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第二百四十話:アルトリアVSユリカ

『さぁ、一回戦も終わったところで二回戦の組み合わせです! 第一試合、ユリカVSアルトリア! 第二試合、サンドラVSリン! どちらもまた面白い組み合わせとなりました!』


 実況の言葉を背に受けながら、私は軽い準備体操をして……入場の準備を済ませる。

 相手はアルトリアさん……モードレッドさんと同じく元同期だけれども、彼女たちは戦闘スタイルが真逆。

 モードレッドさんは力任せに剣を振るうスタイルだったけれど、アルトリアさんはどちらかというと『技』がある方だ。

 

『東からは一回戦で驚きの勝ち方を見せた、集う勇者のユリカァ! 西からは対照的に圧勝を魅せてくれた、王の騎士団のアルトリアァ!』


 だから、戦うとしたらモードレッドさんの時よりもやり口を変えなきゃいけないな──と思いながら、入場を始める。

 実況の紹介を受け、歓声を浴びた私は入場が済むのよりも先に背中から二本の剣を抜く。

 私よりもほんの少しだけ早く入場して待機を始めたアルトリアさんは剣を鞘に納めたままで、腕を組んで笑みを浮かべていた。


「お前が集う勇者に行ってから、刃を交えるのはここが初めてだな」


「……あー、そう言えばそうですね。ガウェインさんとか、ランスロットさんとは既に戦いましたけど」


「妬けるようなことを言ってくれるな……私は、イベントでお前と戦うのを楽しみにしていたの何度も楽しみにしていたのだぞ」


 ちょっぴり不満そうな顔をしている彼女を見てついこっちも顔が緩むけれど……ゴングが鳴った時には、そんな感情を抱いている場合じゃない。

 アタルンテさんを瞬殺してみせたあの凄まじい威力のスキルや速度、王の騎士団時代からも良く知っている彼女の技量。

 それらを考えれば、出し惜しみなんかしていられないし……モードレッドさんの時と同じ失敗をしないためにも、最初から私の全力をぶつける。


「……そろそろか。ではユリカ、全力で行くぞ。覚悟しろ」


「はい。私の全力、集う勇者で得たものも、王の騎士団で培ってきたものも……全部、あなたにぶつけます!」


 一人ぼっちだった私に寄り添ってくれたこと、私を孤立させないように声をかけ続けてくれたこと、共に肩を並べ背中を預け合ったこと。

 王の騎士団で一緒にいた時、私が心を許して笑い合えたこの人と戦う……訓練のためとかじゃなく、純粋にどちらが強いかを決めるために。

 ちょっぴり、ほんのちょっぴり躊躇いそうになったけれど──この戦いを楽しまなきゃ、ゲームを楽しんでるとは言えないし、何よりも、とっても失礼だ!


『一回戦同様、かつての仲間だったプレイヤーたちの戦い! その熱い戦いが今、始まりましたぁ!』


「──ハァァッ!」


 戦闘開始のゴングが鳴った瞬間、私は強く踏み込んで右手の剣を突き出した。

 アルトリアさんは右足を軸に身体をズラすだけでそれを躱し、ゴングがなる直前に抜いていた剣を振り上げる。

 私はすぐにブレーキをかけ、振り下ろされる攻撃を左手の剣で受ける。


「中々の速度だ。だが、アタルンテの矢の方が速いぞ」


「言ってくれますね……! でも、まだっ、まだぁっ!」


 彼女の剣を左手の剣で打ち払い、すぐに右手の剣で袈裟斬りを放つ。

 今度は一歩だけ下がって避けられた……けれど、すぐに左手の剣で突きを放って追いかける。

 けどそれは剣で上から叩かれて弾かれ、振り下ろした剣を今度は斬り上げに使った!


「っ、せいっ!」


「む」


 私は下から迫る剣を左手の剣で横から叩いて弾き、その力の流れを利用する。

 体ごと左に移動して、彼女の剣がある位置と正反対の位置に立ってから、右手の剣で斬りかかる!


「やぁぁっ!」


「──悪くない!」


 流石の対応力で、アルトリアさんはすぐに剣から左手を離したと思うと私の右腕を掴んで攻撃を止めて来る。

 けど、私にはまだ左手に握ってる剣がある!


「つあぁっ!」


「フッ!」


 左手の剣を薙いだら、膝蹴りで弾かれた……! 剣を使わなくても捌いて来るなんて、流石だ……!

 けど、まだまだまだまだ……スキルも使ってない攻撃の応酬程度、こんなものまだ準備運動みたいなものだし!


「ほう、今度はこっちで勝負か」


「当然……単純な剣の腕比べであなたに勝てるのなんて、多分いないだろうしっ!」


 私は一歩下がって飛翔を発動させて、空中で剣を構えて……思いっきり、振りかぶる!

 両方の剣に紫色のライトエフェクトを纏わせて、クロスさせながら振り下ろして、斬撃を飛ばす!

