第36話 復活祭
(異世界召喚から一年)
「セレナを私の妻に下さい! 私は国王からも今度こそセレナを守ります!」
リッカさんは立ち上がって叫んだ。
今度こそ??
その勢いにグラディスさんもロシエルさんも、うなずいた。
「まぁ、確かにセレナはもう死んだ事になってるから国王も追いかけたりはしないだろう。テレーゼ第二王妃にも、王子がうまれたんだ。しかも、ライアンはもう王族から籍を抜いたし、この街で暮らさないなら気にしなくて大丈夫だ。もってけ」
グラディスさんがにやりと笑った。
クロエお義母さんもうなずいた。
そして、セレナさんを抱きしめて言った。
「たまにはこっそり帰っておいで」
「……リッカの国はすごくすごく遠いの……多分もう戻って来れないよ。ごめんね。ライアンもごめん」
セレナさんは泣き出した。
リッカさんはもう一度椅子にすわった。
「年一回は帰って来よう。ドラゴンが倒された、今日の日に。毎年帰ってこよう?」
わぁ……ドラゴン記念日だよ!
異世界な記念日きたよ。
「リッカ! いいの? 私ここに帰ってきていいの?!」
セレナさんは喜んでリッカさんに抱きついた。
リッカさんはうなずいた。
年一回でこんなに喜ぶと言うことは……本当にかなり遠くの街に行くらしい。
「それで、リッカさん?……」
セレナお義母さんが呼び掛けるとセレナさんが訂正した。
「あ、本当の名前はリッカルドなの! 私が略して呼んでるけど、リッカルド」
「へぇ! リッカルド・・・面白い偶然だねぇ」
お義母さんとお義父さんさんがにやりと笑った。
「リッカルドは創世の大賢者の名前が由来なんだろ? セレナは大賢者の妻の名前から名付けたんだよ!」
クロエお義母さんが、がははと笑った。
「えっ!? あの創世記って悲恋じゃないですか?」
私はびっくりして言った。
城の図書館で読んだ創世記は、大賢者が妻の亡骸を抱いて森に消えていくのだ。
セレナさんは首をかしげた。
「そうだっけ?」
セレナさん王妃だったはずなんだけど、なぜか創世記を知らないらしい……この国の創世記なんだけどなぁ。
しかも、自分の名前の由来だよ?
「まぁ、悲恋なんだけど……リッカルドの奥さんのセレナはガンダルンの妻だから強い人なんだ」
ライアンが言った。
「そうだよ、国王に捕まったリッカルドの奥さんはリッカルドを想って自ら命をたってしまうんだ。だから強くて気高い妻になるようにガンダルンではセレナと名付ける親が多いんだ。
今世ではセレナが幸せになりますようにと願いながらね」
今度はリッカルドさんがなぜか泣き出した。
セレナさんがリッカルドさんに言った。
「今世で幸せになる為に生まれかわったんだよ! 私が! だから幸せになろうね! リッカ!」
セレナさんは泣いてしまったリッカルドさんをぎゅっと抱きしめた。
今見ると、リッカさんの矢印は幸せなピンク色に染まっていた。
「来週は大賢者の復活祭だしな。お前らも幸せになればいいよ」
ロシエル副団長がうなずいた。
大賢者の復活祭は、あとでやってしまったことに後悔したガンダルン国王が、争いをやめて大賢者に平和を誓い、謝罪と感謝を込めて行われる国を挙げてのお祭り。
ゆるしをこい、帰って来て欲しいと未だに祭りをするんだ。
つまりね、よっぽど大賢者の怒りと呪いの言葉が怖かったんだと思うよ。




