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第四十六話:ディララだけは死んでも守れ

『フ……ミノタウロスとハイオークなぞ、所詮雑魚に過ぎぬわ。

さぁ、我が眷属よ……この愚かな者共を蹂躙せよ!』


『イー!』


『キー!』


 グリフィンがそう言い放つと、キメラがまたもや出現してきた。

 ……キメラA、キメラBとなっているし、中ボス相当でもねえな。

 現に、HPバーは一本、体格も小さく合成されてる動物もたった二種類。

 Aは鳥と犬、Bは鳥とグール……よく見たらこれ以上ない程気持ち悪いな。


「雑魚はスティーブンとゾームーに任せた!」


「了解だぜ!」


「ほな最速で片付けるわ」


 キメラAとBに向かって弓を構えるスティーブン、斧を構えて走り出すゾームー。

 残る俺たちは、グリフィンに向けて武器を向けてスキルの詠唱をする。


「凍てつくが良い! 【ブリザード・ブレス】!」


「チッ! ファスト・シールド! セカンド・シールド! サード・シールド! Fフロート・シールド! Sフロート・シールド!」


 グリフィンは氷属性の広範囲ブレスを吐いて来た!

 俺はすぐさまスキルの詠唱を止めて、諸刃の剣を解除してからシールドを全て張る!

 だが盾が足りねえ!五枚程度じゃ守れる範囲が限られているから、バラけている皆に当たっちまう!

 一応、ブレス自体はシールドで防げてはいるが……ファスト・シールドは砕けた!

 フロート・シールドを動かして割れた分を補うが、どんどん範囲が狭まっちまう。


「カエデ! ディララだけは死んでも守れ!」


「は、はーい!」


 カエデはディララの前に立ってどうにか俺が防ぎきれてないブレスを止めている。

 ランコもちゃんと対応してくれたようで、アインの前に立ってブレスを散らしている。

 あの風車ってスキル、結構便利だな……剣でも使えたら欲しいな。


「ぬぅぅ……」


「くらうがいい!」


 グリフィンはブレスを吐くのを止めたら、ツメを振り下ろして来た!

 俺は一歩下がってシールドから離れる。

 勿論それは正解だったようで、俺の張ったシールドは全て砕かれていた。


「チッ……やっぱ普通に戦うと厄介だな!」


 ミノタウロスが厄介の塊だったのは勿論、ハイオークも相当面倒臭い戦いを強いられたんだろうな。

 そうなると……このグリフィンは本気モードのミノタウロスを相手にするのと同じと見ていい。

 と、俺はグリフィンを見ながらもSPポーションを飲んでSPを回復する。

 第二回イベント後とかで、SPは上限も回復速度も回復量も上げてきたが……一度にスキルを使いすぎると、こうやってSPをアイテムで回復する必要がある。


「グァァァ!」


「カエデ!」


「カバー!」


 グリフィンは俺に二撃目のツメを振り下ろして来た!

 だが、カエデが俺とグリフィンの間に入り、それはノーダメージで止まった!


「アイン!スキルは──」


「もう打てます!」


「なら、全力でぶちかませ!」


 アインは赤いオーラを纏い、グリフィンめがけて走り出した!


「バーサーク・スマッシュ!」


 超速の乱打!

 アインの持つ双鉞から放たれる、目にも止まらぬ斧の攻撃はグリフィンの顔面に直撃!


『ぐぅっ……!』


「どうだ!」


 グリフィンのHPバーは一本の内の七割が削られた。

 流石にこれはたまらないようで、グリフィンは翼を傍目かせて後方へ下がる。

 一体何をする気だ?


『燃え尽きるがいい! 【バーニング・ブレス】!』


「ヤベっ……」


 グリフィンは嘴に何かを溜めたと思ったら、炎のブレスを吐いてきやがった!

 氷と炎の同時使用とか反則だろオイ!

 しかもまだ俺のシールドのクールタイムは終わってねえ! あと一呼吸置かねえと……!


「相殺します」


「ディララ!」


 ディララがいつの間にか俺の隣に来ていた。

 彼女は杖をクルン、と回してから俺に飛来する炎に向ける。

 すると、ディララの杖の先端からパチパチとスパーク音が鳴った!


「サード・サンダーランス!」


 グリフィンが放った炎のブレスは一直線にディララの魔法と激突した!