 アルトリアさんがよく使う光属性に対抗して、闇属性のスキル……相殺するとなれば、光属性スキルしかない!


「闇か……だが、温いな」


「っ、打ち合わないんですか!」


「愚門だな。避けられるものを避けない間抜けがどこにいる」


 前までのアルトリアさんならキチンと対抗してくれただろうに、今のアルトリアさんは非常に厳しかった。

 軽いサイドステップでスキルを避けてから、白いエフェクトを纏わせた剣を構えて……横薙ぎの斬撃を飛ばしてきた!


「っ!」


「なんだ、お前も回避するんじゃないか」


「そりゃ、私は元よりこういう剣士ですから!」


 斬撃を回避しながら低空飛行に切り替えて、アルトリアさんの下半身があるくらいの高さで飛んで──

 真っすぐに、勢いをつけて!


「ジェット・ストライク!」


「っ──ソード・セイントブラスト!」


「せえええあァッ!」


 左手の剣で放った渾身のジェット・ストライクは彼女が剣から放ったちょっぴり太めのビームで相殺される。

 けれど、私は二刀流……! 彼女が私のスキルをスキルで相殺した時に生まれるほんのちょっとの隙が、ねらい目!


「オーガ・ペネトレート!」


「ッ──ふっ!」


「なっ、ぁ……えぇっ!?」


 ブレイブさんの剣から引き継いだスキルを放って、彼女の胸を貫いた……と思ったら、アルトリアさんはギリギリで受け流していた。

 籠手で私の斬撃を受け流していて、クリーンヒットするはずだった攻撃を最低限のダメージだけでしのいだのだ。

 飛びながら放ったおかげで、飛行速度は維持していたしカウンターの一撃を貰わなかっただけいいけど……また距離が開けた!


「今度はこっちの番だ。受けるがいい……!」


「っ、ヤバ──」


 来る! アルトリアさんの昔からの必殺スキル! 飛んで距離の離れている私にも届くであろう一撃が!

 彼女は剣を両手で握り、大上段に構えてから光り輝くエフェクトを刀身に纏わせた!

 そして三歩ほどこちらに向けて歩を進めたと思うと、光り輝く剣を振り下ろしてビームのように斬撃を放って来た!


「ホープ・オブ・カリバァァァンッ!」


「ッ──!」


 来た! アルトリアさんの最大威力のスキル……! これに対抗するには、連撃技じゃダメだ。

 同じ土俵に立つための、ド級の一撃って奴を用意して打ち込まなきゃならない!

 だから──ブレイブさんから貰ったスキルが、ここで輝く!


「オーガ・スラッシュ!」


 光り輝く聖剣の一撃をブレイブさんのおかげで習得出来た、私にとってのド級の一撃で相殺する。

 って言っても……私が使った場合だと、ブレイブさんの奴よりもちょっと威力が落ちるからこれでやっとだ。

 ブレイブさんだったら、ゴブリンズ・ペネトレートどころかそれ以下の威力のスキルで相殺しきっていただろうに……!


「受け止めたか。だが、今度はどうする? 私の全力はこんなものじゃないぞ」


「っ……!」

 

 アルトリアさんは余裕たっぷりの笑みを浮かべたと思うと全身に虹色のオーラを纏い、それを剣へと移す。

 来る! 今度はアタルンテさんを一撃で葬った技……! おそらくだけれど、威力は最低でもさっきのカリバーン以上、最大でもエクスカリバー並みの火力を誇っている可能性がある。

 だったら、私に出来ることは──!


「必殺・聖魔両断剣!」


 彼女は虹色に輝くエフェクトを纏った剣を構え、真っすぐに踏み込んできた!

 いざ相対すると、横から見ていた時よりもずっと速い──!

 でも、真っすぐに斬りかかる技だというのであれば!


「カンテス・トゥエルレイション!」


 ビームでなく真っすぐ斬りかかる技である以上、12連撃の剣戟をぶつければなんとか相殺できるか──と思っていたのが甘かった。

 やっぱり、彼女のド級の一撃ともなると連撃技での受けなんて許してくれるはずもなかった。

 相殺するために放った一撃目とぶつかった時点で、二撃目に繋げるための動作に入らせてくれなかった。


「ハァァァッ!」


「ッ──あぁっ!」


 体ごと地面に叩きつけられ、バウンドして転がって闘技場の壁際まで吹き飛ばされた。

 ……直接斬られていないって言うのに、一撃でHPの六割を持っていかれた。

 これ、次受けたらくたばるの確定だよね……。


「どうした、こんなものか? ならばもう終わりにするぞ」


「冗談……!」


 思いっきり吹っ飛んだせいか目がチカチカして足もふらつくので剣を杖代わりにして立ち上がり、息を吸って吐いて……視点を整える。

 吹き飛ばされたダメージがじわじわと全身に響いてきてるし、HPは半分を切ってるし……展開と言っては最悪だ。

 でも──まだ、まだまだやれるんだ。


「まだ……見せてないものだって、ありますから!」


「ほう」


 私は剣を構えて飛翔を発動させ、スキルの詠唱をしながらアルトリアさん目掛けて飛ぶ。

 このスキルは詠唱時間が長いけれど……スキルを使うことを悟られないように、全力で突っ込め!


