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セブンスブレイブ・オンライン ~小鬼勇者が特殊装備で強者を食らいます~  作者: 月束曇天
第四章 人気落ちると唐突にやり出すトーナメント編
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第六十三話:朧之剣

「やりましたね、N先輩」


「まさかあんな隠し玉があるなんて! 俺知らなかったッスよ!」


「僕も驚きました!」


「と言うか、いつ手に入れたんですか?」


 先輩が試合から戻って来て早々、先輩は俺たちが投げかけた言葉を一蹴するように、その場に寝転がった。

 ……相当、お疲れのようだ。


「あぁ、大分……疲れてるんッスね」


「当たり前だ。負けても良いであろう試合なのにも関わらず、ブレイブのせいで奥の手を使うハメになったんだぞ。

その上、あの姿勢から震天ノ太刀を放ったせいで酔いが酷い……っ」


 ……不満マシマシだ。

 ユージンも気まずそうな顔で頭をガリガリと掻いているが、一番気まずいのは俺だよ。

 試合中いきなり叫んで、リンのことをボロクソ言った上に先輩にアドバイスしてるも同然だし。

 これ、試合が無効とかにならなきゃいいんだけど……と、考えていても、特に講義はないようだ。

 MCとアイドルも、今の試合を振り返っても先輩のスキルの事ばっか話してるしな。

 俺が叫んだことに関してはノーコメントなようで、何よりだ。


「……なんか、すみません」


「気にするなブレイブ、一応お前の言うことも事実ではあった。ここで負けていては話にならんからな」


 先輩はゴロン、と転がって俺に顔を向けずに話した。

 あぁ、顔すら見るのが嫌なレベルで不満に思われたか。

 もしかしなくても嫌われてるだろうし……そうだな、うん……アレだ、後でなんかリアルで驕ろう。

 和食とか好きだし、うな重でも食わせりゃ喜んでくれるかな。

 残暑も何もないような季節だけどさ。


「……で、次の対戦相手は誰になるか予想はついているのか?」


「えーっと、ホーリー・クインテットと……これは、なんて読むんだろう」


 アインは俺たちの試合の次に行われている、二回戦第二試合の組み合わせを見て首を傾げていた。

 ……ホーリー・クインテットが当たる可能性が高いと思うが、取り敢えず見ておくか。

 三回戦まで来るとなると、知ってるギルドかもしれない。


「どれどれ? ……聞いたことないギルド」


 ランコはアインの見ていた組み合わせ表を覗くと、眉毛を八の字にした。

 ハルとユージンにも目線を送るが、二人とも知らぬ存ぜぬって顔だ。

 ……で、俺が見ても……知らねえ名前だった。

 っつーか、アインが読めないのも納得だな、小学生じゃ習わねえ漢字だし。


「……あ、始まるみたいです」


『さぁ、二回戦第二試合は【ホーリー・クインテット】VS【朧之剣おぼろのつるぎ】!』


 朧之剣……第三回イベント前はネットサーフィンして色々調べていたが……ぷくぷく倶楽部に関しては俺の調べが足りなかったのが原因だ。

 でも、このギルドに関しては先輩も本当に知らないようで、彼女に目線を送っても首を左右に振るだけだ。

 ……名前も知らないレベルの弱小ならともかく、俺らと同等クラスかつ新しいプレイヤーとかだったら困るな、情報が少なすぎるし。


「先鋒戦はミーさんみたいですね」


「あぁ、あの剣使いの奴か」


 第二回イベントで、槍を使ってたアンズって奴とまとめてキルした奴だっけな。

 で、朧之剣の先鋒は……知らんプレイヤーが出て来た。

 フルアーマータイプの鎧に、武器は両手剣……にしては小さいが、片手剣よりかは大きい。

 中途半端な長さだが、まぁ。強いには強いのだろうか。


「剣対決か、面白そうだな」


「ミーさんは片手剣による素早さを重視した素早い連撃攻撃を繰り出して来ますけど、対戦相手の【DoG】と言うプレイヤーは、装備から察するに攻撃力重視した、重戦士系でしょう。

ので、要は柔と豪って奴ですね」


 ハルがその場にない眼鏡をスチャッと持ち上げるような動作をしながら解説する。

 まぁ、そんな説明は誰も聞いていないかのように、客席からミーを見守ってるわけだが。


『それでは……試合、開始ーっ!』


『頑張れー!』


 MCの合図と、アイドルの応援の一声と共に試合は始まった。

 ミーは左手を前に出し、剣を肩の高さで水平に構え、DoGは剣道のような構えを取った。

 ……VRで剣道の構えとか、正気か?

