表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/41

第14話 騎士団で訓練

(異世界 五日目)


今日は朝からメイドさんが私の髪と格闘していた。

髪を降ろすとぶわっと広がるのだ。

ふたつに結わうのが一番簡単でまとまりがいいっていうことは私も経験則で知ってるんだ。

メイドさんに無理は言ってはいけない。

流石に髪を降ろす事はあきらめて、水で濡らしてポニーテールにして少し油でボリュームを抑えてもらった。

さやかちゃんに確認したら、可愛い~! そう言って頭をなでなでされた。


私は、やったわ!

完璧なる『うさぎちゃん回避』だわ!

私はご機嫌で騎士団へ向かう馬車に乗った。


今日もやっぱりエリスワース王子とライアン王子が待っていてくれて、エリスワース王子はさやかちゃんの手をとる。

ライアン王子は私の手をとると

「可愛い……」

と、口も動かさず無表情のままつぶやいた。

これはお世辞ではなくて……むしろ本人は多分発音してしまっていると気がついてない。

意識しないで言っちゃった本音だったりするだろう。

私は自分の顔がぶわわっと赤くなるのを感じた。

そして、ライアン王子の矢印はやっぱりキラキラピンクだった。

キラキラに更に可愛い! 可愛い! そう言われてる気がして居たたまれない。

今日は髪型が違うのに……どうして?

王子の手を振り切って、グランドを駆け抜けて団長室に飛び込みたい気分だ。

叫びながらダッシュしたい。

私が真っ赤になってあわあわしてるのに気がついた、イケメンスキル持ち(?)のエリスワース王子。

「今日の琴梨さんの髪型も可愛いらしいですね」

爽やかな笑顔でさらりとほめてくれて、さやかちゃんと微笑みあった。

「グラディス団長が待ってるので行きましょうか」

ライアン王子と私を促して歩きだした。

前を歩く、さやかちゃんとエリスワース王子は昨日は楽しかったと街にでた話をしているみたいだ。

私はライアン王子にふる会話を一生懸命探した。

このまま無言で歩くのも気まずい。

あわあわあわあわ。

「昨日は……エリスワース王子に連れて行ってもらってクロエさんのお店でお昼を食べましたぁ」

緊張して、最後の『た』の発音が微妙にはねあがった。恥ずかしい。

更に自分の顔が赤くなった。

「そうですか」

おぉう。会話できた!

話すと見た目の印象ほどこわくない。

無表情だけどちゃんとうなずいて相づちをうってくれた。

ライアン王子と顔を合わせると、毎回ライアン王子に抱っこされて固まってたからはじめての会話だよ。

「えーっと。ライアン王子は昨日は……どんな日でしたか?」

「私は森で訓練でした」

ライアン王子は昨日は騎士のお仕事だったようだ。

話を振ればちゃんと返事が返ってくる!

私は嬉しくて一生懸命話題を考えた。

そして、あっと思った時にはずるりと体重を掛けている方の足が砂ですべった。

うぁぁ!!

転ぶ前にライアン王子が手を引いてくれた。

「すみません。ありがとうございます」

転ぶとか恥ずかしい!!

「転ばなくて良かった」

優しい言葉をかけてもらった。

今かなりきゅんときた……。

何か猛獣とかが私にだけ懐いたみたいな……愛しさが……。

はわわわわ。


建物に入る前に、エリスワース王子が私とさやかちゃんの履いている編み上げブーツの泥汚れを魔法で飛ばしてくれた。

さやかちゃんは前回もやってもらったみたい。

えいってやると汚れだけ後方に移動するんだって。

ずるんと後ろに移動した泥が一瞬空中で止まってそのまま重力で下に落ちる。

「面白い~! すごく便利です! 私もこの魔法が使いたいです!」

私ははじめてみた魔法に興奮した。

「ガンダルンの人は誰でも使えるんですか?」

エリスワース王子に聞いた。

「残念ですが、ガンダルン民はこういう人に作用する力は使えない人が多いです。でも、琴梨さんは使えるかもしれないので、今度時間がある時に教えますよ」

「本当ですか?! 嬉しい!」

エリスワース王子優しい!

