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セブンスブレイブ・オンライン ~小鬼勇者が特殊装備で強者を食らいます~  作者: 月束曇天
第五章 新星・集う勇者編

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第九十一話:デビルブリザード

「おおおおおおおッ!」


 騎士が矢を弓に番え、グググと強く引き絞る。

 俺は一度剣を腰に納め、一直線に走り出す。


『凍てつけ』


「ファスト・シールド! セカンド・シールド! サード・シールド! フォース・シールド!」


 機械のように冷たい一言から放たれた矢は、俺の展開した盾を瞬く間に凍てつかせる。

 凍った盾はバシン、バシンと音を立てながら貫かれ、俺に真っすぐ飛んでくる。


「スーッ……フーッ……!」


 深呼吸をして、腕をクロスさせて防御の体制に入る。

 アダマンタイドガードのスキル、イミテーションシールドも発動させて、俺の腕に括り付けている盾を二枚に増やす。

 フォース・シールドを貫いても、矢の勢いは衰えない。


「流星盾!」


 矢との距離が一歩分ほどになったところで、俺は流星盾を展開。

 星の集合体のような盾が氷の矢を阻み、拮抗している。


『凍てつけ』


「二射目……! クソッ!」


 騎士は矢と盾が競り合っている間に、二本目の矢を放ってきた。

 二本目の矢が流星盾を完全に凍らせて、バシンと音を立てて砕け散らせ、そのまま一本目と一緒に俺の構えていた盾に直撃する。


「クソッ……!」


 俺は一本目と二本目の矢を盾で受け流して落とす、が……三射目が来た!

 防ぐ手段もなく出せるのは精々フロート・シールドだ、これじゃあ持たない。

 フェニックス・ブレードを抜くしか――


「――やっぱり……あたしいないとダメじゃん……!」


「鈴音!?」


 俺が腰の剣に手をかけた時には眼前に迫っていた矢。

 それを止めるため、と言わんばかりに鈴音が俺の前に跳んで、俺を押しのけていた。

 グッ、と腰を落とし、右拳に力を溜めて放つ寸前。

 跳んできた直後なのに、しっかりとした構え……まるでそのままワープしたようだ。


「止める……! ハァッ!」


 パァァァン、と爆裂したような音が響くと。

 鈴音が右腕から左足までアバターの大半を凍てつかせ、拳を振りぬいた姿勢で止まっていた。

 だが、俺を元気づかせるためなのか……こんな絶体絶命な状態でもニカッと笑ってくれた。


「鈴音、お前!」


「止まらないで、リーダーっ!」


「……おう!」


 鈴音が作ってくれたチャンス……絶対無駄にはしねえ! ここで死んでデスペナルティなんて受けたら、漢じゃねえ!


