第39話 残した物
俺はセレナと『人間の国』を見て回った。
俺が引いた『魔物の森』と『人間の国』を分けた結界線は千年経った今もまだそこにあった。
俺はただ人間も魔物も不要に争わず、住み分ければよいと思ったのだ。
なのに結界線は国同士の争いの種になり、俺は結界線を引いた事を後悔した。
愚かな事をしたのだとあの時嘆いた。
だが、今は『昔に自分が望んだ通りの意味の結界線』がそこにあった。
スライシアの国の人間は『魔物の森』には入れないのだそうだ。
俺は結界線の目印に、結界線の真下にミュラーという珍しい花を蒔いた。
葉っぱがハート型でわかりやすいと思ったのだが、千年で気候が多少変わったらしい。
ミュラーの花で作った結界線の目印は今はもうなく、変わりに人間が築いた壁がどこまでも続いている。
結界線はなくてはならないものとして、国にも人にも大切にされていた。
あと、勇者を召喚する魔方陣のバグはこっそり直しておいた。
転送を起動してから実行までのタイムラグだ。
召喚の条件は『ここではない何処かに行きたいと対象者が強く願う事』。
制限は『この世界には異世界からの召喚者は一人しか存在できない』だ。
セレナの息子の嫁の琴梨が召喚者だと聞いたとき、俺は魔方陣が経年劣化で壊れたのかと思った。
実際はただのタイムラグ……。
召喚の起動時に、『対象者に誰も触れていないこと』という条件文が入っている。
だから巻き込まれるなんてないはずなのだ。
だが、起動と実行の間に対象者が誰かに触ると連れてきてしまうのだ。
セレナに琴梨を元の世界に戻したいと言ったら。
息子も一緒にと言われた。
……無理。




