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第二百三十話:エクストリーム

「おおおおおおおッ!」


 雄たけび一閃。俺の剣が目の前にいた傀儡をぶった斬り、経験値やドロップアイテムとなる。

 現在、厄災の要塞の奥へと進んだ俺たちは雑魚の傀儡を蹴散らしながら、要塞内にある宝箱やらアイテムを片っ端から取っていた。

 勿論罠の宝箱などもあるわけだが、そんな罠を解除するようなスキルの熟練度をロクに上げていない俺たちは引っかかりまくる。

 ……けれども、今の俺に生半可な攻撃は効かないし、状態異常だって無効化されているから罠は警戒するだけ無駄なのだ。


「ふぅ……結構進んだ甲斐もあって、レベルもアイテムもかなり稼げたな。よし、ここらで休憩にしようぜ」


「あぁ。そうだな……よっこいしょ、へへっ」


 俺は座りながらもアイテムが増えていくストレージや、大量のGやCPを見てニマニマと笑う。

 戦って入手したCPは1日経てばGに還元されてしまうが、その分攻略には欠かせないアイテムなどを買えるのだ。

 それに、単価がGの10倍だから還元されたらされたで財布の中身も潤うワケだし。


「うむ……まぁ、稼げたのはいいが。次の部屋でボス戦というところか?」


「そうっすね。これだけ大きな門となると少なくとも中ボスくらいはいるでしょ」


 床に座ってくつろぎつつも、Nさんは俺たち一行が通って来た扉とは明らかに違うサイズの巨大な石の門を睨むように見る。

 そこの門のサイズは計ってるわけじゃないからわからないが、普通に人が入るのに必要なドアの三倍以上はあるように感じる。

 ……どんな巨人が出入りしてる部屋なんだか、と思いつつ俺は休憩用に持って来た食い物を一齧りする。


「ボスかぁ。大きな部屋なら空中機動も出来そうだけど、ボス部屋自体にギミックとかないといいなぁ。壁にトゲとか生えてたら、私一番危ないし」


「流石にないと思いたいけど……まぁ、いざとなったら全員地上で揃えばいいんじゃないかな」


「それは私のアイデンティティなくなっちゃうって」


「既にアイデンティティまみれじゃん、ユリカはさぁ」


「ひゃっ、くすぐったいよランコ」


 イチャコラしながら相談するランコとユリカを横目にスルーしつつ、真の魔王の方はどうしてるかなとチラチラ見る。

 カオスは玉座に座りながら酒を飲んでいて、サンドラは寝袋なんて持って来たのか床でそのまま寝てるし、ディアブレはどこで買ったか不思議な漫画を片手にポテトチップスを食ってる。

 三者三様だなぁ……と思いながら、俺はNさんの方をもう一度見ると、彼女は彼女で俺と同じように携帯食料と飲み物……おにぎりとお茶で一息ついていた。


「……ん、どうしたブレイブ」


「や、ソレどうしたのかなって」


「あぁ、最近暇だったのでな……せっかくだから、料理スキルの熟練度を上げてみようと思って作ったのだ。まぁ、今はまだシンプルな塩むすびしか作れんが」


「はぇ~……」


 いつか、SBO内でもNさんの手料理が食えたりするのかな──と思いながら、俺は俺で持って来ていたパンをかじる。

 ……俺も、料理スキルの熟練度とか上げてみようかな。VRの料理って手順が簡略化されすぎててつまらないって思ってたけど、VR内でも美味い飯が食えるのって、モチベに関わる気がするし。