「おおおおおッ!」


『舐めるな……小僧!』


 腰のフェニックス・ブレードを抜き放ち、炎の刀身を生やす。

 強く踏み込み、俺は飛び上がって騎士に思い切り力を込めて斬りかかる。


「せえっ!」


『ふんぬぁっ!』


 派手な金属音は鳴らず、ただ剣の鍔同士が擦れ合う音が鳴った。

 騎士は氷を纏わせていた弓矢をどこかへと消し、腰の剣を抜いていた。

 剣の刀身は透明で、水晶……いや、氷で出来ている。


「ぐ……!」


『ぬぅ……』


 剣の競り合い、それもこっちは炎で出来た剣だってのに、俺が押し負けている。

 フェニックス・ブレードの柄と俺自身の手が、ゆっくりと凍り始めた。


『凍てつき、砕け散るがいい』


「チッ……! んの野郎ォッ!」


 俺は騎士に向けて蹴りを放ち、競り合いの状態をどうにか避ける。

 それと同時に、フェニックス・ブレードの熱で手の氷を溶かして距離を下がる。


『魔力、放出』


「フェニックス・ドライブ・マルチ!」


 騎士がまた魔力放出を使うと、剣から大量の氷柱が放たれた。

 フェニックス・ドライブ・マルチでどうにか俺と鈴音に当たりそうなものだけは落とせた。

 が、奴の出す氷柱の数の方が俺の不死鳥たちよりも多い。


『はぁっ! ……!?』


「シールド!」


 俺はフロート・シールドを二枚展開し、挟み込むように騎士の動きを止める。

 想定外の行動とでも思ったのか、騎士は踏み込もうとした姿勢のまま動かない。

 ……少々不格好な所だが、決めるなら今しかない。


「フェニックス・スラスト!」


『ぐぅっ……』


 フェニックス・スラストは騎士の兜を貫き、頭へのクリティカルが発生。

 そしてやはり炎属性の攻撃は奴に効果絶大だったようで、HPバーはみるみる減っていく。


「バーニング・ソード!」


『ぐああああ……!』


 フロート・シールドが効果時間切れで消えたと同時に、俺は騎士を袈裟斬りにする。

 騎士は体に溶断された傷を残しながら、フラついて数歩ほど下がる。

 階段の踊り場……この地形なら、撤退されても追いかけることは容易だ。


『ぐ……はぁ……はぁ……! 侵入者よ……貴様らは私を脅かすほどの者であったか』


「……まさか」


 ピシッ、と騎士の兜にヒビが入ったと思うと、すぐにそれは砕け散った。

 騎士の素顔はそれと共に明らかになり……いつの間にか騎士の傷が凍っていた。


『我が顔を見たのならば……貴様に名を明かそう』


 全損したはずの騎士のHPバーの横には、二つの宝石のようなものが浮いていた。

 ……そのうちの一つがパキンッ、と砕け散ると騎士のHPは全快した。

 それも、HPバーが戻っていく時間が長いとなると、HPの最大値も増えているっぽいな。


『我が名は、闇の大聖堂が主に忠誠を誓いし氷の騎士・【ホワイト・デビルブリザード】である』


「デビル、ブリザード……」


 騎士のHPバーの所に、【ホワイト】と言う名前が現れた。

 ……これからは、騎士ではなくホワイトとして呼称しよう。


『剣を構えよ、侵入者よ』


「……ブレイブ・ワン、まかり通るぜ」


 相手はNPC……言葉が通じるような相手じゃあないけれど、俺も名乗らなきゃな。

 ただ、この騎士――ホワイトの動作を見ると、つい名乗りたくなってしまった。

 そして、武器を構えて真正面からやり合おうと思えるのも、必然のことだった!


『来るが良い』


「なら……遠慮なくやってやるッ! フェニックス・ドライブ!」


『【ヴォルフ・ファング】』


 炎の不死鳥に対し、氷で出来た狼の彫刻……のようなものが飛び掛かった。

 俺のフェニックス・ドライブと対になるようなスキルが、爆散した。

 氷の欠片と消えた炎が煙を巻き起こして視界を塞ぐが、ホワイトの位置はわかる。


「そこだよな!」


『はぁッ!』


 真正面から近寄って来たホワイトに向けて、横薙ぎ。

 ホワイトは剣を振り下ろしてそれを止め、またもや剣同士の競り合いに。


「ぐんぬぅぅぅ……」


『凍てつき、くだ』


「させるかよ!」


 俺はホワイトの手元を蹴り上げ、距離を取ると同時にスキルの詠唱をする。

 ホワイトは剣を大上段に構えると、真っ直ぐ走り込んできた。


『ヴォルフ・ファング!』


「流星盾!」


 氷の狼が、真っ直ぐに走ってくるのを流星盾で阻む。

 だが、流星盾は瞬く間にピシピシと音を立てて凍ると共にヒビが入る。

 やっぱり、流星盾じゃ全然持たないか……!


「ブレード・ショット!」


『ッ……おぉッ!』


 炎の刀身を一直線に飛ばす、だがサイドステップで躱された。

 だがそれでいい! その位置が、丁度良い!


