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腐界の王  作者: おでん
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腐界に降りた聖女の異類婚姻譚

昔、まだ世界は竜が支配していた時代。

竜と火の力で形成された大陸に、1つの竜が倒れた。

骸から流れる血液は海を作り、朽ちた鱗は大地を豊かにした。


海からは竜の血を引いた眷属が生まれ、そして眷属である生物たちには心が生まれた。

心あれば闇もある。生きる為だけでない優しさや思いやり、そして憎しみ。生き物が増えるほど世界は光に包まれたが、その反面闇は膨れ上がって行った。


やがて竜は死に絶えてゆき、新たなる時代へと骸を残した。その後に竜の骸から生まれた大地は、人間という生物を生み出す。人間はかつて竜の血から生まれた海の眷属の子孫なので、人はみな竜の子孫だと言うのが「竜子説」である。







「では、それぞれ竜子説に関しての意見はあるか?もう講義の時間も少ないので、後は質問を受け付けよう。」


ユ先生は生徒に朗読していた教科書を机上に置くと、視線を此方へやった。正直意見も何もないので、目を合わせないようにそっと教科書に視線を落とした。


そうすれば暫くの沈黙の後、女が声を上げた。

この学園で1番の秀才、リリアスである。勿論僕はそちらへ目をやる。魔術も、勉学も、剣術も全ての才能を兼ね揃えて生まれてきた彼女は容姿も良い。

僕とは違って何もかもを持って生まれてきた彼女に嫉妬を覚えるが、それよりもたわわに実った果実ふたつに目が奪われる。

唯一勝てると思った体躯さへ、彼女の家系はエリート巨乳一族のデモニアス家の生まれだ。叶うはずがない。


溜息をつきながら、彼女とユ先生の会話を聞き流した。















ーーー聖都エムロード 法皇の謁見室にて


「さて、話は聞かせてもらったよ。腐界についてだろう?」


煌びやかな装飾が施された椅子にドンと座り、金色の髪の毛を触りながら若い男は言った。

余裕そうな顔付きはすぐにでもこの場を終わらせたいのだろう、面倒臭さが見て取れた。


若い男の目の前には跪いた老父がおり、服装こそ豪華ではあり、彼もまた貴族かなにかなのだろう。

しかしそのオドオドした様子から困惑が感じられた。


「法皇様、もう結界の密度も劣化し都の端々では瘴気に呑まれて疫病も確認されております。

前々からお願いしていた結界の強化、それから瘴気の原因の究明を行わなければあと半年足らずでここまで瘴気は至る事でしょう。」


「…不愉快だな。それに関してはもうあと2週後に《聖救援隊》を送る手筈だ。まだ何かを求めるのか。そもそもここの区域には瘴気などの穢らわしいものも寄ってこない。私の法力さえあればな。」


老父は言葉を失い、そしてか細い声で答えた。

周囲の兵士は微塵も動くことはなくその場にたち続けているが、その目線は全て老父に向けられていた。

説明せずともわかるが、老父が変な気でも起こせば法皇の身が危ないからである。


「…聖救援隊は、瘴気を薄くするどころか送った後には帰ってすら来ません。」


「役不足だと?ではお前が行けばいい。」


「娘が参加するのです。どうかお慈悲を頂けませぬか、法皇様。」


震えた声で土下座をする老父を睨みつけて無様だな。と罵った後に、法皇は言い放った。


「お前の娘が帰ってこなかろうが、瘴気現象の役に立てるのなら娘も本望だろう。」


連れていけ。と兵士に命じ、嫌がる老父を尻目に法皇は「今日の謁見は終いだ。女を呼べ。」と傍らに立っていたメイドに伝える。メイドは無表情のまま姿を消した。





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