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第二百六十一話:おねむな会議

 戦いを終えて、数時間経ったか。

 あの心の底から全てを絞り出したような激戦の後、俺たちはどうやってホームに戻ったんだかわからない。

 ただ気が付けば領主館にある自室の布団で、装備を解除したままぐったりと寝ていて……寝ていて……どれだけ寝てたか。

 遊び疲れた子供のようにひたすらに眠り続けたところで──俺は、柔らかな布団と良い香りに包まれて目を覚ました。


「……寝ても覚めてもゲームの中ってのは、ちょっとやりすぎだな、俺」


「そうか? フフ……むしろ良いじゃないか、まるでこの仮想世界が現実になったような気分で」


「ログアウト出来なくなったデスゲームみたいで怖えなって思ったんすよ……」


 ツッコミを入れることは無粋だと思ったので、俺の隣でNさんが眠っていたことに関しては言及しないでおこう。

 というか、記憶がないだけで俺の方から布団に誘った可能性もあるんだからな。

 ……俺もNさんも、ちゃんと服は着てるし、疲れた体を引きずってゲーム内であんなことやこんなことをしたとは考えにくいし。

 と、色々頭を回して自分の意識をハッキリさせているところで、Nさんは軽くのびをしながら立ち上がる。


「……さて、落ちるか? ブレイブ」


「いや……多分だけど──おっ」


 サッとメニューを開いてみると、フレンドリストにメッセ―ジの新着が溜まっていた。

 それもたった数分前……こういうのが予想通りだと、なんだか嬉しい。


「む、どうした」


「アーサーからの招集です」


「私も行くべきか……恐らく”アレ”についての議題だろう?」


「でしょうね」


 直接的な名称を出さずとも俺たちは互いに何が言いたいかを擦り合わせ、すぐに部屋を出た。

 アーサーのいる場所……王の騎士団領主館へと足を運び、王の騎士団ギルドメンバーや七王に馴染み深い会議室へと足を運んだ。

 当然、そこには他の七王たちが揃っているワケだが……


「なんだ、お前らも同じか」


「まぁ、今も結構疲れてるだけに鎧とか着てられる気分じゃないしな」


 皆、俺やNさんとそう変わらなかった。

 いつもは七王らしい、というか……威厳のあるような装備の数々を身に着けているコイツらだけれど、今は違った。

 俺たちみたいに鎧の下に身に着けているような着物だけだったり、なんならネグリジェ姿の奴もいたり……絵面はまるでパジャマパーティだ。

 俺やNさんが今着てる服も、場合によっては寝間着って判断されるようなもんだしな。


「悪いね、皆疲れて眠っていただろうに」


 随分とファンシーな寝間着姿……ナイトキャップまで被って、典型的な『さっきまで寝てました』って姿のアーサーが口を開いた。

 とは言っても、その顔は少しだらしなく緩んでいるし、これから真面目な会議をするとは思えない。

 KnighTも珍しく席についてあくびをしていて、PrincesSの姿はそこにないし。

 かく言う俺やNさんもまぁ、あんまりキリッとした顔は出来ていないだろうが。


「議題は……アレか」


 寝ぼけ眼で頭がフラフラしているカオスが言うと、アーサーが頷く。

 まぁ、やっぱり情報共有は早い方が良いから、ってことなんだろうな。


「心意の正しい発動の仕方、及びその認識……心意は『システムを超えた強化』じゃなく『真実の上書き』と、評すべきだったというところかな……」


「……そうだな」


 アーサーの見解は今まさに、この場にいる何人かが言いだそうとしていることだった。

 今まで俺が心意を使って来た時を振り返ってみると、まさにその通りだった。

 というか、わかりやすい指標まであったのに全く気付いていなかった。


「俺があの黒いアリスに使った時は『絶対に貫けない防御を貫く一撃』のイメージがあった……カエデに向けて演武した時もそうだな」


「そう、まさにそれだね……けど、僕らはどこかシステムの限界突破、みたいなイメージをどこかでしていて……やみくもな強化にしかならなかったから、フロースにも通じなかったことが多い」


