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血筋です

 ………………。

 ………………。

 少しの間、身動き一つせずに棒立ちになる。

 視界一杯に光るのなら光ると、先に言っておいて欲しかった。

 視界が戻るまで少し待つ。


「……ああ~、すまんすまん。先に光ると言っておくべきだったな」


 お祖父ちゃんの声が聞こえる。

 俺の状況を察したようだ。


「安心してください、ジオさま。私も同じですから」


 アイスラがそう言ってくる。

 ………………本当だろうか?

 ギフトありならそう簡単には負けないが、ギフトなしなら俺よりもアイスラの方が強い。

 素の身体能力の時点で負けている。

 アイスラなら、光ると知らなくとも超反応で目を瞑ることができていた――としても不思議ではないのだ。


「……実際は?」


「………………」


 返事がない。どうやら、ただの気遣いだったようだ。

 気遣ってくれるのは嬉しいが、今は俺待ちという状況がいたたまれない。

 しかし、視界不良で動くこともできないため、視界が回復するまで恥辱を耐えた。


     ―――


 世界は輝いている。

 ……いや、これだとまだ視界不良だと捉えられてもおかしくないので――世界は綺麗だ!


 視界が戻って最初に見たのは、不思議な力を感じる一本の木。

 ただ、先ほど見た木とは違う木な気がする。

 それに、周囲が木々に囲まれているのは同じだが、一本の木の周囲以外の地面には石畳が敷かれ、さらに奥へと一本の道が続いている。


「……ここが?」


「まだ入口だけどね。ようこそ、エルフの国――『エルフィニティ』へ」


 ポニテエルフが笑みを浮かべながら、そう言ってきた。

 脇を木々が埋めている、奥へと続く石畳の道を進みながら、ポニテエルフから軽く説明を受ける――その前に。


「そういえば、まだ名乗っていなかったわ。『ララ』よ。よろしく」


「あっ、うん。ジオ・パワードだ。よろしく」


「今の『あっ』はなんだ? まさか、お前も私のことを『ポニテエルフ』と呼んでいたのではないだろうな?」


「え? いや、ん? え? お前『も』?」


 ポニテエルフ――改め、ララが半眼で指し示した方へ視線を向けるとお祖父ちゃんが居た。


「イクシーさまも、最初は私のことをポニテエルフと呼んでいたのよ」


「ぬはははははっ! そうだったな! ジオもとなれば、これは血筋だな!」


「血筋かな」


 お祖父ちゃんと通じ合った気がする。


「……あとでシーリスさまに報告しておくから」


「すまんかった! シーリスには何卒!」


 お祖父ちゃんがララに黙っていて欲しいと頼んでいる。

 なんというか、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんの力関係がどうなっているのかを垣間見た気がする。

 父上も母上には頭が上がらないようなので、血筋だな、と思った。

 ………………まさか、将来俺も?

 まだ見ぬ未来のことは忘れて、ララから説明を聞く。


 最初に、「転移樹」について、もう少し詳しく教えられた。

「転移樹」から、別の場所にある「転移樹」へと飛ぶことができるそうで、これはエルフにしか使えない――ただし、エルフ全体ではなく一部エルフのみらしい――ので、人が容易にここに来ることができないというのは、いい移動手段だと思う。


 それで、この石畳が敷かれた道を進んでいった先にある場所――エルフの国・エルフィニティについてだが、ここは国といってもその規模というか国土? はここだけで、他にはなく、住民も大半がエルフで、ごく僅かに獣人が居て、人族は三人だけ。

 お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、先々代の王さまだけ、ということだ。

 国としているのは、里ではなく国と言っておく方が強く聞こえるから、らしい。


「エルフは狙われるからな。わかりやすい強さの誇示が必要なのだ。里ではなく国としておけば、相手は勝手に規模を大きく捉えるからな。こういうのも、安全上では大事なのだ」


 お祖父ちゃんがそう付け加えて、守る上で有効なら俺だってそうするな、と思う。


 そうして話を聞いている内に、石畳が敷かれた道の先に辿り着く。

 広がる町並みは、これまで見てきた町並みと遜色はなかった。

 一瞬、大きな木をくり抜いて、とかが頭を過ぎったが、そんなことはなく普通の……いや、王都くらいには発展している町並みだ。

 ただ、目に見えて他の都や町にはないものが一つあった。

 この国の中心と思われる場所に、巨大な樹があるのだ。

 どれだけ巨大かというと、幹の横だけで建物数軒分はあり、高さは天辺が見えないほどである。


 天辺が見えないのに見上げてしまうのは、何故だろうか。

 見れば、アイスラも同じように見上げていた。


「あれは『世界樹』。私たちエルフにとって、共に生きていく、とても大切な樹だ」


 ララがそう説明してくれる。

 そこで、ふと思う。

 ヘルーデンから、こんな大きな樹は少しも見えなかったのは、どういうことだろうか?

 これだけ大きな樹があるのなら、一つの目印となって話題の一つにも挙がるはずだ。

 なのに、これまで聞いたことは一度もない。

 どういうことだろうと不思議に思ってララに尋ねると、なんでもないように答えが返ってきた。


「ああ、それは、見せないように結界を張っているのもそうだけど、そもそもはここがそちらからすれば山向こうにあるからよ」


「……ん? 山向こうとは? どういうことだ?」


「えっと、ルルム王国から先ほどまで居た森の方を見ると、その奥に高い山が見えているけれど、ここはその山を越えた先にある大きな森の中なのよ。『転移樹』で山を越えた、と言った方がいいかしら?」


 なるほど。ルルム王国から「魔の領域」を越えた先に見える山は、標高が雲よりも高い山だ。

 それは確かに山向こうなんて普通は見えないな。

 納得して、ララが「こちらだ」と案内してくれるままに付いていく。

 世界樹があって、見かける人はエルフばかり、時に獣人、ということ以外、本当に町中を歩いているだけだ。

 俺からすればそれだけでしかないが、向こうからすると人族――お祖父ちゃんたち以外は本当に珍しいのだろう。

 町中のエルフたちから好奇の視線が向けられる。

 いや、好奇だけではなく、畏怖のような視線も感じられた。

 ララの妹かはわからないが、あの時助けたエルフの少女のような反応はないが、人族に対して思うところがあるのは間違いないと思う。


 そんな視線の中を進んでいき、案内された先にあったのは町中にある大きな屋敷で、その門前に、お祖父ちゃんと同年代と思われる男性一人、女性二人が待ち構えていた。

作者「自分だけ取り残されてしまった……どうして『転移樹』から弾かれてしまったのか……ジオくんたち、どこに………………そうだ。探しに行こう! エルフの国・エルフィニティを! エルフの国・エルフィニティはきっとある! ロマンを追い求めて! 出発だ! ……いや、まずは準備からだな。おやつも忘れないようにしないと」

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