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お祖母ちゃんと先々代の王夫婦

 大きな屋敷の門前に居た、お祖父ちゃんと同年代と思われる男性一人と女性二人。


 一人は、長く、輝く白髪に、皺が見えても美しい顔立ちで、一目で非常に品質が高いとわかるローブを身に纏った、輝く宝石が先端に付いているロッドを持つ、六十代くらいの女性。


 一人は、白髪で、綺麗に整え蓄えられた白髭が目立つ精悍な顔付きに、軽装の上からでもわかる鍛えられた体付きの、腰から二本の剣を提げている、六十代くらいの男性。


 一人は、純白の白髪で、こちらも年齢を感じさせない綺麗な顔立ちに、高位聖職者――それこそ教皇が身に付けるような法衣を見に纏い、杖を持つ、六十代くらいの女性。


 多分、この三人が――と思っていると、お祖父ちゃんが三人に向けて手を振る。


「おお! 出迎えご苦労! というか、お前たちがワシを出迎えるなんて初めてではないか? どうした? ワシが居なくて寂しかったのか?」


「馬鹿なことを言うんじゃないよ!」


「お前なあ、何日も空けていたとかならまだしも、まだ一日も経っていないのに、出迎えも何もないだろうが。ここで待っていたのは、見知らぬ気配を感じ取ったからだ。パワード伯爵家の血縁者が現れたというからな。まあ、結果は聞くまでもなさそうだが」


「ふふふ。相変わらず、イクシーは面白いことを言うわね。あなたに興味はないわ。興味があるのは――」


 門前に居る三人の視線が、俺とアイスラに向けられる。

 どちらが孫なのだろうか? それとも、どちらも孫なのだろうか? と思っている――いや、俺の方に固定されたな。

 アイスラがメイドだから、というよりは、俺が誰かに似ていて、その誰かを思い出しているような、そんな感じだ。


「なんだ。違うのか。ああ、そうそう。もうパワード伯爵家は伯爵家ではなくなったみたいだぞ」


「は? なんだって?」


「どういうことだ? 伯爵家ではないとは?」


「とうとうボケたの?」


 お祖父ちゃんの言葉に、門前の三人が俺から視線を外して反応する。

 それを話す前に、ララが口を開く。


「その辺りの話は屋敷の中でしてくれ。私たちは一旦長に報告してくる」


「おお! そうだな! こんな往来がある場でする話ではない!」


「それもそうだね。中に入りな。歓迎するよ」


「すまんな、ララ殿。聞いた話は纏めて、必要な部分はあとで長に報告に向かわせてもらう」


「ここまで連れて来てくれてありがとうね」


 ララたちが去ろうとしたので、俺も一声かけておく。


「案内、ありがとう!」


「気にするな」


 ララたちを見送ったあと、お祖父ちゃんに促されるまま、大きな屋敷の中へと入る。


     ―――


 大きな屋敷の中に入り、案内された先は応接室のような造りの部屋だった。

 ただ、貴族家の応接室と違って調度品の類は一切置かれておらず、話し合いができれば十分だと、絨毯が敷かれ、テーブルやソファが置かれている程度である。


「すまないね。普段から客が来ないというか、こちらから出向くばかりでね」


「大きな屋敷ではあるが、私たちにとっては休む場所でしかなく、使っていない部屋ばかりなのだ」


「好きに座っていいわ。ここで礼儀云々を細かく言う人は居ないから」


 三人がそう説明してくれる。

 口にした通り、ここは本当に休むだけというか、寝るためだけに使っていて、それ以外は最低限しか整えていない状況なのだろう。

 お祖父ちゃんたちがソファに腰を下ろしたあと、俺はテーブルを挟んで対面するような位置にあるソファに腰を下ろす。

 アイスラは俺の後方に控えた。


「さて、まずは名乗りからかね。そこのはもう名乗っているだろうから、私から――『シーリス・パワード』だよ。祖母になるね。お祖母ちゃんでいいよ」


 ロッドを持っている方が、お祖母ちゃんのようだ。

 わかった。お祖母ちゃんと呼ぼう。


「次は私だな。『コンフォード・メイン・ルルム』だ。ルルム王国の先代王になる。ああ、先代王だからと気を遣わなくて構わないからな。コンフォードでいい。既に王ではないし、堅苦しいのは面倒だからな」


 男性は、やはり先々代の王さまだった。

 わかった。コンフォード――さまと呼ぼう。

 さすがにそのままは無理。


「最後は私ね。『ウェルナ・メイン・ルルム』よ。コンフォードの妻。私ももう王妃ではないから、親戚のおばちゃん感覚で接して仲良くしてくれると嬉しいわ」


 杖を持つ女性が、先々代の王妃さまである。

 ウェルナさまと呼ぶことにするが、親戚のおばちゃん感覚は……さすがに無理なのでは?