 炎と雷……相性は何ともない二つだが、ディララ一人で押し返せるかはわからない。

 相殺じゃあダメなんだ……相殺じゃあ、ディララが詠唱してくれた分が無駄になっちまう。


「雷系スキルなら……私だって! ライトニング・スピアァァァッ!」


 俺の考えに気付いたのか、駆け付けたのとノータイムでランコはライトニング・スピアを放った。

 それはグリフィンの炎のブレスに拮抗していたディララの雷の魔法とくっつき、巨大な槍となった。

 そうだ……同じ系統のスキルなら、上手くやればコイツのブレスを押し返せるかもしれねえ!


「アイン! 俺たちも行くぞ!」


「はい!」


「うおおお! 諸刃の剣! ライトニング・ソード!」


「狂化! ライトニング・アックス……双鉞!」


 ランコがディララの魔法にスキルを合体させたように、俺とアインのスキルもディララの魔法と合体!

 これで杖から放たれていた雷は巨大な大槍となり、グリフィンの炎のブレスを凌駕する程になった!


『グッ……グァァァ……』


 炎を絶えず吐き続けるグリフィンのが、少しずつ弱まって来た。

 俺たち四人が、最大火力を込めて作り上げた雷の大槍は、グリフィンの炎を少しずつながらも押し返している!

 よし……これなら……行ける!


「ありがとうございます、皆さん。これなら、押し返せますね」


「おう! どうせなら……このままグリフィンを電撃で焼いてやろうぜ!」


「では、折角なので奥の手を披露させていただきます」


 ディララは左手に持っていた本のページをパラパラパラパラ……と捲ると、指だけで器用に持ちながら、杖と一緒に前に突き出した!

 何をする気だ?本に雷神でも眠ってんのか?


「これが私の奥の手……事前に詠唱しておいた魔法をストックできるスキル【マジック・ストック】です」


 ディララの奥の手……ずるいなそのスキル。

 メテオ・レインを乱発できる理由……それはこう言う種があったからなのか。

 こんなスキルがあって、魔法攻撃力極振り……そりゃあイベントでも8位になれるよな。


「で……何をストックしておいたんですか?」


ランコが尋ねると、ディララはニコッ、と笑った。


「第二回イベントが終わって、実装されたスキルの系統があるのはご存知ですよね」


「あ?そんなのあったのか?」


 なんだ? スキルの系統? 属性か? それともカテゴリの問題か?


「あれ、兄さん知らないの? サード系スキルの更に上がアップデートで追加されたんだよ?」


「えっ」


 サードの上……? となると、なんだ? えーと……ファスト、セカンド、サード……英語なら──

 と、俺が必死に頭の中の辞書で単語を探していると。


「【フォース・サンダーランス】」


 ディララの本から放たれた、サード・サンダーランスよりも一回り大きな雷の槍。

 それは、今俺たちが支えていた雷の大槍に合体して。


『グッ……! グァァァ──!』

 

 グリフィンの炎のブレスを押し返した。

 ズドォォォン、と凄まじい音がしたが……グリフィンのHPバーは最大値から丁度半分だ。

 所々が焦げて黒くなったグリフィンは、ぜぇぜぇと息をしている。

 随分とリアルな行動だなー……ボスとかだとこういうのはあんまり見ないんだけどな。


「よし、あと半分! 畳みかけよう!ランコさん!」


「うん!」


 アインとランコはグリフィンの疲弊を見て、スキルの詠唱に入る。

 俺は諸刃の剣を解除し、グリフィンの攻撃を待つ。


『グァァァ……グアアア!』


 グリフィンは吠え、四足で俺たちに向かってくる。

 ディララを下げ、カエデをディララの前に立たせてから、俺はカウンターの詠唱に入る。

 グリフィンもスキルを詠唱したのか、爪が燃えている。

 属性系スキルか……まともに受ければ、カエデはともかく俺ですら危ない。

 ともなれば、ここは絶対に食らってたまるかってんだ!


『燃え尽きるがいい! 【ファイア・クロー】!』


「させるかッ! サードォッ、カウンタァァァッ!」


 グリフィンの右前足から繰り出される炎を纏った爪──

 を避け、俺のサード・カウンターがグリフィンの胸を抉った。


「ランコ! アイン! 今だ!」


「はい! クロッシング・スラッシュ!」


「乱れ突き!」


 グリフィンの両翼にアインとランコのスキルが命中。

 よし、これでグリフィンのHPバーも残すは一本!