 実際、あんまり美味くない携帯食料を食いながらダンジョン攻略するよりかは、美味いサンドイッチでも頬張ってダンジョンを進んだ方が楽しいよな……うーむ。


「悩みどころさんだな……」


「何がだ」


「こっちの話っす」


「そうか……まぁ、悩み事があるなら相談しろ。私はお前の彼女で、人生の先輩なのだからな」


「一個しか違わねーのに」


「だが、ちょっと前まで先輩と呼びながら尻尾を振っていたであろう?」


「尻尾とかねーっすよ。つか、先輩呼びしてたのはあくまでガッコの先輩ってワケですし……いや、まぁ、その……はい、相談したくなったら相談しますよ、俺ぁ」


 フフフッ、と笑うNさんを横目にパンを全部食い終わって、俺はちょっと顔を逸らす。

 ……やっぱ、微笑んでるNさんが可愛すぎて直視してられねえや。


「んっ、ふぅ……あー、お前らそろそろ、攻略を再開してもいいか?」


「お、結構時間経ってたか」


「あぁ。かなりMPを貯めたし、サンドラも寝不足解消したみたいだし、魔王的にはもう十分なんだ。で、集う勇者の方はどうかなって」


 カオスからの質問に、俺は三人の顔をぐるりと見まわす。

 Nさんは軽く手を払って立ち上がり、ユリカとランコも二人揃ってサムズアップと来た。

 なら、無問題ってとこか。


「問題ないぜ。じゃ、ボス戦と行こうか」


「おう。頼りにさせて貰うからな、ブレイブ」


「任せろ」


 カオスから肩をポンと叩かれ、俺は溢れる自信たっぷりに門を強く押す。

 ……どんなボスが来ようが、どんな攻撃が来ようが、必ず受け止めてやる。物理に限るけど。


「んっ……結構重てえな……オラァァァッ!」


「うお、スゲーパワー」


 いざ押し込んでみると、鉄の塊のような重量感を伝えてきて、片手じゃビクともしてくれなかった生意気な門だ。

 だから、今度はフルパワーで思いっきり押し込むと……ギィィィ……と音を立ててゆっくりと開いてくれた。

 縦5mくらいはあるであろう門がゆっくりと開いたところで、その門の部屋の向こう側が明らかになる。


「っと、広くて明るいか……これなら文句はないけど……困るなぁ」


 石造りの丸い部屋。飾り気もなく、壁に青い炎が灯っている程度しかないが……ボス部屋中央に鎮座しているのは案の定デカい奴だった。

 俺たちから見れば巨大、されど奴から見れば片手サイズの斧を床に置いている。


「ミノタウロスか……こういうとこにもいるんだな」


「けど、まぁ豪華なデザインと来たな」


 俺とカオスはそうぼやいて、目の前にいるボス──金色の毛をしたミノタウロスを睨む。

 そして同時に、悟った。コイツはこの要塞のラスボスじゃあないな……と。

 だって、出て来る敵に対してコイツがラスボスってこたねーだろ……って、誰もがその場で思っただろうからだ。


「中ボスがミノタウロスと来たか……まぁいい、相手にとって不足はない」


「相変わらずね、N・ウィーク。私にとってはあぁいう手合いは面倒よ、防御高いせいでナイフがあんまり刺さらないし」


「フ。なら、傷は広げてやる。そこに攻撃を叩き込め」


「そう。ありがとう、ならあなたに期待してるわ」


 Nさんは既に居合の構えを取っていて、サンドラもスカートから投げナイフを取り出して構えている。

 ……是が非でも、俺が攻撃を止めて皆の攻撃チャンスを作ってやらないとな。


「使える盾は、俺だけか……冷静に考えりゃそうだったよな、けど……かなり燃えて来たぜ」


 そうだ。今は頼れるタンクはいない、そしてその状況で緊迫させられるほどの中ボスが目の前にいると来た。

 こんな状況で、燃えないワケはなかった。頼れるのが俺しかいないなら、俺が全力で気張らなくっちゃあいけねえ。


「漢ブレイブ・ワン! いざ、まかり通るぜ!」


「応!」


 俺が剣を掲げたところで皆が応えるように同じく武器を掲げ、同時にミノタウロスも俺たちを敵と判断したように立ち上がる。

 ……デケェ。けど、デカいだけの奴にやられるつもりは毛頭ない。


『ブモオオオオオ!』


「行くぜ、オラァァァッ!」


 ミノタウロスは雄たけびを上げ、斧を構えてゆっくりとこちらに歩を向けて来る。

 俺も同じように叫んでから走り出し、ミノタウロスが振り上げて来る斧に向けて──!