 あくまで現実での剣道の動きってのは、人間の出来る挙動の話だ。

 対して、VRでの戦い方ってのは人間の出来る動きの限界を超える事が出来る。

 つまりそれは現実に出来ない動きが出来るわけだから、剣道の構えはVRじゃ通用しにくい。

 現に、先輩も剣道においての実力じゃプロ並みなのに、VRじゃ剣道のような動きはしない。

 よく漫画とかで見るような動きを主体としていて、プロの殺陣よりも映える戦いだ。

 ……と、話がズレたが、要は剣道の動きってのはVRにあんまり向いてない。


「やぁぁぁっ!」


「てあっ!」


 と、俺があれこれ考えているうちに、ミーは大きく踏み込み、剣を直線的に突き出して突進した。

 DoGは袈裟斬りにするようにしてそれを受け止め、二人は鍔競り合いの状態になった。

 ……突っ込んでいったはずのミーが足跡を残しながら押されているのを見ると、やはりDoGは攻撃力重視か。

 STR値の問題もあるが、武器の差も大きい。

 ミーはどんどん押し込まれて行っている……が、何で離脱しねえんだ。


「くっ……」


「ふんっ!」


「あぁっ!」


 鍔迫り合いに飽きたか、DoGは剣を無理矢理振り下ろし、ミーをのけ反らせる。

 そして両手剣を大上段に構え、剣にライトエフェクトを纏わせた。

 スキルの挙動を取るだけで、システムアシストを働かせて攻撃力をアップさせた技……

 名称は色々あるが、SBOだと【システム・ソード】とか言うカテゴリのスキルだったな。

 それを使って一気に決めに行くつもりか。


「せえぁっ!」


「負けるもんか! スプラッシュ・スティンガー!」


 ガガガガガ……と、ミーの片手剣による連撃がDoGの剣とぶつかり合うが──

 ミーの片手剣は、俺の使っている片手剣と違って、攻撃力よりも攻撃速度が売りだ。

 だから、当然。


「おおおッ!」


「あああっ!」


 ミーが吹っ飛ばされた。

 ミーの剣じゃあ、両手剣と真っ向からのぶつかり合い、それもスキルでなんてのは無理な話だ。

 俺の剣ならチャンスはあるにはあったかもだけど、それでもバフスキルが必須だろうな。


「DoGって人の方が優勢ですね……」


「まぁ、ミーさんがもう少し隙をつくような動きをしてれば別だったとは思うなぁ」


「そうだな、うむ……」


 アインとランコもそれぞれ感想をこぼすが、先輩は呆れた目で試合を見ていた。

 ……あぁ、凄い退屈なのね。

 この人、他人の試合を見る時は剣道の時も結構退屈そうな目で見てること多いんだよな。

 誰と比べてるか知らんけど、少数ギルド同士の対決なんて……こんなもんだろ、多分。


「あ、ミーさん負けましたね」


「ホントだ」


 目を離した隙に、ミーが倒れていた。

 体が真っ二つになっている。

 無惨っつーか、なんつーか……エグい死に方してら。

 まぁ、首チョンパされたリンよりかはマシか。




「……で、まさか、こんなに早く終わるなんてな……圧勝にもほどがあるだろ」


「そうだな、私も正直少しは粘ると思っていたぞ」


 何と、朧之剣はホーリー・クインテットに先手で三勝してしまった。

 言わば完封勝利、MCもアイドルも、あまりの圧勝具合で盛り上がっちゃってる。

 まぁいいさ、次の対戦相手なんだ……情報こそ少ないが、何とかなるか。


「うーん……一回戦のログを見直しても、なんかDoGさんの動きはわかんないや」


「私も、次鋒の【CaT】さんの動きにはちょっとついて行ける自信ないかな……」


「中堅の【SeeP】と【HawK】はどっちも強そうッスね……でも、SeePのスキルはハルさんには効かないんッスし、問題ないと思うッスよ?」


「HawKさんに気を付けて戦いたい所ですね。彼をサポートするのがSeePさんの戦い方みたいですし」


 ……アイン、ランコ、ユージン、ハルの四人は一回戦のログで盛り上がってる。

 けど、先輩と俺は相手の試合を見れてないので、どうとも言えねえ。

 何せ、向こうは一回戦でも完封で勝ったらしく、副将と大将は出てねえ見てえだ。

 あー、やだやだ……俺と先輩は情報ゼロなのに対して、向こうはこっちを知ってるっぽいしな。

 泣きたくなってくるぜ。


「取り敢えず、僕たちで一勝でも多く取ってきます!」


「そうだね、私たちが頑張ればNさんたちも負担が少なくなるよ!」


 アインとランコはやる気を出して、シャドーボクシングを始めた。

 ハルとユージンもまた、余裕を見せつつも目が真剣だ。

 なら、コイツらの頑張りに応えるために負けてもいいって思わせないとな。