忙しいだろうに私に魔法を教えてくれるらしい。

私は魔法が使えるかもしれないことが嬉しくて、ごきげんで団長室に向かった。


団長室に入ってグラディス団長に挨拶すると、今日はすぐにみんなでグランドにでた。

だから、せっかく靴を綺麗にしてもらったのにまるで意味が無かった……。

がっくりだよ。


「聖女の訓練は初回だから念の為の人員」と、団長が説明して神官が三人と、騎士が五人一緒にぞろぞろと外に移動。

ちなみに騎士団の隣に神殿があって神官はそこに常駐しているそう。

神殿と騎士団は城の外に位置していて、一般市民が出入りすることもあるらしい。


「じゃあ。はじめるか。いつもの新人用訓練と同じだ。グランドに訓練用のゴーレムを1体だしてくる」

グラディス団長がグランドの中央まで行って、ゴーレムをだした。

ゴーレムはグラディス団長よりもかなり大きい。

「どっからあんな大きいもの出したんですか??」

驚いた私に、隣にいたエリスワース王子が答えてくれた。

「グラディス団長は運搬用のかなり大容量のマジックバッグを常時身に付けてるみたいです。大型の魔物を狩りした場合なんかもグラディス団長が回収したりすると聞きます」

体にがっちり固定されたボディバッグで私は革の鎧かと思っていた。

あれにゴーレムが入るってファンタジー過ぎる。


「ゴーレムは動作が遅いし、攻撃してはこない」

戻ってきたグラディス団長が説明してる間にもゴーレムはのそり、のそおりとグランドの中央で動いている。

確かにかなり遅い。人が歩くペースよりも、もっともっと遅かった。

でも大きい。グラディス団長より大きいから二メートル以上ある。某アニメの塗り壁の妖怪に頭と手足がブロックでついたような。正面からみるとパズルの一ピースの様な形。

厚みがあって重そう。

「もし、ゴーレムがさやかさんの方に崩れてきた時にはライアンがかばうように。あと、何発か当ててさやかさんが疲れたらライアンが倒してしまっていい」

ライアン王子がはいと返事をしてうなずいた。

攻撃はしてこないけど、人の上に倒れてきて生き埋めになることがあるらしい。


「んじゃ、さやかさんはまず利き手はぁ~右?利き手の手の平を上にして」

グラディス団長が指示をだす。

さやかちゃんが手を出すと、ライアン王子が手の平にまるっこい五センチ程の石を載っけた。

剣やロットではなく石?

何か特殊な石なんだろうか?

「まずはそれに力を載っけて投げるんだが、まず重要なのは敵であるゴーレムをしっかり認識すること。次は、壊れろとか、穴があけとか、へこめ、砕けろなんかの攻撃することをしっかりイメージする。慣れない内は声にだすといい。砕けろが言いやすいかな?」

グラディス団長の説明をさやかちゃんは真剣に聞いている。

「じゃあまずゴーレムを認識。攻撃をイメージしながら『砕けろ』と言いつつ。ゴーレムに適当に当たるように石投げて。近く行ってやってみて」

団長がすごく気軽な感じで指示をだす。


それだけ??

こないだゴーレム使うよって説明された時は何も思わなかったけど、魔力感知からはじめないってどういうこと?!

こういうのは魔力の流れを知るところからはじめるって漫画で読んだんだけど、団長はそんなレクチャーはまったくしなかった。


さやかちゃんはゴーレムに向かって歩きだしだ。

さやかちゃんの後にライアン王子。更にその後に騎士と神官がついていく。

それ以外は残った神官の張ったシールドの後で待機。

そして、ゴーレムの近くまで移動したさやかちゃんはライアン王子に何か確認をした後、『砕けろ!』と言いながらゴーレムに向けて石を投げた。

女の子の投げる玉って普通はなだらかな半円を描いて落ちる。

野球選手の様に真っ直ぐ綺麗に玉が飛ぶなんてほとんどない。

さやかちゃんが『砕けろ』と言いながら、えいっと投げたボールは何故か弓矢の様に真っ直ぐゴーレムに飛んで、爆音をあげてゴーレムの右下四分の一が消えた。

ずしゃっと泥が飛び散る重たい音がして、ゴーレムは崩れ落ちた。

ライアン王子が素早くさやかちゃんを引寄せて崩れ落ちるゴーレムの泥から庇っていた。

そして、ライアン王子以外の人間はぽかんとしていた。


ええぇぇぇ?!?!

たぶん一番びっくりしたのが、さやかちゃん。

えいって投げた小さい石で土のゴーレム直径一メートルくらい吹っ飛ばしたんだ。

「うーん? 一撃で終わったな」

グラディス団長が最初にぽかんから脱出。

「ただの小さな石でこの威力は歴代勇者の中で過去最高かもしれん。剣持たせたら災害級ドラゴン一撃だな」

首を捻りながら不穏な事を言ったよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