「けど……長文詠唱や本来スキルに関係がなくても気合が入るような動作……ルーティン? そういうのを加えることで直観的に理解できた。

俺のマキシマム・ハイパーフレイムをフロースに食らわせたときも『本来通じないスキルが通じた』ってイメージがあったワケだからな」


「そうですね、私も詠唱文を入れて試してそう実感しました。ふわぁ……っと」


 心意のコツを掴んだ時の見解をそれぞれ交換していると、恐らく出来ても意味をよく理解できていなかった奴らも『なるほど』と言った顔で頷く。

 モルガン、イアソーン辺りはあんまりわかっていなかったらしいから、今ここで情報交換をした意味があるってものだ。


「……心意についてはわかりましたが、今回の議題はそれだけですか?」


「うん、勿論あるよ。フロースを倒したことで運営及びあの黒いアリスから送られてきたものだ」


 アーサーがメッセージウィンドウに表示されていたものを、自分で黒板に書き始めた。

 アルトリアがいないからだろうが、ちょっと新鮮な光景だな。


「『新たなボス出現』か……我ら七王を休ませる暇はないということか」


 イアソーンが苦虫を噛み潰したような顔と眠そうな顔半々でそう言うが、こういうハイペースでボスモンスターを出すということは向こうも焦ってるんだろうか。

 ”こっち”のアリス曰く『クロの使えるリソースには制限がある』そうだし……制限があるリソースをわざわざ俺たちにぶつけて来ると言うことは、フロースを倒したことで生まれた空きコストをすぐこちらに差し向けてると言うことになる。

 するってぇと……? で、えーと、そうなると……まぁ、なんでもいいか。

 とにかく直観的にだがあの黒いアリスに焦りを感じたワケで。


「ま、心意のコツを得た以上フロースの時よりも楽であろうと見ていいだろうね」


「うむ……驕って挑むワケではないが、自信を持って挑めるというのは確かだな」


 Nさんがそう言い切ってくれると、こっちも元気が沸いてくる。

 どんなボスかはまだわかってこそいないが、まぁ……アレだ、頑張ってやろうじゃねえの。


「ふわぁ……新しいボス、って……はぁっ……えくっ、また痛い感じですかね……」


「フロース戦で起きたような気絶現象みたいな、システムとは別ベクトルの何かが起こるんならありえるんじゃねえか」


「やだなぁ……あんまり攻撃してこないタイプのボスだといいなぁ……」


「始まる前から弱気でどうすんだよ……」


 まぁ、確かにフロース戦で散々な想いをしたのは確かだ。

 だから次のボスの攻撃が優しい感じだとは良い……とは思っても、あの黒いアリスの思想とかそういうのが反映されてるようなボスなら、あり得るかもなぁ。

 と、俺は一抹の不安を感じながら腕を組みっぱなしでうんうんと悩むのだった。


「じゃあ、僕からは以上だから会議を終わらせようと思うけれど……他に君たちから何かあるかな」


「……」


 アーサーからの問いに答える者はいない、もう何もないからとっとと寝たいというのが答えだろう。

 うん、実際俺はそうだし、Nさんも少し眠そうな顔だし、もう皆とっとこ寝たいんだろう。

 ゲーム内じゃなくて現実の方で寝て、疲れを取りたい。

 寝たことには寝たけれど、二度寝したくなるような眠さの残る目覚めだったしな……。


「じゃあ、解散。次集まれる日は……まぁ適当に送っといてくれるかな」


「おう……」


 全員とも眠そうな声のままそう返事をして、その場を後にしたのだった。

 で、その後は眠いながらも俺とNさんは領主館に戻って、ログアウトをして……現実の布団でぐっすりと眠ったのだった。

 現実の方に戻った後に鞘華からは結構心配されたが、雨でも降るような珍しい態度だっただけにビックリしたな。

更新がとんでもなく遅れてしまい、誠に申し訳ございませんでした!

これからも不定期ながら更新させていただくため、何卒、どうか少しずつお待ちいただけると幸いです!

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