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第6話 会食

(異世界2日目)


 翌日、お昼を王さまたちと食べる予定になってると説明された。

シンプルなドレスを着せられてさやかちゃんとふたりでメイドのアンさんに連れられてお城の食堂へ。


席に着く前に王妃さまを紹介してもらった。

最初に紹介されたのは第一王妃のレティシア様。

エリスワース王子のお母様で、金髪のストレートの長い髪のすごく華奢で美しい方だった。


第二王妃はテレーゼ様。

今日は体調不良で食事は一緒にできないけど、挨拶だけしにきてくれた。

テレーゼ様はレティシア様とはタイプが全然逆で、テレーゼ様はどちらかというとぽっちゃりで優しい雰囲気な方だった。

たぶんレティシア様よりも若い。

あと、第二王妃には姫が二人いるらしい。


つまりライアン王子は第三王妃様の子ってことかな?

王妃の順位も王位継承権に影響するのかもしれない。

あとでメイドさんに聞いてみよう。


私たちと挨拶が終わり、退出しようとした第2王妃テレーゼさまに、第一王妃レティシア様が「体調はどうかしら?」と尋ねた。

レティシア様の頭上の矢印がぶわっと黒く染まった。

煙ったような黒さ、これはこわい。

人の悪意をそのまま色で表現したようだ。


これはテレーゼ様に対する感情なの?っと思っただけで、矢印がぐいっと指し示す位置を変えてテレーゼ様を指し示した。

おぉう?! 万能か?!

指し示す人物を変えられるらしい!

そして、テレーゼ様を指した矢印はさっきよりもさらに黒かった。


テレーゼ様の頭上の矢印もレティシア様に向けてみるとグレーに近かったけど黒かった。

テレーゼ様の矢印は私に戻すと色が抜けてすっと白に変化した。

この王妃の二人は仲が良くないらしい。

そもそも一人の王さまに複数の王妃が居ると仲良くはできないのかもな。

レティシア様の矢印は私に戻しても黒いまま。

これは私がレティシア様に嫌われているというか、私を指す矢印はその人の気分のようなものも反映されてしまうらしい……多分ね。

ほとんど話してないのにこんなに嫌われてたらやだな。

にこやかに微笑む美しいレティシア様が、見た目にはわからないけどかなり不機嫌なのがこわかった。


そのあと、メイドに案内されて席に着いた。

座席は、窓を背に王様、エリスワース王子、ライアン王子が並んで座った。王さまの向かい側にレティシア王妃、エリスワース王子の前にさやかちゃん、ライアン王子の前に私が座っている。

この部屋のテーブルはかなり長くて、現状で半分も使っていない。普段、王族みんなでご飯を食べる部屋なのかな?

今日は体調不良のテレーゼ様とテレーゼ様の二人の姫がいない状態だけど。


お昼はメインがお肉で、あと堅めのパンとスープとサラダ。

量は多めだけど、フレンチに近い。

世界が違うとはおもえないほど食事に違和感はない。

だけど問題はお肉。

この国の食肉はほとんど魔物らしい。

さやかちゃんは想像することもできない魔物を口にすることに抵抗があると部屋でご飯を食べた時に言っていた。

部屋で出されたごはんは昨日も朝も結局あまり食べれてなかった。

今は周りに気を遣ってか食べているようだ。


私はすぐに魔物の名前を聞くのも考えるのもやめたちゃった。

どんな魔物なんだろう? とか、気にしたら気になって食べれなくなるから駄目だと思う。

今日のお肉はシンプルに焼いて、デミ系ソースが掛かってる。

味はね、ブタでも鶏でも牛でもないんだけどお肉なんだよ。

今日のメインは魚と鶏の中間のような味。

脂が少なめで淡白で口に入れるとホロホロ崩れて美味しい。

不思議な食感だけど、美味しければなんでもいい。

美味しいは正義。

美味しくて幸せと思いながら食べてたら、視界にキラキラが。

また目の前に座っているライアン王子の矢印がピンクでキラキラしてる。

目の前にいる私には意識を払ってなさそうだったので、私は食べながら思わず目の前に居るライアン王子をじっくり観察した。


今日も騎士団の制服を着ていてかっこいい。

短めに刈った黒い髪、顔は精悍でアイスブルーの目が鋭い。

兄弟なのに隣の弟のエリスワース王子とはあまり似ていない。

エリスワース王子は華やかで優しい顔なのだ。

ライアン王子はまったくしゃべらないし、見た目がかなり……やっぱり悪役騎士っぽいのだ。

表情が緩んで、笑ったりすると多分すごくモテそうなんだけどな……。

金髪で華やかな表情のエリスワース王子と並んでいると……かなり残念な感じに。

矢印は幸せそうなのに顔がこわい。


王さまが食事をしながら今日話をした内容は、まずはこの国を好きになってもらいたいと言ってた。

あと、この国を知って欲しいので、明日から座学で常識の勉強をするんだって。

先生をつけてくれるそう。

国を好きになること、知ること、あとは魔物と戦う訓練を少しずつはじめたいと。


明日から勉強かぁ。

いちおう私も一緒に授業を受けるらしい。

鍛えたら私も強くなるかな~?