「よぉし! 目指すは全勝! ならアイン! 頑張ってるお前を俺は応援するぜ! 全力でな!」


「はい! 漢アイン! いざまかり通ります!」


 俺の台詞を真似しながら、アインは双鉞をブンブンと振り始めた。

 ……一回戦でも二回戦でも負けてるから、二度あることは三度あるとならなきゃいいが。

 ここは、三度目の正直って言葉を信じてアインを応援しよう。


「兄さん、私にはなんかないの?」


「へいへい、お前も応援してやるよ、ランコ。出し惜しみはしねえで、本気出して頑張れよ」


「ふーん、なんかテキトーなアドバイスっぽいけど。

まぁいいよ、頼りない兄さんの代わりに、デキる妹を見せてやらないとね」


 ……なんかムカついたので、ランコの頭にチョップ。

 しかし受け止められたので、俺たちは笑顔のまま目からバチバチと火花を散らさせる。

 先輩は呆れたようで、ため息をつきながら『やれやれ』と呟いた。


「そろそろ俺たちの番ッスね」


「そうですね、ならアインさん、試合の準備を」


「はい! 行ってきます! 勝利をむぎ取ってきます!」


 ……緊張してるのか、それともアインが小学生だからか、言葉間違えてんな。

 まぁいいか、アインを応援する以上、茶々入れるよりも喝を入れてやらねえとな。


「アイン! 漢見せんなら、今だ!」


「いよおおおっ! やってやりますよぉっ!」


 アインは両腕で力こぶを作るようなポーズをしてから、俺たち全員で転移と同時に闘技場へ続く道に走り出した。

 その一方で、俺たちは試合出場チーム専用の観客席に腰を下ろす。


『さぁ始まりました、三回戦第一試合! 注目のカード、【集う勇者】と【朧之剣】!』


『どっちもカッコいい人たちが揃ってて、私的に推しチームです!』


 お、SBO宣伝アイドルたちから推されちゃってんのね、俺たち。

 とか言いたくなったが、どうせアイドル営業のための台本かなんかだろ。

 新進気鋭のギルドと言えば聞こえはいいが、要は俺たちは新参者。

 だからまぁ……あんまり調子に乗ってはいられないな。


『えー、先鋒戦! 【集う勇者】の【アイン】と【朧之剣】の【DoG】! さぁニコちゃんは、今までの試合を踏まえてどっちが勝つと思う?』


『んー……少し悩みますけど。DoGさんは全勝でしたし、この試合はDoGさんが勝つんじゃないかなー、と思います!』


 観客たちがざわざわしだした。

 あー、うん……アイン、完璧に負けるムードみたいにされてら。

 ちょっとあの場に立つアインが気の毒だ。

 けどまぁ、あくまで予想なんだし……漢ならそんな逆境に抗うもんだよな、アイン。


「よし! やってやるっ! 僕だって漢なんだ!」


「おうおう、気張ってんなぁお坊ちゃんよ。

天下の勝ち犬様の俺とやり合おうってんなら、まぁ楽しもうじゃねえかよ」


 アインは背中から双鉞を抜き放ち、構える。

 DoGも背中から両手剣を抜いて構えた。

 どちらも先手でスキル狙いだろうが……多分アインのスキルの方が出るのが速いだろう。


「アインくん……」


「アインさん……」


 祈るようにアインを見るランコ、期待を込めて拳を握るハル。

 腕を組みながらも、緊張した表情をするユージン。

 俺たちの想いがアインに集中し、アインは背中に様々な物を背負っている。

 だから……アイン、三度目の正直を見せてくれ。

 俺がそう思うと、アインは必ず応えてくれるはずだ。


『それでは試合……開始ーっ!』


「アックス・スロー!」


「【両断波】!」


 アインがエネルギー状の斧を投げると、DoGは両手剣を片手で振り、斧を叩き斬る。

 そして起きる土煙とスキルの衝突による爆発のエフェクト。

 それを隠れ蓑にしながらも、真正面から突っ込んできたアイン!


「ッ……せえええあああああッ!」


「オラァァァッ!」


 アインが両手で同時に振るった双鉞と、DoGが両腕で振るった剣がぶつかり合う。

 二人の武器が鍔競り合いになり、火花を散らし……二人の力は拮抗した。

プレイヤーネーム:ユージン

レベル:60

種族:人間

ステータス

STR:80(+60) AGI:145(+85) DEX:30(+60) VIT:0(+20) INT:0 MND:0(+20)


使用武器:ドラゴンダガー×2

使用防具:俊敏のハチマキ 華のジャケット 根性シャツ 疾風のブーツ ハイスペック・グローブ 魔力ズボン(灰) 回避の指輪+1


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