表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/204

時期が悪い理由

 母上からの手紙を読んで、お祖母ちゃん、コンフォードさま、ウェルナさまは難色を示した。

 お祖父ちゃんも、こうなるとわかっていたようである。

 俺も話した方が効果はあるとお祖父ちゃんは言っていたが、見た感じだと効果はなさそうな気がした。

 それに、全体の流れは俺よりも母上の方が把握しているのは間違いないから、手紙を読めば俺の方の話はそもそも必要ないと思う。


 ともかく、「時期が悪い」というのが、今はすべてを物語っている気がする。

 それでも、答えを聞いておきたい。

 そこから動けることもあるだろうからだ。


「協力は、難しいですか?」


「「「「………………」」」」


 お祖父ちゃんたちが考え込む。

 どうにか――という感じは伝わってくるが、やはり難しそうだ。


「先ほど、コンフォードさまは時期が悪いと言いました。そこについて聞いても大丈夫ですか?」


「そうだな……少し時間をくれるか? これは私たちだけの問題ではないのだ。エルフも関わっているため、話すにはエルフ側の許可が要る」


 コンフォードさまの言葉に、わかった、と頷きを返す。

 それで一旦、協力云々の話は終わった。

 コンフォードさまは「私が許可をもらってくるから、イクシーとシーリスは孫の相手をしておくといい。ウェルナも付いて来てくれ」と言ってウェルナさまを伴って応接室から出て行く。


「今はコンフォードとウェルナの気遣いに感謝しよう。さあ、ジオよ! ルルム王国の現状は大体わかった。だから、ジオの話を聞かせてくれ。あっ、ルルム王国の現状についてはいいからな」


「そうだね。赤子の時のことしか知らないお祖父ちゃんとお祖母ちゃんに、成長した孫の話を聞かせてくれるかい?」


 少し恥ずかしかったが、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんに俺のことを話した。


     ―――


 なんというか、自分で自分の幼い頃のことを話すのは、なんか困惑する。

 だからといって、アイスラにお願いすると、なんか褒め称えられそうな気がするので自分で言うしかなかった。

 大したことないギフトや出来損ないと呼ばれていることに怒ったり、王都を出たあとからおお祖父ちゃんに会うまでの簡単な流れを話すと、よくここまで来てくれたとか、よく頑張ったと褒めてくれたり、喜んでくれたりと、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんは色んな感情を見せてくれた。


 俺だけではない。

 アイスラが居たからこそ――ここまで来ることができたので、アイスラについても話すと、「さすがパワード伯爵……おっと、もう伯爵ではなかったな! パワード家のメイドだ!」とお祖父ちゃんが言い、「いいメイドだね」とお祖母ちゃんもアイスラを褒める。

 当のアイスラは珍しく顔を少し赤くして、「この方々に褒められるのとさすがに……」と照れつつも喜んでいた。


 あと、母上からの手紙も読ませてもらう。

 父上と兄上の現状について知るためである。

 だから、証明のためのパワード家の過去についての方が駄目でも――お祖母ちゃんの微笑みの圧力に屈した――問題ない。


 兄上の方は……大丈夫だと思う。

 このあと起こる予定の大きな戦いに、南の国で援軍を率いて現れる姿が想像できる。

 きっとそうなるだろう。

 兄上に関しては、「う~む。幼い頃からできる子であったが、ここまでとはな。パワード家は安泰だな!」、「リアンはカルーナに似て聡い子だったからね。それが今はここまでできるようになっているとは。ジオにも会えたし、リアンにも久々に会いたいね」と、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんは褒めちぎっている。

 俺も嬉しい。


 ただ、父上の方は……大丈夫だろうか?

 未だ収容所の中のようだ。

 でもまあ――。


「オールのことなら心配要らないぞ! そう簡単にやられはしないだろうし、こういう時になんだかんだと間に合わせるからな!」


「私たちの子だからね。『間に合ったか?』とか言って、なんでもないように現れるよ」


 お祖父ちゃんとお祖母ちゃんは心配していないようだし、俺も同意見である。

 そうして、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんと雑談を交えて親睦を深めていると、コンフォードさまとウェルナさまが戻ってきた。

 その開口一番は――。


「あー……なんか私も孫に会いたくなってきた」


「私も、成長した孫にそろそろ会いたいわ」


 だった。


     ―――


 エルフ側からの許可がもらえたそうなので、コンフォードさまから――お祖父ちゃんとお祖母ちゃん、ウェルナさまも加えて――「時期が悪い」というのがどういうことなのかの説明を聞く。

 ………………。

 ………………。

 少し長い説明だったので、要点を纏めると――。


 ある日、エルフの国・エルフィニティは、「魔の領域」にある山のどこかに住み着いたアイスドラゴンに攻められる。

 エルフたちは、まず会話を試みた。

 なんでも、長い時を生きた竜は言葉を交わすことができて、会話による解決が可能だそうだ。

 しかし、アイスドラゴンに言葉は通じなかった。

 年若い竜であると判断して、エルフの国・エルフィニティに攻めてきたのは、縄張りを広げることか、もしく力を付けるために世界樹が付ける実を欲してではないか、とエルフ側は推測する。

 世界樹の実の効果は凄まじそうだな、と思うが、別に欲しいとも思わないので気にしないことにした。


 ともかく、エルフの国・エルフィニティとアイスドラゴンの戦いが始まったのだが、年若いとはいえ相手は竜であり、またその中でも強い方だったようで、苦戦を強いられる。

 このままでは敗色濃厚であったため、コンフォードさまに助力を願い出て、コンフォードさまは応じ、ウェルナさま、お祖父ちゃん、お祖母ちゃんを連れてここに来た。

 そして、協力して戦ったが――大きな傷を与えはしたが倒し切れずに逃がしてしまう。

 というのも、エルフ側の被害もそうだが、当時のエルフ側の中心となっていたエルフが、アイスドラゴンによって氷漬けにされたことの影響が大きかったらしい。


 そして、月日は流れ――戦いの傷が多少は癒えたが、それは向こうも同じことだった。

 少し前にアイスドラゴンが巣としている洞窟を発見して、そこで傷が癒えそうな状態であることを確認したらしく、近々再び攻めてくる可能性が高いそうだ。

 しかし、前の戦いの傷は完全には癒えておらず、中心となったエルフは未だ氷漬けのまま、とエルフの国・エルフィニティの状況は万全ではない。


 つまり、アイスドラゴンがいつ攻めてくるかわからないため、そのような状況のエルフの国・エルフィニティから離れる訳にもいかず、「時期が悪い」ということのようだ。

 ……ということは、そのアイスドラゴンさえどうにかすれば、ルルム王国に戻ることができる、ということか。

作者「エルフの国・エルフィニティは一体どこにあるんだ……これだけ探してもないとなると……まさか、あの山の向こうとか………………Really?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