目標はワンパンチでオーバーキルされないこと! 頑張ろう。


あとレティシア様が爆弾宣言した。

「聖女のさやかさんには王妃になって欲しいの。年も同じだしエリスワースの第一王妃に是非」

押しの強い美しい笑顔がこわい。

私は15才で結婚とか考えたことがない。

さやかちゃんも多分そうだと思う。

さやかちゃんの矢印は青くなってた。

かなり返答に困っている。


その様子を見て、王さまはすぐさまレティシア様を諌めてくれた。

「聖女だからといって必ずしも王妃になる必要はない。ゆっくり考えて欲しい」

王さまはそう言った。

でもその言葉は前向きに検討してね、と言うニュアンスを含んでいた。


レティシア王妃は更に、すごく良いことを思いついたわという顔で言った。

「そうだわ。エリスワースと二人で馬車に乗って街を見てくると良いわ。王都はとても綺麗な街なの。きっとさやかさんも気に入ると思うわ」

二人で馬車で……街もエリスワース王子もきっと好きになるわっと、王妃にごり押しされているよ。

さやかちゃんはかなり困っている。

だから、空気を読まないちびっこ感全開で私はいった。

「いいな~私も街を見たいです。」

さやかちゃんが困っているからというのもあるけど、本心で街に行ってみたかった。

「そうですね。私も琴梨ちゃんと街を見てみたいです」

さやかちゃんは、『エリスワース王子と二人で』を、『私と二人で』に上書きして、レティシア王妃に返事をした。

エリスワース王子が、レティシア王妃の空気を察したらしい。

「では、明後日三人で街にでましょうか」

にこにこ笑いながら綺麗に話をまとめてくれて私はほっと息をついた。

「まぁ!それがいいわ!」

レティシア王妃も納得してくれたみたいで、エリスワース王子に似た華やかな顔をほころばせた。

三人で出かける分にはそんなにさやかちゃんも気が重くないだろう。

まだ矢印が青いさやかちゃんは心配だけど、街は楽しみだ。


しかしエリスワース王子は、お母さんにお嫁さんをごり押しされてもまったく動揺はない。

王子はお嫁さんは自分で選べないんだろうか。

エリスワース王子の顔は優しく微笑んでいたけど、矢印はずっと平常心の白だ。

もっと詳しく知りたくてエリスワース王子の矢印をあちこち向けてみたが 。

誰に向けても白かった。


ついでにライアン王子の矢印もぐるっと動かしてみた。

レティシア様にはかなり黒い。

ライアン王子とレティシア様はお互い黒いから

仲良くないようだ。

その他の人には白い。

そして私にはピンクだよ~。

これ絶対私めちゃめちゃ好かれてるよね?

ちょっとドキドキして目の前に居るライアン王子ばっかり見てしまった。

でも話をふれるような雰囲気でもないし、ライアン王子がこちらを見る事もなかった。


そんなことより、矢印を動かすとすごく疲れる。

自分を指し示す矢印はデフォルトらしく負担は無いんだけど、動かすと疲労感がすごい。

すぐもとの位置に戻っちゃうし……。

ぐったりだよ。

ずっとプールにいた後みたいな疲労感。

これは多用してはダメだ。

あとでお昼寝しよう。


あと今さらだけど、このスキルは人の心を盗み見してるみたいであまりよくないかも。

できるだけ矢印を見ないようにしよう。

このスキルの事はさやかちゃんにも言えないなぁ……。


部屋に戻ってから、メイドのアンさんに聞いてみた。

「第一王妃と第二王妃はあまり仲が良くないのかな?」

「テレーゼ様は今妊娠中ですから……」

アンさんは表情を曇らせた。

体調が悪いというのはそういうことらしい。

つまり……。

「もしかして、王子が生まれるかも?その場合は王位継承権はどうなるの?」

「どうでしょうね?」

アンさんは曖昧に相づちを打って作業にもどってしまった。

あっさり行ってしまったから、ライアン王子のお母様について聞けなかった。

がっくり。


自分のベッドでだらっとしてると、さやかちゃんが

「疲れたね」

と、苦笑しながらベッドサイドに座った。

「一緒にお昼寝する?」

私が自分の上にのっている上掛けの布団を軽くまくって、かっこよくお昼寝に誘った。

さやかちゃんはふふふと笑って、隣に潜りこんだ。

しばらくはおしゃべりをして……しゃべりながら寝てしまったみたい。ぐー。

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