「ディララ!」


「詠唱は既に完成しています。折角なので、美味しいところを頂かせて貰いますね」


『ギュアアアアア! 凍てつくが良い!』


 グリフィンはディララが杖を向けた所で吠え、口に氷を作り始めた。

 またブレスを吐くつもりか! しかもこんな至近距離、避けられねえような位置で!

 だが! 甘いな!


「パワー・スマッシュッ!」


『ブリザ──ギュアッ!?」


 俺はブレスを吐こうと嘴をオープンしていたグリフィンへ向けて、パワー・スマッシュを放つ。

 だが、それはグリフィンの体に向けてではなく、嘴に向けてだ。

 こうすれば、ディララに向けてブレスが放たれることはない。

 俺はダメージを受けるが……モロに受けるわけじゃないから、別に死ぬわけじゃねえ! 多分!

 が。


「くっ……うぅぅぅっ! つめてえええええええ!」


 最早一周回って火傷するんじゃねえかってくらい冷たかった。

 VRでも寒さと言うのは再現したりされてるが……ここまでの冷たさはおかしいだろ!

 いや、でも拡散されて吐くような冷たいブレスを一点に集中したらこうなるのか?

 つかそんなことはどうだっていい! 冷たいし左手凍ってるしHPがもう半分切ったぞ俺!


「ディララ! 撃ってくれぇぇぇっ!」


「言われずとも……サード・ヘルファイア! おまけで、セカンド・ヘルファイア!」


「あっ、ちょっと待っ」


 ディララが杖と本を突き出すと、豪炎が放たれ──

 グリフィンの嘴に腕を突っ込んでいた俺ごと燃えた。

 流石、INTに極振りした奴の魔法の威力は段違いだった。

 当然ながら巻き込まれていた俺は、HPバーを全損し死亡した……


 と、同時に蘇生された。


「……クソ寒い日に家ついて、真っ先にコタツに入った感覚だった」


「何がですか」


「魔法で燃やされた時の感覚」


「あぁ、そうでしたか」


 死んで、デスペナルティで獲得していた経験値がいくらか減ったが……まぁいい。

 ディララの魔法のおかげで、グリフィンは倒せたし……丁度、スティーブンとゾームーの戦っているキメラがあと少しで倒せそうだ。

 だからディララたちはポーションを飲んで回復し、休憩中……勿論俺もだ。

 つーか、グリフィン倒してもキメラ倒さなきゃボス戦に移行しねえんだな。

 雑魚も自動で消えてくれるシステムなら嬉しかったんだけどなー。


「オラァッ!」


「ふぅんっ!」


 ガラスの砕け散る音が二回聞こえたと思ったら、キメラが二体とも撃破されていた。


「ふーん雑魚が! お前の肉は美味しく食わせたるわ!」


「ま、俺なら当然の結果ですわぁー……」


 スティーブンとゾームー、二人とも無事にキメラを倒して、嬉しかったのかVサイン。

 HPポーションとSPポーションを飲みながら、二人は互いにグッドサインを送り合っている。

 さてと……とうとう、後は一番奥に座ってるボスだけか。

 シルエットだけだったのが、ようやく全身を明かされるみてえだ。


『フハハハ……我が眷属を討ち、抗うか。いいだろう、ならばこの私の手で、貴様らを絶望に彩るとしよう!』


「石仮面を被ったんでしょうか、あの人」


「俺に振るな」


 コツ、コツ、コツ……と足音を鳴らしながら来たボス──

 ソイツは死人と言ってもいい程青白い肌をし、黒いマントを身に纏っていた。

 マントを脱いだその下には、中世ヨーロッパの貴族が着てそうな服。


『さぁ……恐れよ、挫けよ、そして……絶望に顔を歪ませるが良い!』


 両手を広げ、王者の風格を纏う男。

 モンスター名【ヴラッド・ドラキュゥラァ】。

 吸血鬼、だ。

プレイヤーネーム:ブレイブ・ワン

レベル:44

種族:人間ヒューマン


ステータス

STR:60(+74) AGI:92(+59) DEX:0(+20) VIT:35(+99) INT:0 MND:35(+64)


使用武器:小鬼王の剣・改、小鬼王の小盾・改

使用防具:龍のハチガネ・改、小鬼王の鎖帷子・改、小鬼王の鎧・改、小鬼王のグリーヴ・改、ゴブリンガントレット、魔力ズボン・改(黒)、回避の指輪+2

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