008
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シロナが完治して既に七日が経っていた。
あれからはゴブリン退治ばかりを熟し、危険を冒さないようにしていた。
もちろんゴブリンとはいえ全く危険がないという訳ではない。
だから、山の麓には近付かないようにしながらゴブリンを狩り続けていた。
それでも未だにシロナのステータスは成長していなかった。
オークを倒した時、ゴブリンよりも多くの経験値を手に入れたはずなのだが、シロナのステータスに変化は見られなかった。
どうして神様はシロナに過酷な道を歩ませるのか。
ここまでしておいてシロナが報われなかったらソーマは自らの足で神様の元へ赴き、その顔面をぶん殴ってやるつもりだ。
そう思うと同時にソーマは強い焦りを覚え始めていた。ミノタウロスに襲われ、『死』を感じて以来、残された余命を更に意識するようになっていた。
何としてもシロナを成長させ、彼女の未来を護らなくてはいけない。という責任感というか使命感にも似た感情が溢れんばかりに胸を満たしている。
その為には一刻も早く、そして一体でも多くの魔獣を倒す必要がある。
ソーマはゴブリンの耳を切り落とし、革袋に仕舞い込む。
「シロナ。そっちは大丈夫だった?」
振り返るとシロナは倒したゴブリンの耳を切り終えたところだった。
「はい、マスター。大きな傷はありません」
「そうか……」
シロナの無事な姿を見て胸を撫で下ろす。
ソーマが安堵していた時だった。それは不意を突くように放たれた。
「――ッ!」
突如、森の奥から何かのひりつく視線を感じ、ソーマとシロナは慌てて首を振り返らせた。
それは殺気を孕む鋭い視線で、何の前触れも無く放たれたものだった。
しかし、いくら目を凝らそうと、その視線を放つ者の姿は見えなかった。
だが間違いなく言えるのは人間ではないということ。恐らく何らかの魔獣だろう。
ソーマとシロナは神経を研ぎ澄ませ、ジッと辺りを警戒する。
しかし、草木が風に揺られる音や、鳥や虫の鳴き声だけが聴こえるだけで魔獣らしき息や足音は聴こえてこない。
そうしている内にいつの間にか殺気を孕んだ視線は何処かへ消え失せていた。
(……今のは、何だったんだ)
無意識に息を止めていたのかソーマは大きく息を吐いて何度も深呼吸を繰り返す。
まさに息の詰まるような殺気だった。
「マスター。さっきのは何だったんでしょうか……魔獣、ですか?」
「……分からない。でも、もう何処かへ行ったみたいだ」
またミノタウロスのような強力な魔獣と出くわすのは御免だった。そんなにポンポンと出くわしていたら命が幾つあっても足りない。
緊張していた所為か嫌な汗が噴き出し、ソーマは袖で顔を拭う。
ミノタウロスに襲われた時の光景が脳裏に蘇り、心臓がバクバクと鼓動を打つ。
「とりあえず、もうだいじょ――」
兎に角ここを離れようと立ち上がった瞬間、心臓にズキリと激痛が走り突如視界が傾いた。
(……え?)
何が起きたのか分からないままソーマは倒れ、視界が真っ暗に染まった。
「―――――スター! ――――――ッ!」
(シロナが、僕を呼んでる……。早く起きなくちゃ……あれ? 体が……動かない?)
遂にはシロナの声が聴こえなくなり、意識が朦朧とし始めて頭が働かない。
(……もしかして、死ぬのか?)
(嘘、だよね……?)
(え…………こんなに呆気なく死ぬの?)
「…………シロ……ナ」
とソーマは声を振り絞るように呟いた。
そして完全に意識を失った。




