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未来ドロップス  作者: 玉乃野 詩
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9 小池交番

 週末の土曜日は雨だった。

 特に予定もないし、たまに行くヨガスタジオも今日は行く気になれない。

 今日はダラダラ過ごそうかなと思った矢先、インターフォンが鳴った。


 宅配便以外でほとんど鳴らないインターフォンなので、また山下さんかなと思いながらモニターを見ると、下の玄関にいる制服姿の守谷が映った。

 梨香子は慌てて応答する。


「はい!こんにちは。」


「中島さん、お休みのところすみません。今日お時間があったら先日の交番にお立ち寄りいただけませんか?ひったくりの犯人が捕まりまして、バックが見つかったようなので、小池交番に送ってもらう手続きのために中島さんの依頼書が必要でして。あ、詳しくはその時にお話ししますので、午後にでも印鑑を持ってお越しください!」


「はい。わかりました。じゃぁ、午後に伺います」


「2時ごろなら俺居ますんで。お待ちしてます。」


 梨香子は画面が暗くなってから苦笑いを浮かべた。

(ってことは、2時に来て欲しいってことかな?)


 特に用事もなかったので、梨香子はちょうど2時ごろ交番に着くように家を出た。

 ちょうどタイミング悪く、雨足は強くなってきていて、坂道を下るともうすぐ交番というところで、梨香子は足を滑らせて尻もちをついた。


 幸いな事に周りに人影はなかったが、なんだか恥ずかしくて、必死に急いで立ち上がったが、背中までびっしょりになってしまった。


 お尻の痛みと闘いながらゆっくり歩き、交番に着くと、雨だというのに太陽かと見間違うようなあの爽やかな笑顔で、守谷が出迎えてくれた。

 しかし、すぐに梨香子の異変に気がつくと駆け寄って来た。


「どうしました?大丈夫ですか?」


「ちょっとそこで転びまして。お恥ずかしい。」


「えっ?痛いところは無いですか?ちょっとこちらに座ってお待ち下さい!」


 守谷は奥からバスタオルを持ってきて、梨香子を後ろから包み込んだ。

 そしてそのまま梨香子の肩を掴んで立たせるともう一枚のタオルを敷き、またゆっくり座らせたのだった。


(バックハグされたかと思った!)


 ドキドキしながら身を固くしている梨香子を、守谷は少女を見るような目で見て、クスッと笑った。

 ちょうど梨香子の聞こえづらい方の耳元だったので、伝わらなかったのだが、確かに「可愛いな」と言葉にしたのだった。


 その様子を見ていた先輩お巡りさんの佐藤が、微笑ましそうに笑った。


「おい!守谷!公私混同はいかんぞ。ところでその娘がこの間話してた娘か?」


「ちょっ!ちょっと、先輩!」


 守谷は梨香子に見えないようにシィーっとジェスチャーをして、いそいそと書類の準備を始めた。


ーーーーーーーー


※「小池交番」はフィクションです。長原に実在するのは小池派出所で、人物や勤務形態なども全てフィクションとなります。


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