「はぁぁっ!」


「奥の手でもあるのか。ならば、その奥の手ごと受けて立つ!」


 今の私が使える最強の攻撃スキル……アルトリアさんを倒しきるには、アレしかない!

 でも、スキルなしで彼女のスキルも加えた攻撃を捌くのは大変かも……!


「ソード・セイントショット!」


「っ! せいっ!」


 アルトリアさんが剣から放ってくる光線を体捌きだけで躱して、自分の間合いに入り、着地してから右手の剣を突き出す!

 当然首の動きだけで避けられるけれど……すぐに左手の剣を振るわずに右手の剣を振り下ろす!

 今度は左へのサイドステップで避けられる……でも、こうなった時のアルトリアさんの動きは!


「ハァッ!」


「──そこっ!」


 私の隙を見つけて剣を振り上げたアルトリアさんの動きに合わせて、彼女のお腹に左ひじをぶつける。

 今の彼女はかつてのような甲冑姿ではない分、鎧に身を守られていない部分が多い。

 狙いはそこ……そこを狙うことで、彼女自身のバランスを崩させやすい!

 現にちょっぴりバランスが崩れてるし、たった今ついでに足払いもかけて、完全に彼女の重心を後ろに倒させた!

 ここが狙い目だ!

  

「っ!?」


「これで……! 流星剣!」


 私はわざとらしく右手の剣を振り上げて、刀身を背で隠すように構えてからスキル名を叫ぶ。

 バランスを崩している状態ともなれば彼女は回避も出来ない。となると。


「チィ……! 精霊光!」


「かかった!」


 咄嗟とは言えども、アルトリアさんは一瞬だけ無敵になれるスキルを使った。

 私は両手に握っていた剣を素早く手放して、倒れながらも光を放って無敵状態となっている彼女の両腕を握る。

 懸念していたスキルを無駄打ちさせることが出来たし、準備は整った!


「っ、罠だと……!?」


「そうです、よッ!」


 そのまま今度は私が真後ろに倒れ込んで、彼女のお腹を蹴っ飛ばしながら地面に投げる。

 緩急のついた引っ張りともなればアルトリアさんも踏み止まれずに引っ張られて、私の変則的な巴投げをくらって、背中から地面に叩きつけられるしかなかった。

 そして素早く起き上がった私は刃も生やさないままだったけれど、アルトリアさんが握っている剣を蹴っ飛ばす!


「武器は取り上げた……! これで決める!」


「ッ! くっ!」


 私が額の上で両手を重ねたところで、アルトリアさんは私の行動を察したらしく蹴り飛ばされた剣を拾いに行こうと走り出す。

 けど、遅い。それを見越して間に合わない距離まで蹴っ飛ばしたんだから!


「【オーガ・メイデン】!」


「ッ──! やはり、これか……! くっ……逆らえん……!」


 今度は乙女の顔ではなく鬼の形相をした──何で出来ているかもわからない、観音開きの像が出て来る。

 当然のごとく中身は針だらけ……だけれども、コレはブレイブさんの極悪鬼シリーズの劣化コピー品と私の装備を組み合わせた末に生まれたもの。

 中には彼の使っているスキルにも付いている黒い炎が灯されていて、これからアルトリアさんは無数の針と黒い炎の責め苦を味わうのだ。


「っ! ぐ、素手では……ダメ、か……! が、っ……! くぅぅぅ……!」


「レイス・ハンズ……! 【サクリファイス・ブースト】! せええあああっ!」


 私は右手から伸びる腕を出してから、HPを代償に全ステータスを大きく上昇させるスキルを使ってからアルトリアさんの眼前まで飛び立つ。

 そして、左足の裏で彼女を蹴っ飛ばし、像の中へと叩きこむ!


「閉じろ! そして貫かれ、燃え尽きろッ!」


「ぐわああああああああああッ──!!!!」


 空に浮かぶ像と同じ位置で滞空し、私は左拳をグッと握りしめ──

 無数の針に貫かれ、黒い炎に焼かれて断末魔を上げる彼女のHPが全損するのを見届ける。


「ぐっ……く、あぁっ……! フ、成長、した、な……ユリカ……!」


「……ありがとう、アルトリアさん」


 スキルの効果が終わり、像が消えたところでアルトリアさんが像から解放される。

 ぶち込まれる前とは大きく違った彼女は穴だらけになったアバターを黒焦げにし、HPの全損に伴い、ポリゴン片となって砕け散った。

 ……私の、勝ちだ。

更新が遅れてしまい申し訳ありませんでした!

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