『モォォォッ!』


「オーガ・シールド! ハァァァッ!」


 盾のサイズを大きくし、防御力を大きく強化するスキルを使って迎え撃つ。

 ミノタウロスが振るった斧が弾かれるほどの硬さがないと、皆のための隙は作れない。

 そのためにもスキルを使って防いだが──俺の目論見通りミノタウロスの振るった斧は弾かれ、奴のバランスがちょっぴり崩れた。

 この隙を狙わない手はねえ!


「出し惜しみはしねえ、最初っからな! エクストリーム・ペネトレートォォォッ!」


『ブモォッ!? ゴォァッ!』


 極悪鬼の剣へと進化してから新たに習得した必殺スキル、エクストリーム・ペネトレート。

 ついさっき雑魚戦で使ってみたが、このスキルの破壊力は恨熱斬以上のものだった。

 一撃一撃が並のスキルを上回る威力で、尚且つ高速の刺突十連撃。

 オーガ・スラッシュをも遥かに上回る衝撃と威力が叩きこまれたところで、既にバランスを崩し始めていたミノタウロスは尻もちをつく。

 

「崩した……! 今だ、皆ぁっ!」


「あぁっ! 神天ノ太刀ッ!」


「ライトニング・ロア!」


「氷天・聖十字剣戟!」


 俺の合図と共に、スキルを詠唱したまま保持して走り出していた三人の必殺スキルがそれぞれミノタウロスへと叩きこまれる。

 ……思ったよりダメージの入りは悪い、けれどもこの次の攻撃への起点は作った。

 ミノタウロスの胴体、肩、足はそれぞれ三人が放ったスキルによって傷が出来ている。


「今だ! 傷を狙え!」


「わかってる……! トラジック・シンフォニー! セェェェァッ!」


 Nさんの一声でサンドラが大量のナイフをスカートから取り出し、雨あられのようにミノタウロスへ向けて投げつける。

 投げられたナイフは傷口へと次々に突き刺さり、Nさんたちが放ったスキルよりもミノタウロスへ大きくダメージを与えた。


『ブ、ゴォッ……!』


「開いた傷口に効くものをくれてやろう……! 食らうがいい! 【フィフス・サンダーボルト】!」


「なら、俺からはコイツだ!」


『ブモォォォアアアッ! ゴガァァァッ!』


 ディアブレの杖から一点に溜めて放った雷と、カオスが展開した氷の刃がサンドラのナイフへ追随するようにミノタウロスの傷口へと突き刺さる。

 SBOトップレベルの魔法使いの攻撃ってだけあって、そのダメージは凄まじかった。

 攻撃を当てた時の条件が違うとは言えど俺たちの攻撃では半分も削れなかったHPバーが、もう一本なくなっている。


「ふー、あと二本か。ブレイブのおかげで楽だな」


「行動パターンが変化しても、やることは同じね。ブレイブ、頑張ってきなさい」


「わぁったよ。傷口が塞がるまでにはまた転ばしてやる」


 カオスとサンドラの言葉を背に受けながら、俺は立ち上がって斧を構え直すミノタウロスと対峙する。

 さて、と……。


『フーッ……! ガアアアアアッ!』


「来やがれ、牛野郎。ブッ潰してやるからよ!」


 俺は剣を構えて声高らかに叫び、もう一度強く踏み込む。

 攻撃こそ、最大の防御ってのを見せてやる……!


『ブモオオオオオッ!』


「武装変化! ダブルエクストリーム・ペネトレートォォォッ!」

更新が遅れてしまい、誠に申し訳ございませんでした!

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