしているのだから、凄まじいとしか言えない。

 話を聞き終わったのだが、特に何か思い付くことはなかった。

 けれど、話の中にはなかったのだが、一つ気になることがあったので尋ねる。


「アイスドラゴンは飛ぶ?」


「ああ、羽持ちだ。飛ぶ」


「飛ぶのか……え? なら、前回はどうやって?」


「シーリス、ウェルナ、ロレン、エルフたちの魔法を何度も打ち込んで落としたな。あとは、ワシの大剣の腹にコンフォードを乗せて振り投げ、コンフォードが羽に斬り込む、なんてのもあったな」


「あったな。アレは面白かった。まあ、着地が大変だが」


 お祖父ちゃんとコンフォードさまが和気藹々と話すが……それは大変で済む話だろうか?

 しかし、そういうことなら、こちらも空を飛ぶ――まではいかなくとも、何かしらの空で動ける手段を用意しておくのがいいかもしれない。

 幸い、そういうのに強い心当たりがある。

作者「はあ……はあ……もう限界が近い……森から出たい……平地行きたい……見晴らしがいいところを歩きたい……山は嫌だ………………ん? あれは? なんだ? 建物? 町? 森の中に?」

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