「フェニックス・スラスト!」


 ブレード・ショットの利点は次のスキルまでの隙が無い。

 故に、こうして避けさせるための攻撃にもなりうる。

 尤も……無限に刀身が生えてくるフェニックス・ブレードじゃなきゃ出来ないけどな。


『ぐっ……!』


 俺の剣はホワイトの胸に突き刺さり、力を込めると更に深く刺さる。

 ホワイトは苦悶の表情と共に、苦しむ声を上げながら剣を握る腕を下ろした。

 ……そりゃ、プレイヤーである俺たちなら痛みも苦しみもない。

 けれどNPCであれば、斬られると苦痛を感じたりする反応を見せる。


「これで終わりだ」


 胸に穴が開き、穴の断面は溶けたと思うとすぐに氷で固まり始めた。

 その傷を気にしてか……ホワイトは動けない。


「ゴブリンズ・ペネトレート!」


『ヴォルフ――がっ、ハ……!』


 死力を尽くしてホワイトはスキルを放とうとしたが、俺の剣がホワイトの腹を貫通した。

 フェニックス系のスキルを使いすぎて、SPが枯渇していたので、SPを節約できて尚最高の威力を出せるゴブリンズ・ペネトレートを食らわせる。

 これでホワイトのHPバーを削り取り、二本目のHPバーを全損させた。


『くぅっ、はぁ……はぁ……!』


 ホワイトはよろめき、その場に倒れる。

 ……HPバーの隣にある宝石がバシンと砕け散り、直ぐにHPは全快。

 だが、鎧はヒビが入り、ピシ、ピキ……と言う音と共に砕け散った。

 満身創痍の傷を負ったホワイトは鎧もなしに、剣を構える。


「……まだやんのか」


『私は……我が主のために、負けられぬのだ……!』


 ……何も知らない。

 俺はこんなNPCのことは何も知らない……けれど。

 このSBOという世界で、その主とホワイトには色々な出来事があったんだろう。

 プレイヤーの誰もが知らないところでも、ホワイトが忠誠を誓うような出来事が。

 だったら、例えそんなことを知らなくても、俺は! 全力でやってやる!


「なら、全力でかかって来い!」


『これが最後だ……行くぞッ!』


 これが最後の勝負……ホワイトには様々なバフがかかっている。

 ステージギミックだとかそういう言い方をするんだろうが……これはホワイトの意地、ホワイト自身の最期の力なんだろう。


『凍てつけッ!』


「う、うおおお……ッ! バーニング・ソード!」


 ホワイトはほぼ予備動作なしで弓矢を引き絞り、氷の矢を放ってきた。

 俺はバーニング・ソードでそれを打ち払い、一気に踏み込む。

 下がっても勝てないだろうし、何より下がるなんて真似してられるか!


「フェニックス……」


『ヴォルフ――』


「スラスト!」


『ファング!』


 突きと振り下ろしがぶつかり合い、激しい音の代わりに衝撃が伝わって来た。

 まるで、大きな岩に棒を叩きつけたかのような凄まじい、跳ね返り。

 ビリビリビリ……と、頭にまでその衝撃は突き抜ける。


「っ……ゴブリンズ……!」


『【ブリザード・フィールド】!』


 剣がぶつかった衝撃で下がった俺の攻撃に、ホワイトは新たなスキルを叫ぶ。

 それは、床から壁、天井に至るまでが凍りつき始めた!


「ぐ……!」


 俺の両足まで、すっかりと凍ってしまっていた。

 これじゃあ、踏み込むどころか歩き出すことさえ出来ない。


「【聖十字剣戟(グランドクロス)】!」


「ッ……! ゴブリンズ・ペネトレート!」


 光り輝く十字の斬撃が放たれたが、俺は強引ながらもゴブリンズ・ペネトレートで受け止める。

 ……威力こそ軽減できたが、名前に相応しいようなダメージが俺に入った。

 アーサーほどじゃあないが、騎士の名に恥じないような攻撃力……何よりもの気迫。

 NPCにこんな覇気があるなんて、今まで思いもしなかった。


「……でも、これで動けるぜ!」


 聖十字剣戟とやらを受けたおかげか、俺のアバターは凍った部分ごと吹っ飛んだ。

 そのおかげで、多少ながらも足を自由に動かして戦える。

 つっても、凍ってるせいで踏ん張れないけどな!