 ご希望なら頑張るが。


 まあ、何にしても、コンフォードさまが先代王と名乗ったのは、ルルム王国の現状を知らないからだろう。

 先にその辺りの理解をしてもらった方が話は早いと思うので、俺が話をする前に母上からの手紙を読んでもらうことにする。


「ジオ・パワードです。色々と話したいことはありますが、まずは母上から手紙を読んで頂ければ、どうして自分がここに居るのかわかると思います」


「そうだな。ジオから話はあとにした方がいい。まずはカルーナからの手紙を読んだ方が早いだろう。そのあと、ジオの話を聞くとしよう」


 そう言って、お祖父ちゃんが母上からの手紙を渡す。


「あっ、コンフォードとウェルナに渡すのはあとの方のヤツにしてくれよ。最初の方のはこれがカルーナからの手紙だと証明するための、ワシらやオールについての話だからな」


「……ああ、はいはい。あのあんたがやらかした話や、鼻の下を伸ばした女のこととかね」


「なっ! ジオの前で何を言う! ジオよ! そんなことはないからな! 厳粛厳格なお祖父ちゃんだからな、ワシは!」


「その辺りの話なら私も知っているから、読んでも問題ないのでは?」


「どの子のこと?」


 とりあえず、仲の良さは伝わった。

 あと、ウェルナさまの発言が事実なら、複数人居ることになるが……。

 お祖父ちゃんにはなんとも言えずに苦笑を返して、母上からの手紙を読んでもらう間、大人しく待つ。

 アイスラも大人しくしているな、と目を向けるとアイスラと目が合い――何故か一つ頷かれた。

 どういうことだ? と思っていると、アイスラが一礼して収納魔法の中からカートとトレイを取り出し、軽食付き紅茶セットの準備を始める。


 ……いやいや、頼んでいないのだが。もちろん、あった方がいいな、とは思う。けれど、今は間が悪いというか、こう、視界の端で動いているものというのは案外目に付くというか、集中を途切れさせるし、意識を向けてしまうものだ。

 手紙を読む邪魔になるのでは? それに、収納魔法を見せていいのだろうか? と思う。

 ……まあ、お祖父ちゃんたちなら問題ないだろうけれど。

 そんなお祖父ちゃんは、「……ほぅ」と関心を示していた。

 大丈夫そうだ。

 お祖母ちゃん、コンフォードさま、ウェルナさまも紅茶の香りでアイスラが淹れていることに気付いたようだが、特に気にした様子はない。

 寧ろ、アイスラの淹れた紅茶を口にすると、お祖父ちゃんたちは絶賛して、場の雰囲気が和らいだ気がする。

 そうか。アイスラはこうなるとわかっていて淹れたのか。

 さすがアイスラである。


 ほどなくして、お祖母ちゃん、コンフォードさま、ウェルナさまが手紙を読み終えたようだ。


「………………はあ。面倒なことになっているね」


「………………あいつは、まったく……何をやって……王になりたいのならなりたいと、私が王の時に言えばいいものを」


「………………やっぱり、潰せる時に潰しておけば良かったかしら」


 ウェルナさまの発言に若干の恐怖を覚えつつ、三人共がなんとも言えない表情を浮かべてお祖父ちゃんに視線を向けると――。


「カルーナが私たちに嘘を吐く訳はないから、これは真実だろうね。だけど、これは……どうしたものか」


「何にしても、今は時期が悪い」


「せめて一年前だったら」


 難色を示した。

 お祖父ちゃんも、やはりそうか、という表情を浮かべる。

 どうやら、お祖父ちゃんたちの方にも何かあるようだ。

作者「………………」

エルフの国・エルフィニティを目指して森の中を進行中。

作者「………………こっちか?」

迷走中。

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