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第二百四十七話:天晴だ

「フィフス・スラッシュ!」


『──!』


 蛇魔零との戦闘が始まって十分、ほど経ったか。

 俺はあの手この手で様々なスキルを放っているが、奴もかなり必死に食らいついて来るものだ。

 スキルが直撃することはなく、どうしても奴の二本の剣に阻まれて当たってくれないのだ。

 ……頭の輪っかについている玉を4つ光らせると、蛇魔零のやる気のボルテージでも上がるように出来てんのか。


「まぁ、それはそれでやりようがあるってもんだけどな」


 俺は向かってくる蛇魔零に対して下がりながらスキルの詠唱を始め、剣の刀身に黒い炎を灯す。

 ──狙うは、さっきと同じ戦法……と、思わせた二段階技だ。

 俺は刀身に灯した黒い炎から、七羽の不死鳥を象らせて放つ。


「カースフレイム・フェニックス・ドライブ・マルチ!」


『──!!!』


 蛇魔零のAIがどれだけ賢く出来ているのかはわからない。

 だが、手数を増やすというのはコイツに対しての有効な物であると俺は思うワケだ。

 現に蛇魔零の注意は俺から、俺の放った黒い不死鳥七羽へと向けられた。

 ならば突くのはその隙、さっきと同じようにスキルの迎撃に来たところで本命を打ち込む。

 ……さて、どう動く!


「オーガ・スラッシュ!」


『──!!』


「”そっち”か! 流石だな!」


 蛇魔零の判断、行動は流石と言わせる程素早かった。

 右手の剣にライトエフェクトを纏わせて竜巻のようなものを飛ばし、黒い不死鳥たちの動きを大きく変えた。

 そして、ソレからほぼ時間差タイムラグなしに左手の剣に白色のライトエフェクトを纏わせ、俺自身への迎撃に移っていた。


『──!』


「でも、一手足りねえな」


 俺はオーガ・スラッシュなんて放とうとしていたわけじゃない。

 剣を振り被って、スキル名も叫んだがそれはブラフだった。

 本当に詠唱していたスキルは──!


「フィフス・カウンタァァァッ!」


『──ッ!!!』


 蛇魔零の突き出した、白いライトエフェクトを纏う剣。

 それの軌道を盾で逸らし、お返しの刺突を蛇魔零の膝へとねじ込む。

 のと、更に!


「おまけだ」


 パチン、と左手で指を鳴らす。

 運が良かったことに、蛇魔零の放った竜巻では黒い不死鳥たちを完全にかき消すことは叶わなかった。

 確かに、奴の放った攻撃で俺の飛ばした不死鳥たちはもう鳥の形を保っていなかった。

 あちこちを削られてただの黒い炎となり、そのまま消えゆくハズだった。

 けれども、けれども今は違う。

 俺のスキルは、装備の進化に合わせてその制度を大きく大きく上げていたのだ。


「七分の一。されども、ゼロよりかは出るよな!」


 散りながらも微かに残されていた黒い炎、不死鳥たちの断片に過ぎないもの。

 それらも今や俺の手で自在に操作され、また新たな一つの黒い炎の不死鳥として出来上がる。


「受けてみろ。カースフレイム・フェニックス・ドライブ」


『──!!!』


 刺突から、一秒もないタイムラグ。

 ほんのわずかな僅かな隙に、黒い炎の不死鳥は蛇魔零の顔面を直撃して爆散する。

 ……蛇魔零の頭の輪っかに着いた玉が、更に二つ光った。


「……フェニックス系のスキルはもう全部通用しねえな、後は毒とカウンターも封じられたか……けど、上々だな」


 ゴブリンズ・ペネトレート、オーガ・スラッシュ、エクストリーム・ペネトレート、使うつもりはないけど恨熱斬。

 俺の必殺スキルを三つ残せている上に、まだ奴への有効打になり得ても耐性を作るための捨て駒に出来るスキルはある。

 ……戦ったのが俺じゃなくてアーサーだったら、きっと手をこまねていただろうなぁ。


『──……』


「ハハッ、何言ってんのかわかんねー」


 蛇魔零は顔を怒りにでも歪めたか、わけのわからない言語を呟きながら口も腹も歯をギリギリと鳴らしている。

 なぁに……その怒りもなくなるように、とっとこ仕留めてやるよ。

 俺は剣に星々の輝きを纏わせ、同じように剣へライトエフェクトを纏わせている蛇魔零と構え合い──!