『ヴォルフ・ファング!』


「フェニックス――」


 氷の狼が駆けて来るのに合わせ、俺の不死鳥を飛ばそうとした時。

 頭の中に直接流れ込んでくる誰か……いや、機械的で人じゃないような声。

 それが、嬉しいことを一つ告げた。


【条件達成。新たなスキルが解放され、習得されました】


 そのスキルの効果、使い方、名前は一瞬で俺の頭にインプットされた。

 頭痛が走る感覚だった……けど、頭が痛いくらいで、振った剣を止められるものかよ。

 アルゴーノートのカイナスが使ってたスキルのように、新しい技。

 俺が手に入れた、俺だけの不死鳥(フェニックス)のスキル。


「【カースフレイム・フェニックス・ドライブ】!」


 スキルを宣言し、フェニックス・ブレードを振るう。

 その行動で、魔法陣のようなものが刀身を中心に三つほど開く。

 フェニックス・ブレードは赤い炎から黒い炎へと姿を変える。

 当然放たれた不死鳥も黒い炎へと変わっていて、SPの消耗量込みで威力は上がっている。


『なっ、馬鹿な……! ぐっ、うおおお……!』


 ホワイトの放った氷の狼は消し飛び、白い剣と黒い不死鳥が拮抗し始めた。

 俺はそこに狙いを定め、フェニックス・ブレードを肩の辺りまで持ってくる。

 そして……腰を低く落とし、左足を前にして――!


「【カースフレイム・フェニックス・スラスト】!」


 体を投げ出すようにして飛び込み、もう一つのスキルを放つ。

 

『あ……ぐっ! ぐああああああああああああああ……!』


「ッ、オオオオオッ!」


 加速した黒い炎の刀身が、ホワイトの胸元に突き刺さる。

 そのまま剣を押し込み、ホワイトを壁に叩きつける。

 それと同時にさっき放った方の不死鳥がホワイトに着弾し、全身を炎で包む。

 黒い炎がホワイトを焼き焦がし、俺を少しばかり巻き込む。


「これで……! 終われッ!」


『あああああ……!アアアアアアア――ッ!』


 最後に剣を横に払い、ホワイトの腕をも斬り落とした。

 全身を焼かれたホワイトはHPバーを全損すると、膝から崩れ落ちた。

 傷だらけになって、焼け焦げて……鎧も兜も失った彼は俺を見上げた。


「ホワイト」


『見事な剣、だった……これで逝けるなら、満足だ……』


「死ぬのか、お前……」


 HPを全損した……だから死ぬ、それは当然の帰結だ。

 だが、こういう会話するタイプのボスなら、普通のモンスターとは違う。

 何度も挑んで戦うことが出来るようにするためか、消滅の演出が違う。

 でもホワイトは体の末端からゆっくりとボロボロになって、朽ちていく。


『……貴様なら、辿り着くだろう……我が主へと。

その時は伝えてくれ……騎士としての……私の姿を』


「ホワイト……!」


 ホワイトは残った腕で、剣帯を外して俺の前に差し出した。

 白い革で作られ、狼の顔のマークが刻まれた鞘……それに納まる、鍔に狼の顔が彫られている水晶のような剣。


『これが、私がこの世で残せる……最後の物。

受け取って……腰に帯びてくれ……名も知らぬ、剣士よ……』


 ホワイトは、涙を流しながら笑うと……とうとう全身が消滅した。

 ……さっきまでの激闘が嘘みたいに、今の俺はセンチな気分だった。

 相手はただのNPC、人間とは違う存在……理解し合うことは出来ない。

 それでも……それでも、俺にとっては。


「最高にカッコ良かったぜ、ホワイト」


 残された剣を握りしめて、胸に抱くほど……記憶に残った人間だった。

 と、感傷に浸っていたら氷が溶けたのか、鈴音が俺の近くに駆け寄って来た。


「アンタもカッコ良かったよ、リーダー」


「……あぁ、サンキューな。鈴音」


 俺はホワイトの剣……【狼雪の剣】をストレージに格納すると、立ち上がる。

 そして鈴音と共に、次の敵と出会うまでの道を歩き始めた。

 ……早く、先輩たちと合流したい。

プレイヤーネーム:ブレイブ・ワン

レベル:60

種族:人間(ヒューマン)


ステータス

STR:80(+110) AGI:100(+95) DEX:0(+20) VIT:40(+165) INT:0 MND:35(+100)


使用武器:フェニックス・ブレード・カース、小鬼帝の小盾・改

使用防具:邪竜のハチガネ、小鬼帝の鎖帷子・改、小鬼帝の鎧・改、小鬼帝のグリーヴ・改、悪魔ズボン(黒)、アダマンタイトガード、回避の指輪+2

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