 

『──!』


「流星剣!」


 剣をクロスさせ、真っすぐに飛び込んで振るってくる蛇魔零へ俺も真っすぐに踏み込む。

 ぶつかり合う寸前、真っすぐに来る攻撃をスライディングで躱す。

 そしてガラ空きになった背中に向けて、思いっ切り! 俺の星を纏った剣を叩きつける!


「ハァァァッ!」


『──!!!』


 やはり有効打になった。

 蛇魔零は頭の輪っかにある玉を更に光らせ、俺のスキルの内七つへの完全耐性を得ていた。

 だが、こっちはまだまだ、まーだまだやれる。


「さぁ、そんなもんかよ。来いよ、蛇魔零!」


『──!!!!!』


 蛇魔零は凄まじい雄たけびを上げながらもう一度踏み込んでくる。

 俺はまた新たにスキルを詠唱し、蛇魔零を迎え撃つ。

 次は、攻撃以外で阻害してやるとしよう。


「咆哮!」


『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!』


『──!?』


 蛇魔零もこれには面食らったか、それとも単に元から耐性がないのか。

 俺のSPを七割も食って発動するソレで動きを止め、すぐに咆哮への耐性を得るために頭の輪っかについている玉の八個目を光らせた。

 ……さぁ、ここからが本番ってワケだ。


「エクストリーム・ペネトレート!」


『──』


 咆哮への耐性を得てから動き出そうとしていた蛇魔零の懐に潜り込み、俺の最大火力のスキルをぶち込む。

 蛇魔零の腹に十連撃の刺突痕が刻まれ、蛇魔零はその巨体に似合わぬ軽さで吹き飛んで民家に直撃し壁をブチ砕いた。

 ……まぁどのみち戦争限定マップだし、使う用もない建物だからな……良しとするか。


『──!!!!』


「苦し紛れかよ」


 蛇魔零は瓦礫の中から起き上がったと思うと、髪の毛にしていた蛇たちを一斉に俺に向けて伸ばしてくる。

 だが所詮は蛇、目を光らせ俺を石化でもさせようと思ったんだろうが、残念ながら俺に状態異常は効かない。

 伸ばされてきた蛇たちの視線も、噛みつこうとしてくるその様も、まとめて蹴散らす!


「オーガ・スラッシュ」


『──!!』


 まとまって伸ばされた蛇を、横に斬り払う。

 何匹物の蛇が斬り落とされてボトボトと地に落ち、蛇魔零は痛いのかまた叫んだ。

 ……HPの残量はもう半分を斬ったってところか。

 俺のSPは結構減って来たのでSPクリスタルを握って全回復させ、ついでである効果のポーションを飲んでおく。


「じゃあ、遊びは終わりだな」


 俺は武装変化で盾を剣に変え、蛇魔零同様に二刀流の構えを取る。

 ……あとは、目の前のデカブツをただただ処理するだけだ。

 最速で踏み込んで、最大火力をただひたすらに叩きこみ続けるだけ。


「超加速、超加力、諸刃の剣、【アクセルシフト】、【ブースト・ダッシュ】!」


 俺は極限まで集中力を高める。

 そして、こちらへとゆっくり歩を進めて来る蛇魔零に対し文字通り最速かつ最大火力の一撃を詠唱し、放つ。

 

「ゴブリンズ・ペネトレート」


『──!!!』


 俺の愛用し続けた必殺の刺突スキルは蛇魔零の腹に深々と突き刺さり、そのHPを大きく削り取っていた。

 攻撃力を増強させるポーションを飲んでいたが……バフが切れるのよりも先に、決着の方が早くつきそうだな。

 いらなかった、ってワケじゃないんだろうが。


『──!!!!!』


 蛇魔零は自分への鼓舞か、それとも単に俺への怒りか、どちらにせようるせえ声を上げながら全身にオーラを纏い始めた。

 今更本気でも出したのか……まぁ、どうだったにしろ。


「遅えんだよ、蛇頭」


『──!!!』


「ダブルオーガ・スラッシュ」


 蛇魔零が左右の剣に別々のライトエフェクトを纏わせ、真っすぐに振り下ろしてくる。

 俺はそれを冷静に、ただただ道にある小さな水溜まりを避けるかのように、最小限の動きで躱す。

 そして、まとまって振り下ろされているその両腕を、斬り飛ばす。

 次に悲鳴を上げ始めた蛇魔零に向けて、必殺の二撃を叩きこむ。


『──!!!』


「ダブルゴブリンズ・ペネトレート」


『ッ──!!! ──!』


 腕を失ってよろめく蛇魔零の胸と腹を貫き、そのまま剣を左右に引いて肉を抉り出す。

 そして、そのまま倒れ込んだ蛇魔零の上に飛び乗り、奴を見下しながら俺は蛇魔零との戦いを想う。

 ……強敵だった、正直俺の手数がこれだけなかったら負けていたことだって十二分にあり得る相手だった。

 だけどコイツの特性は、俺に対して相性最悪だったってワケだ。

 アーサーやカオスみたいな相手だったら、結構善戦出来ただろうが、な。


「天晴だ、お前は恥じることなく強かったぜ。蛇魔零……ただ、俺とは相性最悪で、戦いの内容で見れば雑魚にしか見えなかっただろうけどな!」


 俺は蛇魔零への賛辞と嫌味、罵倒を交えてから残り僅かなHPを削り取るために、最速で最高火力で最大連撃の技を構える。

 必殺の二十連撃、止めるものも止められる者もいない、俺の……七王、ブレイブ・ワンの最高のスキルを、最高のバフで強化したものだ。


「ダブルエクストリーム・ペネトレート」


『──! ──!!!』


「大人しく地獄に返ってろ、デカブツ」


 超高速、超高威力の二十連撃を叩き込みながらも叫び続ける奴に向けてそんな言葉を手向け、最後の一撃を放つ。

 蛇魔零のHPはゼロを通り越してマイナスまで行くんじゃあないかと言うほどに攻撃が叩きこまれ続けた。

 ……所詮ポリゴンの集合体とは言えども、ここまで攻撃を叩きこみ続けたからか、蛇魔零は体中をぐちゃぐちゃにしてその身をポリゴン片へと変えて砕け散らせた。

 奴の体を構成していたポリゴン片が最後まで消えるのを見届けたところで、俺は笑い、挑発する。


「……結構楽しめたぜ、お前ら。ところで……俺にはまだ眷属の雫も、奥の手も十分に残されてるワケだけど……それで全力か? どうした、かかって来いよ。俺を倒すんだろ? やってみろよ! お前らァァァッ!」


 蛇魔零と俺の戦いに割って入る余裕もなかったプレイヤーたちへ、ビビって動けないプレイヤーへ。

 出し惜しみのない全てをぶつけさせるべく、煽って、叫んだ。

 あぁそうさ、こういうのをイキってるとか言うんだろうな、そうだろうとも。

 けどそれでいい、それで全く持って問題なし。

 これでもっと戦えるのなら、もっとこの世界を味わえるんだったら、今はこの心地よさと一緒に、道化でもなんでもなってやろうじゃないか。


「さぁ、いくつめのラウンドかな」

更新が遅れてしまい、誠に申し訳ございませんでした。

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